精液検査で運動率が低いと言われても、その割合だけで妊娠の可否や必要な治療は決まりません。総運動率と前進運動率は異なる項目で、採取条件や変動、ほかの精液所見、双方の状態を合わせて説明を受けます。
WHO2021第6版の参考表では、総運動率の下位5パーセンタイルは42%、前進運動率は30%です。12か月以内に自然妊娠したカップルの男性の分布に基づく値で、不妊と妊孕性を分ける境界ではありません。WHO:精液検査マニュアル第6版(2021年)
結果の数字を見て、次に聞きたいこと
| 確認したいこと | 診療で相談すること |
|---|---|
| 総運動率と前進運動率が違う | どの動きを含む割合か、報告書の項目名と評価方法を確認する |
| 以前より値が低かった | 採取条件・体調や経過を伝え、必要な再検査を相談する |
| 動く精子が見られないと言われた | 生存率等も含む評価が必要か、専門診療で確認する |
| 運動率が低い原因を知りたい | 既往・薬・診察やほかの精液所見を合わせた評価を聞く |
| 治療を勧められた | 率だけでなく双方の状態と希望、治療目的・限界を確認する |
総運動率・前進運動率・生存率は別の情報です
総運動率には前へ進む精子と、動いていても前進しない精子が含まれます。前進運動率は前へ進む動きをみる項目です。同じ「運動率」という呼び方でも、どの項目を指すのかを確認してください。
生存率は、精子が生きているかを調べる別の評価です。WHOは、運動が乏しい検体では、動かないが生きている精子と、動かず死んでいる精子を区別することが重要と説明しています。動かない精子がすべて死んでいるとは限りません。
低い・基準内という結果だけで結論にしません
42%や30%を下回れば妊娠できない、上回れば妊娠できるという判定には使えません。精液量や濃度、総精子数等も別の項目であり、運動率だけで全体の状態を表すことはできません。
運動率が0%という結果でも、採取条件や生存率等を医療機関で確認します。割合を見ただけで、全員が精巣精子採取術や顕微授精に進むという自己判断をしないでください。
変動と再検査は、本人の条件を伝えて相談します
精液の所見は変動するため、必要に応じた再検査や診察等を合わせて考えます。全員が2〜3回測って平均を出せばよい、決まった日数後なら正しい値になる、と固定するものではありません。
禁欲期間、採取できなかった部分、発熱や体調の変化、使っている薬等を伝えます。自宅採取の可否や持参方法・時間等は施設の説明で確認し、不十分だった点も隠さず相談してください。日本泌尿器科学会:男性不妊症の初期評価(2024年版)
原因と対処は、問診や診察を合わせて考えます
造精機能、精子の通り道や性機能等を評価する中で、精索静脈瘤、感染症、ホルモンや薬等の関与を検討する場合があります。一つの精液項目だけで病名を決め、全員に抗菌薬・ホルモンや手術を勧めるものではありません。
男性ホルモン薬や筋肉増強目的の製品も伝えます。EAUはテストステロンを男性不妊治療に使わないよう推奨しています。自己購入・追加・中止をせず、妊娠の希望と服薬を医師に確認してください。EAU:男性不妊症の診療指針
生活の見直しや治療で、結果を約束しません
喫煙・飲酒、体重や生活についての相談は健康のためにも役立ちますが、決まった期間で運動率が改善する、サプリを使えば妊娠率が上がると保証するものではありません。現在使っている製品と量も医療者に伝えます。
治療の選択は、所見や双方の年齢・検査、妊娠を試みた期間、希望と負担を合わせて相談します。割合ごとの固定の治療表ではなく、何を目的に行い、いつ見直すか、期待できる結果の根拠と限界を聞いてください。
出典と確認日
2026年10月30〜31日に、WHO2021の参考表と限界、生存率の該当頁、日本泌尿器科学会2024指針の原因・初期評価、EAUのテストステロンに関する採用節を確認しました。個人の診断や妊娠率、特定の手術の効果を保証するものではありません。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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