自己抗体とは、自分の体の成分に反応する抗体です。検査名によって調べる対象も、結果の意味も異なります。「自己抗体検査を受けないと不妊治療を始められない」というものではありません。何を疑って測るのか、陽性なら診療がどう変わるかを確認して選びます。
不妊と不育症の評価は、分けて考えます
妊娠に至らない原因を調べることと、流産などを繰り返したときの評価は、同じ検査一式ではありません。ASRMの2026年の不妊評価の文書も、特別な臨床上の理由がなければ免疫学的な検査を一律に行うことは勧めていません。症状や既往歴に応じて必要な検査を選ぶ考え方です。ASRM:不妊評価、Table3
よく似た言葉でも、調べる目的は違います
| 検査の例 | 何を確認するか |
|---|---|
| 抗リン脂質抗体 | 不育症や血栓症などの経過から、抗リン脂質抗体症候群を評価する。陽性だけで診断が決まるわけではない |
| 抗TPO抗体 | 甲状腺の自己免疫に関係する抗体。TSH・FT4など甲状腺の働きを見る検査と分けて解釈する |
| 抗核抗体 | 全身性エリテマトーデスなどを疑う場合に検討。すべての不妊・流産の原因を確定する検査ではない |
国内の「不育症管理に関する提言2025」は、不育症の評価でも検査を推奨・選択的・非推奨に分けています。抗核抗体は、続発性の抗リン脂質抗体症候群の背景となる病気などを疑う場合の意義から、選択的検査に位置付けています。
パネルに含まれるから全員に必要、とは限りません。こども家庭庁公開:不育症管理に関する提言2025、PDF29頁(冊子28頁)
陽性なら、すぐ薬を始める?
自己抗体が見つかったことと、それが今回の不妊・流産の原因であること、治療の効果があることは別です。抗リン脂質抗体症候群では、妊娠や血栓症の経過と検査結果を合わせて評価します。
国内提言では、陽性項目について12週間以上あけた再検査で持続陽性を確認するなどの条件があります。自己判断で「陽性だから確定」とせず、次の確認の計画を聞いてください。
また、同提言では、抗TPO抗体が陽性でも甲状腺機能が正常な不育症の人にレボチロキシンを投与した試験で、妊娠転帰の改善は認められなかったとしています。抗体と甲状腺機能の異常を混同せず、治療や経過観察の理由を確認しましょう。
これは、甲状腺の病気がある人が処方薬を自己中止してよいという意味ではありません。
アスピリン、抗凝固薬、ステロイドなどを、検査票だけを見て始めたり増量したりしないでください。期待する効果と不利益、診断の確かさ、妊娠の状況を担当医と相談します。検査や治療の数を増やすことが、そのまま妊娠・出産の保証にはなりません。
検査を勧められたときの5つの質問
- 正式な検査名は何か。何の病気や状態を疑っているか
- 自分の症状、流産・妊娠の経過、血栓症や持病のどの点が理由か
- 結果が陽性・陰性のとき、それぞれ診療はどう変わるか
- 再検査は必要か。時期と、以前の結果を使えるか
- 保険・自費と費用、追加の診察・薬、結果を説明する日
他院の結果があれば、検査日・測定法・単位・基準範囲が分かる票を持参します。違う測定法の数字を、そのまま同じ基準で比べることはできません。結果を受け取っただけで不安になった場合も、診断や治療に結びつく所見かを説明してもらえます。
出典と確認日
2026年10月27日にASRM2026の採用節、保存済みの国内提言2025の74頁中15・16・29頁(冊子14・15・28頁)を本文と画像で確認しました。海外の不妊評価と国内の不育症評価を分けています。全原典の読了や本記事の個別の医師監修ではありません。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
公的機関や医学会などの情報をもとに、女性の健康と医療の選択に役立つ情報を整理しています。