胚盤胞培養とは、体外受精で採卵・受精した胚を受精後5〜6日目の「胚盤胞」まで体外で培養する技術です。初期胚(受精2〜3日目)移植と比較して着床率が高い傾向があり、現在の不妊治療の標準的な選択肢の一つです。
この記事のポイント
- 胚盤胞培養の仕組みと初期胚移植との違い
- 胚盤胞到達率の目安とクリニック間の差
- 胚盤胞培養が向いているケース・向いていないケース
胚盤胞培養とは何か
受精卵は分割を続け、受精から5〜6日後に胚盤胞(内部細胞塊と栄養外胚葉が分化したステージ)に発育します。胚盤胞まで培養することで「発育能力のある胚」を選別でき、移植あたりの妊娠率向上が期待されます。
胚の発育ステージと移植タイミング
ステージ | 受精後日数 | 細胞数 | 移植タイミング |
|---|---|---|---|
2細胞期 | 1〜2日 | 2個 | 初期胚移植 |
4〜8細胞期 | 2〜3日 | 4〜8個 | 初期胚移植 |
桑実胚 | 4日 | 16〜32個 | 移行期 |
胚盤胞 | 5〜6日 | 100個以上 | 胚盤胞移植 |
胚盤胞到達率の目安
受精した胚のすべてが胚盤胞まで育つわけではありません。胚盤胞到達率は胚の質・年齢・培養環境によって異なります。日本産科婦人科学会のデータでは、全体的な到達率は採卵卵子あたり20〜40%程度とされています。
年齢別の胚盤胞到達率の目安
- 35歳未満:受精卵の40〜60%程度が胚盤胞に到達
- 35〜39歳:30〜50%程度
- 40歳以上:20〜35%程度(染色体異常胚の割合増加に伴い低下)
到達率はクリニックの培養技術・培養液・インキュベーター環境によっても差が生じます。クリニック選択時は到達率の実績を確認することも一つの指標です。
胚盤胞培養のメリット・デメリット
メリット
- 着床率の向上:胚盤胞移植の着床率は初期胚移植より高い傾向(クリニック・患者背景により差がある)
- 胚の選別:発育停止した胚を早期に除外でき、移植する胚の質を確認できる
- PGT-A(着床前胚染色体異数体検査)との親和性:胚盤胞段階でのみ実施可能
- 移植回数の削減:より発育能力の高い胚を優先的に移植できる
デメリット・注意点
- 胚盤胞到達前に全滅するリスク:胚数が少ない場合、培養中に全胚が発育停止し移植できなくなる可能性がある
- 初期胚なら着床できた胚を失う可能性:体外環境より子宮内の方が発育しやすい胚が一定数存在する
- 培養期間が長くなる:採卵から胚盤胞まで5〜6日かかるため管理が複雑になる
胚盤胞培養が向いているケース・向いていないケース
胚盤胞培養が適しているケース
- 採卵数が複数(目安:5個以上)で複数の受精卵がある
- 過去に初期胚移植で着床しなかった経験がある
- PGT-A(着床前診断)を検討している
- 全胚凍結(Freeze All)後に凍結融解移植を行う予定
初期胚移植も選択肢に入るケース
- 採卵数が少ない(受精卵が1〜2個)
- 過去の胚盤胞培養で全胚が発育停止した経験がある
- 高齢(42歳以上)で胚の発育能が低下している可能性がある
胚盤胞のグレードは3つの項目を分けて見る
Gardner分類の数字は拡張の段階、最初の文字は内部細胞塊(ICM)、次の文字は栄養外胚葉(TE)の評価です。数字の1と文字のAが対応する、という見方はしません。
数字は、胚盤胞の拡がりを表す
| 段階 | 観察する状態 |
|---|---|
| 1 | 胚の中の空洞が、全体の半分未満 |
| 2 | 空洞が、全体の半分以上 |
| 3 | 空洞が、胚全体を満たしている |
| 4 | 空洞がさらに拡がり、外側の透明帯が薄くなっている |
| 5 | 透明帯から出始めている(孵化中) |
| 6 | 透明帯の外へ完全に出ている(孵化後) |
2つの文字は、別々の細胞を評価する
| 評価 | ICM:内側の細胞の集まり | TE:外側の細胞層 |
|---|---|---|
| A | 多くの細胞が密にまとまる | 多くの細胞が連続した層をつくる |
| B | いくつかの細胞がゆるく集まる | 中程度の細胞数で、ゆるい層をつくる |
| C | 見える細胞がごく少ない | 大きめの細胞が少数で、層のまとまりが弱い |
2025年のESHRE/ALPHA提言では、ICMが見えない場合や変性がある場合などを「D」と区別しています。施設で使う評価基準も確認してください。
例えば「4AA」は、拡張段階4・ICMがA・TEがAという組み合わせです。形態の評価だけで妊娠の可否は決まりません。移植の優先順や自分の胚の意味は、培養士・医師に確認しましょう。
出典:ESHRE/ALPHA:Istanbul Consensus更新(2025年)、Table 9。
よくある質問(FAQ)
Q. 胚盤胞に育たなかった場合、治療は終わりですか?
初期胚(2〜3日目)が残っている場合、初期胚移植に切り替えることができます。また次の採卵周期で再挑戦することも可能です。主治医と次のステップを相談してください。
Q. 胚盤胞グレードが低くても妊娠できますか?
Cを含む胚も、移植が検討される場合があります。グレードは見た目の評価で、染色体の検査とは異なり、妊娠の可否を確定するものでもありません。自分の胚の評価と移植の順番を、医師・培養士に確認してください。
Q. 凍結胚盤胞と新鮮胚盤胞、どちらが着床率が高いですか?
現在は凍結融解胚盤胞移植(FET)の方が新鮮胚移植より着床率が高い傾向があります(子宮内膜の受容性が整った状態で移植できるため)。OHSSリスクが高い方には全胚凍結が標準的に推奨されます。
Q. 胚盤胞培養の費用はどのくらいですか?
体外受精の保険適用(2022年4月〜)では、胚盤胞培養も保険内で実施されます。保険適用の場合の自己負担は採卵〜移植で概ね30〜50万円程度(年齢・クリニックにより異なる)。自費の場合はクリニックごとに異なります。
まとめ
胚盤胞培養は受精から5〜6日目まで胚を体外で育て、発育能力の高い胚を選んで移植する技術です。着床率の向上が期待できる一方、胚数が少ない場合は全胚発育停止のリスクもあります。
- 胚盤胞到達率は年齢・胚質によりおよそ20〜60%
- 採卵数が少ない場合は初期胚移植と胚盤胞移植の両方を検討する
- グレードが低くても妊娠する例は多い。過度に悲観しない
- 2022年4月以降、保険適用で実施可能
※本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の治療法を推奨するものではありません。治療方針は必ず担当医にご相談ください。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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