胚移植後に食欲が落ちた、急にお腹がすく、食べ物のにおいがつらいと感じても、それだけで着床や妊娠の成否は判断できません。薬の影響、妊娠に関連する変化、体調や消化器の病気など複数の要因が考えられます。原因を一つに決めるより、食事・水分が取れているか、痛みや嘔吐などがないかを確認しましょう。
薬の影響はありうるが、全員の主因とは決めない
移植後に使用する薬や投与方法は、治療方法や個人の状態によって異なります。「移植後の食欲変化は、ほぼ全員が使う黄体ホルモン薬が最大の原因」とはまとめられません。
例として、デュファストン(ジドロゲステロン)の電子添文には、悪心、嘔吐、食欲不振、腹痛、腹部膨満感、便秘などが頻度不明の副作用として記載されています。これは、その薬を使用している人に起こりうる症状の情報であり、今回の症状の原因や起こりやすさを確定するものではありません。
腟剤だから消化器症状が出にくい、注射なら必ず食欲が増す、といった製剤間の一律の順位も使わないでください。処方された製品名・用量・使用開始日と、症状が始まった時刻を伝えて相談します。
においや食欲の変化から、妊娠を判定しない
特定の食べ物が欲しくなった、においに敏感になった、前回と同じ症状があるといった変化だけで、薬の影響か妊娠かを見分けることはできません。「BT3なら着床前だから薬」「BT10以降に強まったら妊娠」といった固定の日程にも当てはめません。
食欲の変化がないことも、妊娠していない証拠にはなりません。予定された判定・診察を受け、結果に応じた確認を進めます。超音波で所見が確認できた場合も、以後の経過すべてを保証するものではありません。
吐き気が軽いときは、食べられるものを少量ずつ
- 一度に多く食べるのがつらければ、量を減らしてこまめに試す。
- においや脂っこさがつらい食品を避け、冷たい料理や口にしやすい主食などを試す。
- 水分も一度に大量ではなく、少量ずつ飲めるか確かめる。
- 食べられた量、飲んだ量、嘔吐、尿の様子を記録して相談に使う。
特定の食品やサプリで着床を保証する方法はありません。無理に決めた栄養表や水分量を達成しようとせず、食事や薬について個別の指示がある場合は、その内容を確認してください。
葉酸を含む妊娠前後の食事については、葉酸の食事とサプリメントの考え方も参照できます。食事で取る量と、妊娠を計画する時期に追加する量を区別し、サプリを重ねて自己増量しないでください。
食欲が増えたときも、急な制限や薬の変更をしない
強い空腹感があっても、それ自体から妊娠の成否はわかりません。極端な食事制限や、処方薬の中止で調整しようとせず、普段の食事を基本に、体調に合う量と間隔を考えます。食欲の変化が続いて困る、体重が急に変わる、強い口渇などがある場合は医療機関へ相談してください。
食べられない・吐く・尿が減るときは早めに相談
水分や食事を保てない、嘔吐が続く、尿が少ない・濃い、立つとめまいや強いふらつきがある、体重が減る、発熱や腹痛がある場合は、判定日前でも早めに治療施設へ連絡してください。「つわりなら我慢する」「まだ薬のせいだろう」と待たないでください。
特に採卵や排卵誘発を受けた後の、急なお腹の張り、嘔吐、尿量の減少などは、OHSSを含む合併症の確認が必要になることがあります。水を多く飲めば予防・治療できると自己判断せず、医療機関の指示を受けます。
強い・急に悪化する腹痛、片側の痛み、肩先の痛み、失神、呼吸困難、胸痛、大量の出血などは緊急の評価が必要なことがあります。救急受診が必要な状態や移動が難しい場合は119番へ連絡し、自分で運転しないでください。陽性反応と出血・下腹部痛がある場合も、速やかに治療施設へ連絡します。
薬を使った後に吐いた・使用を忘れた場合
自己判断で薬を追加・減量・中止せず、薬の名前、用量、使った時刻と吐いた時刻、症状を処方元や薬剤師に伝えます。吸収や次の使用方法は薬ごとに異なるため、一律に「もう1回飲む」「次まで待つ」とは案内できません。
処方元には、症状を和らげる方法や、薬の扱い・受診の必要性を相談できます。症状が強い場合は、薬の自己調整よりも医療機関への連絡を優先してください。
連絡するときに伝える記録
- 移植日と、採卵・排卵誘発を受けたか。
- 使用している薬、開始日、使用後の嘔吐や飲み忘れ。
- 食事・水分の取れ方、嘔吐回数、尿量の変化。
- 腹部の張り、痛み、出血、めまい、息苦しさの有無。
- 妊娠判定の予定・結果と、次の診察日。
確認した資料
- PMDA:デュファストン電子添文・その他の副作用(2025年1月第8版)
- NHS:妊娠中の吐き気・嘔吐、食べ方と受診を要する症状
- NHS:体外受精後のOHSS・異所性妊娠などの症状
- Cambridge IVF:移植後の薬・検査・出血時の連絡
2026年10月24日に関連箇所を確認。検査日や薬の使用方法は治療計画によって異なります。処方・診療を受けている医療機関の指示を確認してください。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
公的機関や医学会などの情報をもとに、女性の健康と医療の選択に役立つ情報を整理しています。