着床前遺伝学的検査(PGT)は、体外受精などで得た胚の細胞の一部を採り、染色体や遺伝子を調べる検査です。検査の目的によって種類と対象が異なります。不妊治療を受けるすべての人に必要な基本検査ではありません。
「着床前診断」と呼ばれることもありますが、すべての病気を調べるものではなく、妊娠・出生を保証するものでもありません。まず、何を調べる検査を、なぜ自分たちが検討するのかを遺伝カウンセリングで確認します。
PGTは、目的により種類が異なります
| 種類 | 主な目的・対象の考え方 |
|---|---|
| PGT-A | 胚の染色体の数を評価。反復する移植不成功・流死産歴、高年齢の不妊症など、学会の対象条件に沿って検討 |
| PGT-SR | 夫婦いずれかに均衡型転座などの染色体構造の変化が確認されている場合に、胚の染色体を評価 |
| PGT-M | 重篤な遺伝性疾患に関する検査。病気と家族の背景などを踏まえ、個別に適応を審査 |
夫婦の染色体検査と、胚を対象にするPGTも別の検査です。検査名が似ていても、調べる対象や分かることを一緒にしないでください。
PGT-Aの対象は、2025年9月に改定されています
日本産科婦人科学会の2025年9月8日付の改定通知は、反復する体外受精胚移植の不成功、反復する流死産の既往に加え、「女性が高年齢の不妊症の夫婦」を追加しています。通知では35歳以上を目安としています。日本産科婦人科学会:PGT-Aの対象に関する改定通知
ただし、35歳になれば全員に必要、年齢だけで利益が確定する、という意味ではありません。検査で期待できること、採れる胚の見込み、これまでの治療歴、検査をしない選択も含めて相談します。通知には実際の運用の詳細は別途施設へ知らせる旨もあり、受診先で現在の対象・体制を確認してください。
夫婦いずれかに染色体構造の変化がある場合は、PGT-AとPGT-SRの適応を混同しないことも必要です。PGT-SRの細則は、染色体構造の変化が確認された不妊症・不育症の夫婦を対象とし、妊娠や流死産の既往は問わないとしています。日本産科婦人科学会:PGT-SRの細則
PGT-Mは、病名だけで受けられると決まりません
日本産科婦人科学会のPGT-MのQ&Aは、疾患名の一覧で一律に適応を決めず、症状や家族の状況などを踏まえて申請ごとに判断すると説明しています。同じ疾患でも判断が異なる場合があります。日本産科婦人科学会:PGT-MのQ&A(2026年5月改訂版)
相談では、検査の内容だけでなく、家族歴、既に分かっている遺伝子・染色体の情報、本人たちの希望や不安を整理します。検査を受ける方向にも、受けない方向にも誘導されず、情報を得た上で選べることが大切です。
胚の検査までには、採卵や培養などの負担があります
一般に、相談・必要な評価、卵巣刺激と採卵、受精と胚培養、細胞の採取と解析、結果説明を経て、移植の方針を相談します。実際の工程や保存方法は検査・施設・治療経過で異なります。
検査できる段階まで胚が育たない、結果が判定不能、移植を検討できる胚が得られない、といった場合もあります。採卵から移植まで必ず進めるものではありません。細胞採取による胚への負担、凍結・融解、追加の通院や時間、費用も含めて説明を受けましょう。
「1回の移植での成績」と「採卵からの出生」は分けて考えます
PGT-Aは移植する胚を検討するための情報を増やしますが、検査しても胚の数や質を増やすわけではありません。移植できた人だけの成績と、検査・採卵を始めた人全体の累積の出生の見込みは、分母が異なります。
ASRMの2024年の委員会見解は、全体外受精患者への一律のPGT-Aの有用性は確立していないとしています。対象となる人、胚の数、検査方法などを踏まえて利益と不利益を検討する必要があります。日本の対象条件と、海外の研究の結論も分けて読みます。ASRM:PGT-Aの有用性と限界
結果には不確実性があり、すべての疾患を除外できません
調べるのは胚の細胞の一部です。検出できる変化には限界があり、判定不能や誤判定の可能性もあります。異なる染色体の状態の細胞が混在する「モザイク」の判定も、検査方法や施設の基準によって解釈が変わる場合があります。
結果だけで自己判断せず、どこまで分かり、何が分からないのか、移植の選択肢はどうなるかを専門家に聞いてください。「検査結果に問題がない=必ず健康な子どもが生まれる」という保証ではありません。
費用と保険・先進医療の条件は、治療全体で確認します
検査料に加えて、採卵・培養・細胞採取・保存・移植・相談など、何が別料金になるかを確認します。一般的な不妊検査一式の料金をPGTの総額として案内することはできません。
厚生労働省の現行一覧には、特定の対象と施設による「着床前胚異数性検査2」が先進医療Bとして掲載されています。すべてのPGTがこの枠組みに入るわけではなく、学会の対象条件と保険・先進医療の条件も別です。
本人が受ける治療がどの制度に該当するか、保険部分との併用条件、総額を書面で確認してください。厚生労働省:先進医療の実施施設一覧
出典と確認日
2026年10月26日に日本産科婦人科学会の改定通知・細則・Q&A、厚生労働省、ASRMの該当部分を確認しました。PGTの種類、国内の対象、研究上の限界を分けています。医師による本記事の個別監修はありません。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
公的機関や医学会などの情報をもとに、女性の健康と医療の選択に役立つ情報を整理しています。