PGT-SRは、夫婦いずれかに均衡型転座などの染色体構造の変化が確認されている場合に、体外受精等で得た胚を検査する方法です。染色体の変化を治す治療ではなく、すべての病気のない胚や出産を保証する検査でもありません。
検査を受けるかどうかは、遺伝カウンセリングで本人たちの状況に沿った説明を受け、自然妊娠を含む選択肢、負担、分からないことを確認して判断します。
検討前に、対象と結果の意味を確かめます
| 状況・確認すること | 対応や相談のポイント |
|---|---|
| 夫婦の染色体検査で構造の変化が確認された | PGT-SRの対象となるか、個別の核型と妊娠の経過から相談します |
| 流産が2回以上あるが構造の変化は未確認 | 流産回数だけでPGT-SRが必要・適応とは決めません |
| 検査結果に問題がないと説明された | どこまで調べた結果かを確認します。すべての病気や出産の保証ではありません |
| モザイク・判定不能等の結果になった | 自己判断で移植の可否を決めず、専門家から限界と選択肢の説明を受けます |
| 体外受精と費用の説明を受ける | 採卵から検査・保存・移植までの計画と制度上の条件をまとめて確認します |
対象は、流産歴や年齢だけでは決まりません
日本産科婦人科学会の現掲載細則では、夫婦いずれかの染色体構造異常が確認されている、不育症または不妊症の夫婦を対象としています。妊娠歴や流産・死産歴の有無は問わないという条件です。「2回以上の流産がないと対象にならない」という説明ではありません。日本産科婦人科学会:PGT-SRの対象・実施方法
一方、流産を繰り返したという理由だけで、PGT-SRの対象と決まるわけでもありません。夫婦の染色体検査を受ける必要性と、その結果の説明も含めて相談します。誰の染色体に変化があるかを、責任の所在と結び付けるものではありません。
PGT-AとPGT-SRは、対象と目的を分けます
PGT-Aは主に胚の染色体の数、PGT-SRは確認された構造の変化に関連する胚の染色体の状態に関する検査です。名称だけを理由に、すべてを同時に受ける必要があるとは判断しません。
PGT-SRの実際の解析には数の変化の評価も含まれます。「数はPGT-A、構造はPGT-SRなので、必ず別々に追加検査する」という単純な分け方ではありません。どの方法で何を調べ、どこからが検出できないのかを、検査計画で確認してください。
胚を得て細胞の一部を調べるため、採卵等の負担があります
学会細則では、通常の体外受精の方法で卵巣刺激・採卵を行い、原則として胚盤胞の栄養外胚葉の細胞を採取し、アレイCGH法・NGS法または同等の方法で解析するとしています。全員が同じ採卵数、培養日数、細胞数、結果までの日数になるわけではありません。
検査できる胚や、移植を検討できる胚が得られない周期もあります。採卵数を可能な限り増やすことを一律の目標とせず、安全性、年齢、卵巣の状態、必要な回数の見込みを相談します。細胞を採る操作や凍結・融解等の負担とリスクも、施設の説明を受けてください。
結果は「正常・異常・不明」の3つだけではありません
学会の掲載細則は、常染色体の解析をA〜Dの4つに分けています。Aは正倍数性の胚で均衡型転座も含み、Bは数的・構造的な変化のある細胞と正倍数性の細胞が混じるモザイク、Cは異数性や不均衡型の構造変化等のある胚、Dは判定不能です。
同細則は、Aの胚で均衡型転座があるかどうかの情報を開示しないとしています。この扱いと、あらゆる検査法で技術的に区別できないという主張は別です。検査施設の方法と、説明・開示の範囲を確認してください。
結果には技術的な限界と不確実性があります。モザイクや判定不能を含め、結果だけで本人が移植・廃棄・再検査を決める必要はありません。胚の取り扱いと追加検査の利益・負担について遺伝カウンセリングを受けます。
流産率と、治療を始めた人全体の出産率を分けて読みます
「不育症管理に関する提言2025」は、PGT-SRを選択した場合と自然妊娠の場合の成績を正しく説明するよう求めています。流産率の低下を報告する研究があっても、累積の出産率の改善まで同じように示されたとは限りません。提言2025:夫婦の染色体構造異常とPGT-SR
胚移植あたりの妊娠率、妊娠した人の流産率、採卵や治療を始めた人全体の出産率は、分母が違います。移植できる胚が得られなかった人や、複数回の採卵が必要な人を含むかも確認してください。
転座の種類や核型等によりリスクは異なります。「自然妊娠では全員50〜70%流産」「PGT-SRなら1〜2年で出産」といった一つの数字・年数を、本人の見通しに当てはめることはできません。施設の成績を聞く場合も、対象、期間、年齢、分母と途中で治療をやめた人の扱いを確認します。
自然妊娠も含めて、本人たちが選べる説明を受けます
染色体構造の変化が確認されても、自然妊娠で出産に至る場合があります。PGT-SRを必須の道筋とはせず、次の妊娠の見通し、流産の身体的・心理的負担、体外受精や検査の負担を一緒に相談します。
学会細則では、検査の前と、結果が分かって胚移植を行う前の遺伝カウンセリングを必須としています。本人たちの核型や既往、社会的背景を踏まえた説明を受け、受けない・いったん考える選択も含めて意思決定できます。妊娠後に分かることや出生前検査の選択についても、PGT-SRで代用できるとせず相談してください。
費用は、検査料だけでなく治療全体で確認します
全国共通の「検査1回10〜30万円」や「保険適用後の採卵から移植30〜50万円」とは案内できません。採卵周期、培養、細胞採取、胚数ごとの解析、判定不能時の対応、保存・年ごとの更新、移植、相談がそれぞれ含まれるかを確認します。
厚生労働省の現行一覧には、一定の染色体構造異常がある場合を含む、条件付きの「着床前胚異数性検査2」が掲載されています。名称が似ていても、全PGT-SRが自動的にこの制度に入る、または全員が検査と体外受精を保険で受けられるという意味ではありません。厚生労働省:先進医療Bの技術と対象
先進医療に該当する場合も、その技術料と通常の保険診療部分は区別されます。実際の施設・検査法・本人の条件で、どの部分が自己負担になるかを書面で確認してください。助成や民間保険等も、住所・受診時期・対象技術・契約の条件を確認し、利用できると決め付けません。厚生労働省:先進医療の費用の扱い
実施施設で、検査前と結果後の相談体制を確認します
学会細則は承認を得た施設で実施するものとしています。古い「全国約100施設」という数だけで探さず、現在の承認状況、遺伝カウンセリング、検査の方法と報告、移植後の連携を施設へ確認します。日本産科婦人科学会:現掲載の見解・細則一覧
相談時は、これまでの妊娠の経過と検査報告書を準備し、検査で分かること・分からないこと、移植候補がない場合、治療の回数と負担、受けない場合の選択肢を聞いてください。本人たちが納得して選ぶための検査であり、特定の方法を受ける義務や出産の保証ではありません。
原典と確認日
2026年11月3日に参考資料を確認しました。学会の現掲載一覧から2026年1月の会告に収載されたPGT-SR細則(2025年6月28日改定)の採用節、不育症管理に関する提言2025、厚生労働省の対象・費用の採用節を確認しました。
全2026年研究・全国施設や料金の監査ではありません。出典を同定できない2023年のメタ解析、全国一律の成功率や所要年数は採用していません。参考資料の改訂日とは別です。個別の医師監修はありません。
免責事項
一般的な情報です。診断や治療の判断は、医師等の医療者へ相談してください。緊急性のある症状では予定の受診日を待たずに連絡してください。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
公的機関や医学会などの情報をもとに、女性の健康と医療の選択に役立つ情報を整理しています。