
不育症は産婦人科だけで完結する疾患ではありません。抗リン脂質抗体症候群には血液内科、免疫異常には膠原病・リウマチ科、子宮形態異常には生殖医療科、そして心理的ケアにはカウンセラー——多領域の専門家が連携してはじめて、適切な診断と治療が実現します。この記事では、不育症のチーム医療の実際と、各専門科の役割を解説します。
この記事のポイント
- 不育症の原因は多岐にわたり、産科だけでなく血液内科・免疫科・心理職の連携が重要
- チーム医療体制が整っている施設では、診断精度と治療成績の向上が期待できる
- 患者自身も「チームの一員」として、情報共有と意思決定に参加することが大切
なぜ不育症にチーム医療が必要なのか
不育症の原因は単一ではなく、血液凝固異常・免疫異常・子宮形態異常・内分泌異常・染色体異常など多岐にわたります。一つの診療科だけでは原因の全体像を把握しきれないケースがあり、複数の専門家が連携するチーム医療(多職種連携)が治療成績の向上に寄与するとされています。
不育症の原因分布
原因 | 割合 | 関連する診療科 |
|---|---|---|
抗リン脂質抗体症候群 | 約10〜15% | 産科+血液内科+膠原病科 |
子宮形態異常 | 約7% | 産科+生殖医療科 |
夫婦染色体異常 | 約4〜5% | 産科+遺伝カウンセリング |
内分泌異常(甲状腺・糖尿病等) | 約5〜8% | 産科+内分泌内科 |
血栓性素因(プロテインS等) | 約7〜8% | 産科+血液内科 |
原因不明 | 約50% | 産科+各科による除外診断 |
各専門科の役割——誰が何を担当するのか
不育症のチーム医療における各専門家の役割を整理します。すべての施設にこの体制が整っているわけではありませんが、自分の治療に関わる専門領域を知っておくことは、主治医との対話に役立ちます。
産婦人科(不育症外来)
チーム医療のコーディネーター的役割を担います。初期評価・検査オーダー・妊娠中の管理・分娩管理を中心に、必要に応じて他科にコンサルテーション(紹介・相談)を行います。
血液内科
抗リン脂質抗体症候群やプロテインS欠乏症など、血液凝固異常の精密検査と治療方針の策定を担当します。ヘパリン自己注射の指導や、凝固系モニタリングも血液内科の専門領域です。
膠原病・リウマチ科(免疫内科)
抗リン脂質抗体症候群が全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患に合併している場合、膠原病科との連携が不可欠です。妊娠中のステロイドや免疫抑制薬の調整にも関与します。
内分泌内科
甲状腺機能異常(橋本病・バセドウ病)や糖尿病の管理を担当します。特に甲状腺機能低下症は流産リスクを高めることが知られており、妊娠前からのTSHコントロールが重要です。
遺伝カウンセラー・臨床遺伝専門医
夫婦のいずれかに染色体構造異常(転座等)が見つかった場合、遺伝カウンセリングを通じて次の妊娠のリスクや選択肢(PGT-SR等)について情報提供を行います。
心理士・カウンセラー
反復する流産による心理的負担は非常に大きく、グリーフケアや不安・抑うつへの専門的な対応が求められます。次の妊娠に向けた心理的サポートも重要な役割です。
チーム医療が機能するための条件
多職種連携が効果を発揮するためには、単に複数の診療科が存在するだけでは不十分です。以下の条件が重要とされています。
情報共有の仕組み
- カンファレンス:定期的な症例検討会で、各科の見解を共有し治療方針を統一
- 電子カルテの共有:他科の検査結果や処方内容をリアルタイムで確認できる環境
- 治療計画書の作成:各科の役割分担と治療スケジュールを文書化
コーディネーターの存在
患者が複数の科を受診する際の窓口となるコーディネーター(不育症外来の担当医や看護師)がいると、診療の流れがスムーズになります。「どこに何を相談すればいいかわからない」という患者の不安を軽減する効果もあります。
チーム医療体制が整った施設の見つけ方
不育症の専門的なチーム医療を受けられる施設は限られています。以下の手がかりを参考に、自分に合った施設を探してみてください。
- Fuiku.jp:厚労省研究班のサイトで不育症診療に対応する施設情報を確認
- 日本生殖医学会の認定施設:生殖医療専門医が在籍する施設は不育症にも対応していることが多い
- 大学病院・周産期センター:複数の診療科が院内に揃っており、チーム医療を組みやすい
- 主治医からの紹介:かかりつけ医に相談し、専門施設への紹介状を書いてもらう
施設選びで確認したいポイント
確認項目 | 具体的な質問例 |
|---|---|
専門医の在籍 | 不育症を専門に診ている医師はいますか? |
他科との連携 | 血液内科や膠原病科との連携体制はありますか? |
心理サポート | カウンセラーや心理士に相談できますか? |
遺伝カウンセリング | 染色体異常が見つかった場合の対応は? |
患者としてチーム医療に参加するために
チーム医療において、患者自身も重要なチームメンバーです。医療者と良好なパートナーシップを築くために、以下の点を心がけると治療がスムーズに進みやすくなります。
- 治療歴の整理:過去の流産歴、検査結果、服薬歴を時系列でまとめておく(お薬手帳の持参も有効)
- 質問の準備:受診前に聞きたいことをメモしておく。「他の科に相談すべきことはありますか?」と聞くのも効果的
- 情報の橋渡し:他院で受けた検査結果の紹介状を持参する。複数の施設にかかる場合は、各施設に他院の情報を伝える
- 自分の希望を伝える:治療方針について納得できない点があれば遠慮なく質問する。セカンドオピニオンを求めることも選択肢
よくある質問(FAQ)
不育症はどの科を受診すればいいですか?
まずは産婦人科(できれば不育症外来のある施設)を受診してください。必要に応じて、血液内科・膠原病科・内分泌内科などに紹介されます。
チーム医療を受けるには大学病院に行く必要がありますか?
必ずしも大学病院でなくても、不育症専門クリニックが近隣の医療機関と連携体制を組んでいるケースがあります。ただし、複数の診療科が院内に揃っている点では、大学病院や総合病院が有利です。
血液内科の受診を勧められましたが、何をしますか?
抗リン脂質抗体やプロテインSなど、血液凝固系の精密検査を行います。異常が見つかった場合は、ヘパリンやアスピリンによる治療の方針を産婦人科と連携して決定します。
不育症の心理カウンセリングは保険適用ですか?
医療機関に所属する公認心理師による心理支援は、一部保険適用となる場合がありますが、施設によって対応が異なります。自費となるケースもあるため、事前に確認してください。
複数の病院にかかっている場合、情報共有はどうすればいいですか?
紹介状や検査結果のコピーを持参することが最も確実です。お薬手帳も必ず持参してください。患者自身が情報の橋渡し役となることで、チーム医療の効果が高まります。
まとめ
不育症は原因が多岐にわたるため、産婦人科を中心に血液内科・免疫科・内分泌内科・遺伝カウンセラー・心理士が連携するチーム医療が理想的です。すべての施設にこの体制が整っているわけではありませんが、Fuiku.jpや主治医への相談を通じて、専門的な連携体制のある施設を見つけることは可能です。患者自身もチームの一員として、治療歴の整理や質問の準備を行い、主体的に治療に参加していくことが、良い結果につながる第一歩となります。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の施設や治療法を推奨するものではありません。治療方針は個々の状況により異なりますので、必ず主治医にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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