
体外受精で採卵した胚をすぐに移植しない場合、胚を凍結保存して後の周期に移植する「凍結胚移植」が選択されます。現在の体外受精では最も多く行われている移植方法です。この記事では、凍結胚移植の仕組み・メリット・新鮮胚移植との比較・費用について解説します。
この記事でわかること
- 凍結胚移植の基本的な仕組み
- 新鮮胚移植と比較したメリット・デメリット
- 凍結保存できる期間と管理
- 融解後の胚の状態と生存率
- 費用と保険適用
凍結胚移植とは——基本の仕組み
凍結胚移植(FET: Frozen Embryo Transfer)とは、採卵・受精・培養して得た胚を一旦凍結し、採卵とは別の周期に融解して子宮内に移植する方法です。凍結には「ガラス化法(vitrification)」という急速凍結技術が主に使われており、以前の緩慢凍結法と比べて胚の生存率が大幅に向上しています。
- 凍結タイミング:採卵後2〜6日目(初期胚または胚盤胞)
- 保存温度:液体窒素(-196℃)で保管
- 融解後の生存率:ガラス化法では約90%以上の胚が正常に融解される
凍結胚移植が選ばれる主な理由
現在の体外受精では、新鮮胚移植より凍結胚移植が多く選ばれています。その背景にある主な理由を整理します。
- OHSSリスクの回避:採卵周期は卵巣刺激によりOHSS(卵巣過剰刺激症候群)リスクが高いため、胚を凍結して次周期以降に移植することでリスクを下げられる
- 子宮内膜の状態改善:採卵周期は排卵誘発剤の影響で子宮内膜の状態が最適でない場合があり、別周期に移植するほうが内膜環境が整いやすいとされる
- PGT-A実施後の移植:着床前染色体検査(PGT-A)を行う場合、結果が出るまでの期間に胚を凍結保存する必要がある
- 余剰胚の活用:複数の胚が得られた場合、最良の胚から順に移植し、残りを凍結保存できる
新鮮胚移植と凍結胚移植の比較
どちらの方法が優れているかは研究によって見解が異なりますが、現在の主流は凍結胚移植です。
比較項目 | 凍結胚移植(FET) | 新鮮胚移植(ET) |
|---|---|---|
主な特徴 | 採卵と移植を別周期に行う | 採卵と同一周期に移植する |
妊娠率 | 一般的に新鮮胚移植と同等以上 | やや低い場合がある(OHSSの影響等) |
OHSSリスク | 回避できる | 採卵後に高まる |
費用 | 凍結・保管費用が発生する | 凍結費用不要 |
スケジュール | 採卵後1周期以上あけて移植 | 採卵と同じ周期内に移植 |
凍結保存できる期間
凍結胚の保存期間についてはクリニックごとに定めた規定があります。
- 一般的な保存期間:多くのクリニックでは1年単位で更新。長期保存(数年〜10年以上)に対応しているクリニックもある
- 保管費用:年間1万〜3万円程度(施設による)
- 廃棄の取り扱い:更新手続きを行わない場合・治療終了時は廃棄または研究提供の選択肢がある(施設の同意書に基づく)
保存期間や料金については移植前にクリニックで確認してください。
融解後の胚の生存率と移植の流れ
凍結胚を使用する際は、まず融解(解凍)を行います。
- 移植当日の朝、凍結胚を融解する
- 融解後の胚を顕微鏡で確認(細胞の変性・回復状態を評価)
- 良好に融解できた胚を移植する
- 融解後に胚の状態が著しく悪化した場合はキャンセルになることがある(頻度は低い)
ガラス化法による凍結では約90〜95%の胚が正常に融解できるとされています。
費用と保険適用
2022年の保険適用拡大により、凍結融解胚移植の多くが保険診療の対象になりました。
- 凍結保存費用:採卵周期に含まれる場合と別途請求される場合がある(保険対応)
- 融解・移植費用:保険適用(自己負担3割)
- 1周期の目安(自己負担3割):診察・薬・移植費用合計で5万〜8万円程度
- 年間凍結保管料:原則自費(1万〜3万円程度)
よくある質問(FAQ)
凍結した胚の質は融解後に下がりますか?
ガラス化法では融解後の胚の状態は凍結前とほぼ同等に保たれることが多いです。ただし、元々の胚の質が低い場合は融解後にさらに状態が悪化することもあります。
凍結胚移植は何回まで試みられますか?
保険診療の範囲では、年齢によって通算の回数制限があります(40歳未満は通算6回、40〜42歳は通算3回)。ただし、凍結している胚がある限り自費診療で継続することも可能です。
凍結期間が長いほど胚の質は下がりますか?
適切な管理下であれば、数年にわたる凍結保存でも胚の質は大きく変化しないとされています。長期保存後の胚から正常な妊娠・出産に至った報告も多数あります。
移植前日に体調不良になった場合は延期できますか?
軽度の体調不良であれば、融解前であれば移植を延期することが可能な場合があります。融解後の場合は状況によりますので、早めにクリニックへ連絡してください。
凍結胚が全て移植後も妊娠しなかった場合は?
全ての凍結胚を使い切った後も妊娠に至らない場合は、再度採卵から行うことになります。反復着床不全の精査(ERA・PGT-A等)を検討する段階でもあります。
まとめ
凍結胚移植は、現在の体外受精で最もよく使われる移植方法です。
- ガラス化法により融解後の生存率が大幅に向上している
- OHSSリスク回避・子宮内膜環境の整備という点でメリットがある
- 保険適用により費用負担が軽減された
- 余剰胚は適切な期間、凍結保管できる
凍結胚をいつ移植するか、どの胚から使うかは担当医と相談しながら計画します。疑問点はあらかじめ整理して診察時に確認しておくと安心です。
次のステップ・受診のご案内
凍結胚移植の詳細やスケジュールについては、担当クリニックへお問い合わせください。
免責事項
この記事は医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針の決定を行うものではありません。具体的な症状や治療については、必ず担当医師にご相談ください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、医学的知見の更新により変更になる場合があります。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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