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世界の男性不妊統計|精子数の減少と不妊の割合をどう読むか

2026/4/19

更新:2026/10/26

世界の精子数の減少を報告した研究はありますが、それだけで男性不妊の割合が何倍になったか、日本人全員の精子の状態がどうかは分かりません。「精子濃度」「総精子数」「不妊を経験した人の割合」「不妊カップルの原因の内訳」は、それぞれ別の指標です。

統計の対象と期間を確かめ、自分の妊娠の可否を数字だけで決めないことが大切です。

似た言葉でも、数字の意味は違います

指標・表現確認すること
精子濃度精液1mLあたりの精子の数。精液量や1回の総精子数とは別
総精子数1回の射精全体に含まれる数。濃度の減少率をそのまま当てはめない
不妊の生涯経験率生涯のどこかで不妊を経験した割合。現在の有病率・男性だけの割合とは別
不妊カップルに占める男性因子不妊カップルが分母。男性全体の何%が不妊かを表す数字ではない
国・地域の平均や推定値対象者の選び方、年齢、検査法、定義、年がそろっているか確認する

Levineらの研究は、何を調べたのでしょうか

2022年11月にオンライン公開され、2023年の誌面に掲載されたLevineらの研究は、1973〜2018年に採取された精液の研究を統合した解析です。

全体として223研究・57,168人、288の推定値を扱い、精子濃度と総精子数の時間的変化を検討しています。世界の全男性を無作為に追跡した一つの調査ではありません。

Levineら:世界の精子数の時間的変化(2022年公開、2023年誌面)

妊孕性によって対象を選別していない男性群の調整モデルでは、1973〜2018年の平均精子濃度は101.2から49.0百万/mLへ、51.6%の低下と報告されています。

年あたり1.16%はこの全期間のモデルに対応し、「1973〜2000年だけ」の値ではありません。2000年以降のデータに限った別モデルでは2.64%で、単純に一人の精子が毎年その割合ずつ減るという意味ではありません。

この研究は精子数を扱い、運動性・形態の時間的変化は解析していません。細かな国別・地域内の推移を調べるには統計的な検出力が足りないことや、募集・選択に関する偏りを完全には取り除けないことも説明しています。すべての国・すべての集団で同じ低下が確認された、とは一般化しません。

WHOの「6人に1人」は、男性不妊だけの割合ではありません

WHOが2023年に公表した説明では、成人の約17.5%、およそ6人に1人が生涯のある時点で不妊を経験すると推定されています。1990〜2021年の研究を用いた報告に関する説明で、いま男性の17.5%が不妊である、という数字ではありません。WHO:2023年の不妊の生涯経験率の説明

WHOのこの案内は、不妊を、避妊のない定期的な性交を12か月以上行っても妊娠が成立しないことと定義しています。一方、相談を始める時期は年齢や病歴などで早まることがあり、「誰も12か月前には受診できない」という意味ではありません。

同じ案内は、地域・所得群の違いが限られること、原因や年齢別に分けた各国データが不足することも指摘しています。別の研究の定義や対象を混ぜて、地域別の男性不妊ランキングを作ることはできません。

日本の男性は「世界より悪い」と決められるのでしょうか

不妊外来の受診者、妊娠したカップルの男性、一般集団では、検査値の分布や年齢が異なります。年代・測定条件の違う平均と中央値を並べても、日本全体の順位にはなりません。国内の一施設の結果を、日本人男性全員の平均や将来の予測として使うことも避けます。

ARTの治療周期数も、患者の人数や男性不妊の発症数とは異なります。一人が複数周期を受ける場合があり、治療へのアクセスや制度なども関わるため、周期数の増加だけで男性因子が増えたと結論づけません。

世界の推移から、個人の原因や将来のゼロを予測しません

集団の精子数の推移は、生殖の健康を考える重要な情報です。ただし、この解析だけで、個人の原因をPFAS、マイクロプラスチック、スマートフォン、特定の食べ物などに確定することはできません。関連が報告されたこと、因果関係が証明されたこと、対策によって妊娠・出産が改善したことを区別します。

過去の直線を将来に延ばして「2045年に全員の精子がゼロ」「必ずARTが必要」と予告することもできません。環境や生活への配慮は大切ですが、高価な食品やサプリを購入することを、精子数低下の解決策や検査の代わりにしないでください。

自分の状態は、診療と適切な検査で確認します

EAUは、精液検査だけで妊孕性がある男性とない男性を区別できず、本人とパートナーの状況を合わせた評価が必要としています。WHOの参照値の下位5%も、妊娠できる・できないの境界ではありません。世界平均や年齢だけから、自分の治療法を選べません。EAU:男性不妊の診察・精液検査の解釈

妊娠しにくさや射精の問題、病歴などがある場合は、泌尿器科や生殖医療を扱う医療機関へ相談します。過去の検査、採取の条件、薬、発熱などの体調を伝えます。初回の精液検査が異常なら再検査などを検討しますが、生活改善だけで何か月も待つのを条件にしません。

遺伝学的な評価などの追加検査も、全員が同じものを受けるわけではありません。疑う原因、検査結果が診療にどう影響するか、必要なら遺伝カウンセリングについて説明を受けます。費用は施設と診療条件で確認し、海外統計から国内の一律の検査料金や保険適用を決めません。

統計を読むときの確認事項

  • 何を測ったか:濃度、総数、妊娠までの期間、不妊の経験率など。
  • 誰が分母か:全成人、男性、受診者、不妊カップルなど。
  • いつの情報か:採取年、調査年、論文公開年を分ける。
  • どのような対象・方法か:一般集団か、選択された集団か、モデルによる推定か。
  • 何を示していないか:個人の診断、原因、国別順位、将来の保証など。

出典と確認日

2026年10月26日に、Levineらの公開論文の採用箇所(対象・結果・表・限界)、WHO2023年の公式説明、EAUの評価の採用箇所を確認しました。元データを再解析したものや、すべての国内調査を網羅したものではありません。本記事の医師による個別監修はありません。

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EggLink編集部

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公開:2026/4/19更新:2026/10/26