
「日本では年間どのくらい流産が起きているの?」「流産率は年齢で変わる?」——流産の統計データは、自分の経験を客観的に理解したり、医師との会話の中で意思決定したりするために役立ちます。この記事では、日本の流産統計データを医学的・公衆衛生学的な根拠をもとに整理します。
【この記事のポイント】
- 日本の流産件数・流産率の実態(年代別データ含む)
- 流産の原因別割合と「防げる流産」「防げない流産」の区別
- 統計データを正しく解釈するための注意点
日本における流産の基本統計
流産は妊娠22週未満の妊娠喪失を指します。日本産科婦人科学会のデータおよび人口動態統計によれば、臨床的に確認された妊娠のうち約15〜20%が流産で終わるとされています。
主要な流産統計データ(日本)
指標 | 数値 | 出典・備考 |
|---|---|---|
臨床的妊娠の流産率 | 約15〜20% | 日本産科婦人科学会ガイドライン |
年間の流産届出件数(届け出ベース) | 約8〜10万件 | 厚生労働省 人口動態統計(届け出義務のある妊娠12週以降) |
実際の流産推計(12週未満含む) | 約25〜30万件超 | 推計値(12週未満は届け出不要) |
繰り返す流産(不育症)の頻度 | 流産経験者の約1〜5% | 厚生労働省 不育症研究班データ |
統計解釈の重要な注意点
- 妊娠12週未満の流産は届け出義務がない:実際の流産件数は人口動態統計の数字より大幅に多い
- 「化学流産」はカウントされない:妊娠検査薬で陽性になったが超音波で確認できないまま終わる「化学流産」まで含めると、受精卵の約30〜50%が自然喪失するとされる
- 届け出基準の変化:2019年以前の統計と以後では定義が変わっているため注意が必要
年齢別の流産率——データで見る加齢の影響
流産率は年齢とともに上昇します。これは主に卵子の老化による胎児染色体異常の頻度増加が原因です。
年齢別の流産率(臨床的妊娠)
年齢 | 流産率の目安 | 主な要因 |
|---|---|---|
20〜24歳 | 約10〜12% | 染色体異常の頻度が低い |
25〜29歳 | 約13〜15% | — |
30〜34歳 | 約15〜20% | 加齢による卵子の質の低下が始まる |
35〜39歳 | 約25〜30% | 染色体異常の頻度が上昇 |
40〜44歳 | 約40〜50% | 胚の染色体異常率が50%超に |
45歳以上 | 約50〜75% | 正常染色体の胚が著しく減少 |
※上記は複数の疫学研究・教科書データを参考にした目安の数値です。研究によって幅があります。
父親年齢の影響
父親(精子側)の年齢も流産リスクに影響することが示されています。40歳以上の男性では精子DNAの断片化率が上昇し、流産リスクわずかな上昇との関連が報告されています。ただし、年齢による流産リスクへの影響は母親年齢の方がはるかに大きいとされています。
流産の原因別割合
流産の原因は「防げないもの」が大多数を占めます。この事実を理解することは、自責感の軽減に役立ちます。
初期流産の原因別割合
原因 | 割合 | 説明 |
|---|---|---|
胎児の染色体異常 | 約60〜70% | 最多原因。トリソミー・多倍体など。母親の行動では防げない |
不明(原因が特定できない) | 約10〜20% | 染色体正常でも流産する場合がある |
子宮形態異常 | 約10〜15% | 特に反復流産で割合が上昇 |
内分泌異常(甲状腺機能異常等) | 約5〜10% | 治療で改善できる場合がある |
血液凝固異常(APS等) | 約10〜15% | 抗リン脂質抗体症候群が代表的 |
繰り返す流産(不育症)の統計
2回以上の流産を繰り返す「反復流産」、3回以上を「習慣性流産(不育症)」と定義することが多いです(定義は各学会・施設で異なる場合があります)。
反復流産・不育症の頻度
- 2回以上の流産:妊娠を経験した女性の約5%
- 3回以上の流産:妊娠を経験した女性の約1〜2%
- 不育症患者の推計人数(日本):約3万人(厚生労働省 不育症研究班, 2010年代データ)
偶然の連続流産の確率
流産が単なる偶然の連続(染色体異常の偶発的発生)として3回連続する確率は約0.5〜1%です。これより高い頻度で繰り返す場合は、背景に不育症の原因が存在する可能性が高まります。
流産後の次の妊娠予後——希望のデータ
流産を経験した後の次の妊娠での生産率(生児を出産できる確率)を示すデータも重要です。
流産回数別の次回妊娠予後
流産回数 | 次回妊娠での生産率目安 | 備考 |
|---|---|---|
1回 | 約80〜85% | 大半の方は次の妊娠で出産できる |
2回 | 約75〜80% | 不育症検査を検討するタイミング |
3回 | 約55〜65% | 不育症の専門的治療で改善が期待できる |
治療あり(APS等) | 約70〜80% | 治療で生産率が改善する |
「3回流産したら次の妊娠は絶望的」ではなく、適切な検査と治療を受けることで生産率は改善します。原因不明の不育症でも、次の妊娠で60%以上の方が出産に至ることが多くの研究で示されています。
統計を自分の状況に当てはめる際の注意点
統計データは集団の平均であり、個人の予後を正確に予測するものではありません。自分の状況に当てはめる際の注意点を整理します。
- 年齢・基礎疾患・流産原因によって個人差が大きい:同じ「2回流産」でも、25歳と42歳では状況が全く異なる
- 「流産率20%」=「自分も20%の確率で流産する」ではない:集団全体の割合であり、個人のリスクは検査結果で評価する
- ネガティブな統計を検索しすぎないことも大切:不安が増すだけで、実際の意思決定には役立たない情報も多い
よくある質問
Q1. 「流産率15%」は、妊娠した人の15人に1人は流産するということですか?
「臨床的妊娠の15〜20%が流産」という数字は、超音波などで確認された妊娠のうち15〜20%が流産に終わるという意味です。10人が妊娠すれば約1〜2人が流産するという計算になります。ただし化学流産(検査薬陽性で超音波未確認の早期喪失)を含めると割合はさらに高くなります。
Q2. 日本の流産統計と欧米のデータは同じですか?
流産率の基本的な傾向(年齢との相関、染色体異常が主因など)は国際的にほぼ共通しています。ただし統計の集計方法・定義・届け出制度が異なるため、数値を直接比較する際には注意が必要です。
Q3. 流産が多い地域・少ない地域の違いはありますか?
日本国内での地域差についての詳細なデータは限られています。初産年齢や晩婚化の進み具合、医療アクセスの差異などが影響する可能性はありますが、流産率に大きな地域差があるというエビデンスは現時点では確認されていません。
Q4. 流産を繰り返す女性は増えていますか?
晩婚化・晩産化の進行により、高齢妊娠が増えているため、流産全体の件数は緩やかに増加傾向にあると考えられています。ただし不育症(反復流産)の頻度そのものが増加しているかどうかは、明確なエビデンスは現時点では限定的です。
Q5. 人工妊娠中絶は流産統計に含まれますか?
人工妊娠中絶は流産統計とは別にカウントされます。日本の人口動態統計や医療統計では、自然流産と人工妊娠中絶は明確に区別されています。
Q6. 1回流産すると、次も流産しやすくなりますか?
1回の流産後の次回妊娠での生産率は約80〜85%であり、大多数の方は次の妊娠で出産に至ります。「1回流産したら次も流産する」とは言えません。ただし2〜3回以上繰り返す場合は不育症の可能性があるため、専門的な検査が推奨されます。
次のステップへ
流産の統計データを理解した上で、自分の状況を客観的に把握したい方、繰り返す流産で不育症が心配な方は、産婦人科・不育症専門外来への受診をご検討ください。統計はあくまで参考です。個別の状況に応じた診断と治療方針を、専門医と一緒に考えていきましょう。
免責事項
本記事に記載した統計数値は、日本産科婦人科学会・厚生労働省・複数の疫学研究に基づく参考値であり、数値の出典・集計方法によって幅があります。個々の症状・状況については、必ず医療機関を受診し、担当医の指示に従ってください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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