
体外受精で何度移植しても着床しない方が「SEET法」という名前を耳にすることがあります。培養液を子宮内に注入することで着床率の向上を目指すこの方法は、どのような仕組みで、誰に向いているのでしょうか。この記事では、SEET法の基本から費用・実施可能なクリニックの探し方まで詳しく解説します。
この記事でわかること
- SEET法の基本的な仕組みと目的
- 通常の胚移植との違い
- 適している方・適していない方の目安
- 費用と保険適用の現状
- エビデンスの現状と限界
SEET法とは何か——基本の仕組み
SEET法(Stimulation of Endometrium Embryo Transfer)は、胚移植の2〜3日前に、胚を培養した培養液(または空の培養液)を子宮内に注入し、子宮内膜を着床に備えた状態に整える補助的な処置です。
2004年に北里大学のグループが報告した方法で、「胚からのシグナル物質を子宮内膜に先行して届けることで、着床環境を整える」という考えに基づいています。
- 通常の胚移植:培養した胚をそのまま子宮内に移植する
- SEET法:移植2〜3日前に培養液を注入 → 当日に胚を移植する(2ステップ)
- 使用する培養液:胚を培養したのと同じ培地液(胚の代謝産物を含む)
SEET法が期待される作用メカニズム
SEET法の効果が期待されるメカニズムとして、以下の2点が主に挙げられています。ただし、これらは仮説の段階でもあり、完全に解明されているわけではありません。
- 子宮内膜の着床窓の活性化:培養液中に含まれる胚由来のサイトカイン・成長因子が、子宮内膜の受容能(implantation window)を高めると考えられている
- 免疫寛容の誘導:胚の抗原を事前に子宮内膜に認識させることで、移植時の免疫拒絶反応を軽減する可能性が示唆されている
SEET法の対象となりやすい方
すべての患者に推奨される方法ではなく、特定の状況で検討される補助的な処置です。以下に該当する場合に担当医から提案されることがあります。
- 良質な胚を複数回移植しても着床しない(反復着床不全)
- 子宮内膜の受容能に問題が疑われる
- ERA検査(着床の窓検査)で移植タイミングのずれが示された場合の補完的使用
- 不明原因不妊で他の検査に異常がない
一方、初回移植や特別なリスク因子がない場合は、まず標準的な移植を試みることが一般的です。
SEET法の実施手順
SEET法は通常の凍結融解胚移植のスケジュールに組み込まれます。
- 胚の培養:採卵・受精後、胚盤胞まで培養(通常5〜6日間)
- 培養液の回収と凍結保存:胚を凍結する際に使用した培養液を保存しておく
- 移植2〜3日前(ホルモン補充周期の場合):保存した培養液を子宮内に注入(所要時間:5〜10分程度)
- 移植当日:通常と同様に凍結融解胚を子宮内に移植
費用と保険適用の現状
SEET法の費用と保険適用状況は施設によって異なります。2024年時点の一般的な情報として参考にしてください。
項目 | 内容 |
|---|---|
保険適用 | 原則として自費診療(保険適用外) |
費用目安 | 2万〜5万円程度(施設により異なる) |
追加処置の位置づけ | 胚移植費用に加算される |
2022年の不妊治療保険適用拡大でも、SEET法は先進医療または自費診療として扱われている施設がほとんどです。先進医療として認定されている施設では、保険診療と組み合わせて一部費用を抑えられる場合があります。担当クリニックに確認してください。
エビデンスの現状と限界
SEET法は日本発の技術として国内外で研究が続けられていますが、エビデンスの蓄積はまだ発展途上です。
- 肯定的な報告:反復着床不全の患者を対象にした一部の研究で、着床率・妊娠率の改善が報告されている
- 否定的・中立的な報告:無作為化比較試験(RCT)では効果が明確に示されていないものもある
- 現状の位置づけ:「試みる価値はあるが、標準治療としての確立はまだ」という評価が多い
日本生殖医学会などのガイドラインでも、SEET法は「一部の施設で実施されている補助的な方法」として紹介されており、全例に推奨する根拠は現時点では不十分とされています。
よくある質問(FAQ)
SEET法は痛みを伴いますか?
子宮頸管にカテーテルを挿入する処置のため、子宮鏡検査や人工授精と同程度の不快感・軽度の痛みを感じる方が多いです。処置時間は5〜10分程度で、処置後に安静にする必要はないことが多いです。
SEET法と二段階移植(2コ戻し)は何が違いますか?
SEET法は培養液のみを先行注入し、当日に胚を1つ移植する方法です。二段階移植は初期胚と胚盤胞を2回に分けて移植する方法で、2つの胚を使います。目的や胚の使用数が異なります。
SEET法を実施しているクリニックはどう探せばいいですか?
クリニックのウェブサイトの「治療メニュー」や「先進医療」のページで確認できます。体外受精を実施している専門クリニックに直接問い合わせる方法も有効です。
ERA検査とSEET法を同時に検討してもよいですか?
反復着床不全の精査として、ERA検査で移植タイミングを確認したうえでSEET法を追加する組み合わせを提案するクリニックもあります。それぞれの検査・処置の意義と費用をよく理解したうえで担当医と相談してください。
SEET法で着床しなかった場合の次のステップは何ですか?
SEET法を試みても着床しない場合は、子宮内膜受容能の精密検査(ERA・EMMA・ALICE等)や免疫学的検査、染色体正常胚(PGT-A)の移植などを検討する流れになります。担当医と現状を整理して次の方針を決めてください。
まとめ
SEET法は、胚移植前に培養液を子宮内に注入することで、着床環境の整備を目指す補助的な処置です。
- 反復着床不全の方に検討される方法の一つ
- 処置自体は短時間で体への負担は比較的少ない
- 費用は自費(2万〜5万円程度)が多い
- エビデンスは蓄積中で、全例推奨の段階ではない
SEET法の適応は個々の状況によって異なります。「着床を繰り返し試みているが結果が出ない」と感じている場合は、担当医に現状を共有し、SEET法を含む次の選択肢について相談してみてください。
次のステップ・受診のご案内
SEET法について詳しく知りたい場合や、反復着床不全でお悩みの場合は、不妊専門クリニックへの相談をおすすめします。MedRootでは、クリニック選びの参考になる情報も提供しています。
免責事項
この記事は医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針の決定を行うものではありません。具体的な症状や治療については、必ず担当医師にご相談ください。記載内容は執筆時点の情報に基づいており、医学的知見の更新により変更になる場合があります。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
産婦人科・婦人科に関する正確で信頼性の高い情報をお届けします。医療監修のもと、女性の健康に役立つコンテンツを制作しています。
Next Action

