不育症で使う低用量アスピリンは、病歴や検査、妊娠の経過に応じて計画する治療です。「流産を経験したら全員始める」「同じ週数で全員やめる」というものではありません。何を目的に処方されているかを確かめ、開始・継続・中止と分娩時の計画を主治医と確認してください。
処方の目的と、今後の予定を確認します
| 気になる状況 | 対応・確認すること |
|---|---|
| 妊娠を希望し、アスピリンを提案された | 対象となる病気・検査結果と、いつから始める計画かを尋ねる |
| 妊娠がわかった・妊娠の可能性がある | 処方元へ速やかに伝え、薬ごとの次の使用と受診の指示を確認する |
| 妊娠後期に入る・分娩の予定が変わった | 中止・継続の理由と、産科・麻酔科を含む計画を再確認する |
| 出血、黒い便、あざが増えた等の変化がある | 診療先へ速やかに連絡し、受診と次の服用について指示を受ける |
| 強い出血、意識の異常、息苦しさ等がある | 救急の診療へ。安全に移動できない場合は119へ |
この記事を処方箋や服薬カレンダーの代わりにせず、製品名、量、開始・終了、飲み忘れ時の対応を確認しましょう。市販のアスピリンを代わりに買って始めたり、別の鎮痛薬を自己追加したりしないでください。
抗リン脂質抗体症候群など、対象を区別します
こども家庭庁掲載の提言2025は、改訂札幌APS分類基準を満たす抗リン脂質抗体症候群に対し、低用量アスピリンとヘパリンの併用を説明し、アスピリンの妊娠前からの投与を推奨しています。抗体の結果だけでなく、血栓症や産科合併症等の病歴も関わります。
これは、すべての流産や着床不成功に同じ治療を行うという意味ではありません。同提言は、リスク因子不明の難治性不育症に、アスピリンやヘパリンを一律に使うことを支持する根拠はないとして推奨していません。
検査陽性だけで自己診断せず、何を根拠に必要とされたのかを尋ねてください。不育症管理に関する提言2025:抗リン脂質抗体症候群・リスク因子不明の治療
開始は妊娠前から計画する場合があります
対象となるAPSでは、妊娠前からのアスピリンと、妊娠後のヘパリン開始などを計画することがあります。一方、持病や血栓症の既往、現在の薬、出血しやすさによって判断は変わります。「妊娠検査薬が陽性になってから自分で開始すればよい」という説明ではありません。
妊娠前の相談で、妊娠がわかったときの連絡先と受診時期、併用する薬の開始、検査の予定を確認します。すでに別の病気のために抗血小板薬・抗凝固薬を使っている場合も、処方医と産科で計画を共有してください。
妊娠後期の添付文書と、指針での個別判断を分けます
例としてバイアスピリン錠100mgの現添付文書(2026年10月改訂)は、出産予定日12週以内の妊婦への投与を禁忌としています。それ以外の妊婦等も、治療上の利益が危険性を上回ると判断される場合の使用です。
この製品の承認された効能に、不育症がそのまま記載されているわけではありません。PMDA:バイアスピリンの効能・禁忌・妊婦への注意
一方、提言2025は、APSの状況等から必要と判断した場合、本人の同意を得て妊娠後期も継続を検討すること、終了は麻酔・分娩時の出血や患者・施設の状況を踏まえて決めることを説明しています。
大阪大学の現APS解説でも、2026年の診療ガイドラインの紹介と、必要性を検討する妊娠中の管理が示されています。提言2025:投与期間と分娩・麻酔への配慮、大阪大学:APS合併妊娠の管理
この違いを「添付文書は無視してよい」「28週や36週になれば自動的に中止」のどちらにも読み替えないでください。自分の処方の理由、利益と出血等のリスク、終了と分娩の予定を早めに確認します。計画が不明な場合や予定が変わった場合は、次の服用についても処方元・分娩施設へ速やかに相談してください。
副作用と、併用薬・処置の予定を伝えます
アスピリンは血小板の働きを抑える薬です。出血や消化管の潰瘍、喘息発作やアレルギー反応等への注意が必要です。ヘパリンなどの抗凝固薬、ほかの薬、サプリや市販薬も含めて一覧を伝え、飲み合わせを確認します。
抜歯、手術、採卵、分娩や麻酔の予定があれば、担当する医療者へ服用中であることを伝えます。出血が増える等の変化は診療先へ連絡し、呼吸困難、意識の異常、大量出血等は救急につなぎます。自己判断で決まった日数の休薬・再開をしないようにしましょう。PMDA:相互作用・重大な副作用・処置前の注意
通院と費用の条件も確認します
治療の保険適用と自己負担は、病名・治療内容・適用条件によって異なります。高額療養費も診療月・年齢・所得区分等で上限が変わり、先進医療の技術料など保険外の費用は対象になりません。
治療施設には保険・自費の内訳を、加入先の健康保険には自分の上限と申請方法を確認してください。協会けんぽ:高額療養費の対象・診療月別の上限
薬、採血、診察、併用注射等の内容と保険・自費の条件を確認します。不育症の管理を、人工授精や体外受精の一般的な回数・料金表で判断しないようにしましょう。
出典と確認日
2026年10月30日にPMDA現添付文書、提言2025と大阪大学の採用節を確認しました。2026年版APS妊娠ガイドラインは学会の刊行情報と大学の紹介節を確認した範囲で、原書全体は未確認です。個別の処方や医師監修は行っていません。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
公的機関や医学会などの情報をもとに、女性の健康と医療の選択に役立つ情報を整理しています。