「ミトコンドリアDNA検査」という名前だけでは、何を調べる検査かは決まりません。胚のミトコンドリアDNAの量から評価する追加検査と、遺伝性のミトコンドリア病に関わる変化を調べる検査では、目的や対象が違います。
「卵子の質が数値で正確に分かる」とまとめず、検体・測定するもの・結果の使い方を確認してください。
名前が似ていても、目的を分けます
| 検査・治療 | 確認する違い |
|---|---|
| 胚のmtDNA量の測定 | ミトコンドリアDNAの量などを胚の評価に使う追加検査。遺伝性疾患の検査と同じではない |
| ミトコンドリア病に関わる遺伝学的検査 | 疾患の原因や遺伝の可能性を評価する。症状・家族歴などに応じた専門的な相談が必要 |
| ミトコンドリア置換 | 検査ではなく、卵子・胚の核の遺伝物質を移すなどの技術。目的・制度・安全性を別に考える |
血液、卵子、胚など、どの検体を用いるかも重要です。胚の一部を調べた結果を、その人のすべての卵子の質や自然妊娠の見込みへ当てはめることはできません。
mtDNAの量は、妊娠の確実な予測値ではありません
ESHREの2023年の追加検査に関する推奨は、mtDNA量と胚の状態などに関連が報告された一方、着床との関連が確認できなかった研究もあると整理しています。研究上の関連があることと、一人ひとりの妊娠・出産を予測できることは別です。
同推奨は、mtDNA量の測定を研究段階とし、日常診療での一律使用を勧めていません。これは胚の追加評価についての説明で、ミトコンドリア病が疑われる人の診断や、疾患の遺伝に関する検査を一律に否定するものではありません。
ESHRE:追加検査の推奨・Mitochondrial DNA load measurement節
遺伝性疾患が心配な場合は、専門の相談へ
家族にミトコンドリア病がある、診断や遺伝に関わる説明を受けている場合は、検査の名称だけで妊活用の追加検査を選ばず、主治医や遺伝医療の担当者へ相談してください。どの変化があり、何を検査できるか、結果から何が分かるかを個別に考えます。
ESHREも、mtDNA量の測定と、ミトコンドリアDNAに関わる疾患のPGT-Mを混同しないよう述べています。国内のPGT-Mには施設認定や症例審査などがあり、海外の検査が紹介されているだけで国内でも同じように受けられるとは限りません。日本産科婦人科学会:PGT-Mの見解・細則
検査と「ミトコンドリアを補う治療」は別です
英国HFEAは、重いミトコンドリア病を子どもへ伝える高いリスクがある人に対するミトコンドリア提供・置換の制度を説明しています。これは一般的な「卵子の若返り」を案内するものではなく、英国で個別の承認を伴う治療です。
日本の提供範囲や承認制度へそのまま置き換えないでください。HFEA:ミトコンドリア提供治療の対象と制度
ESHREは卵子の質を改善する目的のミトコンドリア置換を勧めていません。検査で何かが測れることから、補充・置換やサプリメントで妊娠・出産が増えると結論づけることはできません。
追加検査の説明で比べたいこと
- どの検体から、mtDNAの量か遺伝子の変化か、何を測るのか
- 検査後に、胚の選び方や治療を具体的にどう変えるのか
- 自分と同じ対象で、妊娠率だけでなく生児獲得などへの利益が示されているか
- 判定できない場合や誤差、検体採取の負担、追加費用は何か
- 受けずに通常の評価を続ける選択と、どの点が違うか
AMHなどの卵巣予備能の検査も、単独で卵子の質を確定するものではありません。検査を増やす前に、年齢や治療の経過、今の選択を変える情報かどうかを医師と確認してください。
出典と確認日
2026年10月27日にESHRE2023のmtDNA量測定・ミトコンドリア置換の採用節、HFEAと国内PGT-M見解の該当部分を確認しました。遺伝性疾患の検査・追加の胚評価・置換治療を区別し、卵子の質や出産への効果を保証していません。本記事の個別の医師監修はありません。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
公的機関や医学会などの情報をもとに、女性の健康と医療の選択に役立つ情報を整理しています。