黄体ホルモン(プロゲステロン)は、子宮内膜や妊娠の維持に関わるホルモンです。ただし、流産歴がある人全員に不足している、補充すればすべての流産を防げる、という意味ではありません。胚移植に伴う黄体補充と、自然に妊娠した人の流産予防では、使う理由や根拠が異なります。
処方を受けている場合は、記事の一般的な説明で量や回数を変えたり、中止・再開したりせず、治療先の指示を確認してください。
今の状況に合わせて、確認する点を分けます
| 状況 | 確認すること |
|---|---|
| 胚移植のために処方された | 製品名、開始日時、回数、判定後の継続予定 |
| 流産歴があり、妊娠初期に出血した | 受診して妊娠の場所・経過と、補充の適否を相談 |
| 強い腹痛・多い出血・ふらつきがある | 薬の調整で様子を見ず、救急を含め受診 |
ARTの黄体補充と、不育症への使用は別の説明が必要です
採卵やホルモン補充周期の胚移植では、治療に合わせて黄体ホルモンを補います。国内のウトロゲスタン腟用カプセルとルティナス腟錠の電子添文は、いずれも「生殖補助医療における黄体補充」を効能として示しています。これを、そのまま自然妊娠や不育症すべての承認された用法と読み替えることはできません。
流産歴、今回の妊娠方法、出血の有無、診察結果によって検討は変わります。適応内か適応外か、期待できる利益と不確実性、本人の費用負担について説明を受けましょう。薬がないことだけで治療が不十分とも、薬があることで流産を防げるとも判断できません。
妊娠初期の出血と流産歴がある人の根拠を、全員へ広げません
英国NICEは、超音波で子宮内妊娠が確認され、現在の妊娠で出血があり、過去に流産した人に、特定の腟用微粒子化プロゲステロンを勧めています。心拍確認後の継続期間についても条件を定めています。
この海外の推奨を、日本のすべての製品・用量や、出血のないすべての妊婦に当てはめることはできません。NICE NG126:流産への対応、1.9
ASRMの2026年の不育症に関する意見書は、妊娠初期の出血や原因不明の反復流産がある場合、利益の不確実性も説明し、本人と相談して補充を検討する考え方を示しています。
NICEとは推奨の対象・表現が同じではありません。複数の研究で全体の出生率改善が確立したわけではなく、一部の集団の結果を慎重に読む必要があります。ASRM:反復流産について(2026年)
PROMISEやPRISMで調べた対象・薬・投与法は、それぞれの研究条件に沿って解釈します。ある腟用製剤の結果を、内服の別成分や注射にも同じ効果がある根拠として扱いません。自分の場合に使う理由と、どの結果を期待しているかを担当医に聞きましょう。
一回の採血や基礎体温だけで「不足」と決めません
血中プロゲステロンは短時間でも変動し、採血した時点や周期にも左右されます。自然周期の一回の数値が一定値より低い、基礎体温の高温期が短い、という情報だけで流産の原因を断定し、自己補充することはできません。
ASRMは、黄体機能不全について、妊娠できる人と不妊の人を確実に区別できる臨床検査が確立していないと説明しています。自然周期の評価と、胚移植中の薬の管理は別です。治療中に施設が採血する場合は、薬の投与経路・時間も含めた判断を聞いてください。ASRM:黄体機能不全の診断と治療
腟剤の入れ方・保管・使用終了は、製品と処方で確認します
ウトロゲスタンとルティナスは同じ成分でも、一回量、回数、開始日、添文上の継続期間が異なります。指で入れるか専用器具を使うかも、製品に沿って確認します。すべて同じ深さに入れる、全員が10〜15分横になる、寝る前だけでよい、と共通の手順にはできません。
両製品の添文の貯法は室温保存です。「腟剤はすべて冷蔵」と考えず、製品ごとの説明と薬局の指示を確かめます。白い残りや漏れを見ても、吸収された量は見た目だけでは判断できません。
自分で追加投与したり、腟内を洗って取り除いたりせず、不安があれば薬剤師・治療先へ連絡してください。PMDA:ウトロゲスタン電子添文、PMDA:ルティナス電子添文
使用を忘れた場合、投与後に吐いた・漏れたと感じた場合、併用する腟剤がある場合は、その薬の対応を確認します。自己判断で二回分をまとめて使いません。アスピリンやヘパリン等を使っている場合も、出血や併用薬を含めて伝えます。
終了日は、治療周期、製品、妊娠の経過や使用目的で異なります。すべて妊娠8〜12週で減量する、英国の推奨期間まで全員が続ける、という指示にはできません。判定後の連絡と、処方が切れる前の相談予定を決めておきましょう。
出血や痛みを、補充だけで対処しません
妊娠の場所がまだ確認できていない時期の出血・腹痛には、異所性妊娠などの評価も必要です。薬を増やせば安全、出血が止まれば経過良好と自己判断せず、妊娠の可能性を伝えて受診します。
強い腹痛、多量の出血、冷汗やふらつき、意識が遠のく感じがある場合は、速やかに救急を含む医療の助けを求めてください。症状が軽くても、妊娠中の出血や気になる変化は治療先へ連絡します。流産が起きた場合も、薬の使い方や本人の努力だけで原因を決めることはできません。
出典と確認日
2026年10月26日にNICE、ASRM、PMDAの説明を参照しました。海外の条件付き推奨、国内ART用製剤の添文、本人の処方を分けています。医師による本記事の個別監修はありません。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
公的機関や医学会などの情報をもとに、女性の健康と医療の選択に役立つ情報を整理しています。