
体外受精の凍結胚移植には「自然周期」と「ホルモン補充周期」の2つの方法があります。自然周期は薬を使わず(または最小限に抑えて)自分自身の排卵を利用して移植する方法です。薬の負担が少ないというメリットがある一方、適している方が限られます。この記事では、自然周期の仕組み・スケジュール・向いている方・ホルモン補充周期との違いを解説します。
この記事でわかること
- 自然周期での胚移植の基本的な仕組み
- 適している方・適していない方の条件
- 一般的なスケジュールの流れ
- ホルモン補充周期との比較
- 自然周期特有の注意点とキャンセルリスク
自然周期での胚移植とは——基本の仕組み
自然周期は、薬を使わずに自分の排卵を待ち、排卵日を基準にして移植タイミングを決める方法です。黄体ホルモンが自然に分泌されるため、外からのホルモン補充が不要(またはごく少量)です。
- 排卵を超音波と血液検査(LHサージ)でモニタリングする
- 排卵日(または卵胞破裂確認日)を基準に移植日を設定する
- 胚盤胞移植の場合:排卵5〜6日後に移植
- 初期胚(2〜3日目胚)移植の場合:排卵2〜3日後に移植
自然周期に適している方・適していない方
自然周期が選択されるのは、一定の条件を満たす場合に限られます。
項目 | 自然周期に適している方 | 自然周期が難しい方 |
|---|---|---|
排卵 | 規則的な排卵がある | 排卵障害がある・無排卵 |
生理周期 | 25〜35日の安定した周期 | 不規則・無月経 |
卵巣機能 | 良好(AMH・FSH正常範囲内) | 早発閉経・卵巣機能低下 |
スケジュール | 診察の都合をある程度合わせられる | 厳格なスケジュール管理が必要な方 |
一般的なスケジュールの流れ
自然周期移植の標準的な流れを示します。排卵のタイミングが予測しにくい場合は、診察回数が増えることがあります。
- 月経1〜5日目:診察開始。基礎ホルモン値・超音波で状態確認
- 月経8〜12日目:卵胞の大きさをモニタリング(18〜20mmで排卵近い目安)
- 排卵確認日(LHサージ検出・HCG注射使用の場合も):排卵日を確定。hCG注射で排卵を誘発するケースもある
- 排卵後5〜6日目(胚盤胞の場合):移植当日。内膜の厚さ・形態を確認後に移植
- 移植後2週間:黄体補充薬(少量のプロゲステロン)を使用する場合あり。判定日に血液検査
ホルモン補充周期との比較
自然周期とホルモン補充周期のどちらが優れているかは、個々の状況によって異なります。
比較項目 | 自然周期 | ホルモン補充周期 |
|---|---|---|
使用薬 | 少ない(またはゼロ) | 複数の薬が必要 |
スケジュール管理 | 排卵日に依存するため調整困難 | ある程度日程を計画できる |
適している方 | 規則的な排卵がある方 | 排卵障害・卵巣機能低下の方 |
キャンセルリスク | 排卵が早まる・遅れるとキャンセルになりやすい | 比較的キャンセルになりにくい |
妊娠率 | 研究では大きな差異なし | 同左 |
自然周期特有の注意点
自然周期は薬の負担が少ない反面、いくつかの特有のリスクがあります。
- キャンセルリスク:排卵が早まってしまった場合・内膜が十分に厚くならない場合は移植がキャンセルになることがある
- 診察頻度が多い:排卵タイミングを逃さないよう、月経後半は診察回数が増える
- LHサージの個人差:血液検査でLHサージを検出するタイミングが難しい場合がある
- 黄体機能不全のリスク:一部の方では黄体機能が弱く、プロゲステロン補充が追加で必要になる
よくある質問(FAQ)
自然周期とホルモン補充周期、どちらを選べばよいですか?
担当医が患者の排卵状況・生理周期・過去の治療歴を踏まえて提案します。規則的な排卵がある場合は自然周期が選択肢になりますが、最終的にはクリニックの方針と個人の状況によります。「自然周期を希望したい」と相談することも可能です。
排卵検査薬(市販)を使って自宅でLHサージを確認してもいいですか?
クリニックによっては自宅での排卵検査薬の使用を補助的に認めているところもあります。ただし、血液検査によるLH測定のほうが正確です。自宅での検査結果を参考にする場合も、クリニックへの連絡・確認を優先してください。
自然周期でもプロゲステロンを使いますか?
完全自然周期(薬なし)と改良自然周期(hCG注射やプロゲステロン補充を追加)の2種類があります。黄体機能の状態によってはプロゲステロン膣座薬などが追加されることがあります。
移植当日に排卵タイミングがずれた場合どうなりますか?
排卵が移植予定日より早まってしまった場合、着床に適した子宮内膜の「窓」の時期がずれてしまうため、その周期はキャンセルになることがあります。次周期に再度計画し直します。
自然周期移植で流産率は変わりますか?
現時点の研究では、自然周期とホルモン補充周期で流産率に大きな有意差はないとされています。ただし、個々の症例によって異なるため、担当医に最新のエビデンスに基づく説明を求めてください。
まとめ
自然周期での胚移植は、薬の使用を最小限にして自分の排卵を利用する方法です。
- 規則的な排卵がある方に適している
- 薬の副作用や負担が少ない
- キャンセルになりやすいという特有のリスクがある
- 妊娠率はホルモン補充周期と大きな差異はないとされる
自然周期・ホルモン補充周期のどちらが自分に向いているかは、担当医と現在の排卵状況を確認しながら決めていきます。「なぜこの方法を提案されているのか」を遠慮なく確認することが、治療への理解と納得につながります。
次のステップ・受診のご案内
移植方法について詳しく相談したい方は、担当クリニックにお声がけください。
免責事項
この記事は医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針の決定を行うものではありません。具体的な症状や治療については、必ず担当医師にご相談ください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、医学的知見の更新により変更になる場合があります。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
産婦人科・婦人科に関する正確で信頼性の高い情報をお届けします。医療監修のもと、女性の健康に役立つコンテンツを制作しています。
Next Action

