
「感染流産って何?」「通常の流産とどう違うの?」——感染流産は流産の中でも特に緊急性の高い病態で、適切な対応が遅れると重篤な合併症につながる可能性があります。この記事では、感染流産の定義・原因菌・症状・治療法・予防について医学的根拠をもとに解説します。
【この記事のポイント】
- 感染流産の定義・原因・発生しやすい状況
- 感染流産の症状と「緊急受診が必要なサイン」
- 治療の基本(抗生物質・手術)と予後
感染流産とは
感染流産(感染性流産 / septic abortion)とは、流産に感染が合併した状態を指します。流産そのものに感染が続発する場合と、感染が流産の引き金になる場合の両方があります。感染が子宮内に留まっている場合から、敗血症(全身感染)にまで進行する場合まで重症度に幅があります。
感染流産が起きやすい状況
- 不完全流産後:子宮内に妊娠組織の一部が残った状態で細菌が繁殖しやすい
- 稽留流産の長期放置:胎児が死亡した後に処置が遅れた場合
- 不衛生な条件下での流産処置:医療設備の整っていない環境での処置(先進国では稀)
- 免疫が低下した状態での流産:糖尿病・HIV感染などの基礎疾患がある場合
感染流産の原因菌
感染流産を引き起こす原因菌は主に腟・直腸内の常在菌や性感染症起因菌です。複数菌の混合感染(多菌感染)が多いのが特徴です。
主な原因菌
菌の種類 | 特徴 | 重症度への関与 |
|---|---|---|
大腸菌(Escherichia coli) | 腸内常在菌。グラム陰性桿菌 | 敗血症の主要原因菌 |
嫌気性菌(Bacteroides属等) | 酸素のない環境で増殖 | 壊疽・ガス産生性感染に関与 |
連鎖球菌(Streptococcus属) | 特にB群連鎖球菌(GBS) | 敗血症リスク |
黄色ブドウ球菌(S. aureus) | 毒素産生性 | 毒素性ショック症候群リスク |
クラミジア・淋菌 | 性感染症菌 | 骨盤腹膜炎への進行 |
感染流産の症状——緊急サインを見逃さない
感染流産の症状は軽症から重症まで幅があります。特に「発熱+腹痛+悪臭おりもの」の三徴候がある場合は、緊急の医療対応が必要です。
症状の段階
- 軽症(子宮内感染のみ):発熱(38度以上)・下腹部痛・悪臭を伴う帯下(おりもの)・子宮圧痛
- 中等症(骨盤腹膜炎に進行):高熱・強い腹痛・腹部の反発痛・嘔気・嘔吐
- 重症(敗血症・敗血症性ショック):高熱または低体温・意識変容・血圧低下・頻脈・呼吸困難
今すぐ救急受診すべきサイン
- 38.5度以上の高熱が続く
- 強い腹痛・腹部全体に広がる痛み
- 腹部を押すと反発する痛みがある(腹膜刺激徴候)
- 悪臭を伴う大量の帯下・出血
- 意識がもうろうとする・ぐったりしている
- 血圧が下がる・脈が非常に速い
診断方法
感染流産の診断は、症状・身体所見・血液検査・培養検査・画像検査を組み合わせて行います。
主な検査
- 血液検査:白血球数(WBC)増加・CRP上昇・血液培養(敗血症の確認)
- 腟・子宮頸管の分泌物培養:原因菌の同定と抗菌薬感受性テスト
- 経腟超音波検査:子宮内遺残組織の有無・子宮周囲の膿瘍形成
- CT検査(重症例):腹腔内・骨盤内の膿瘍、腸管麻痺などの評価
感染流産の治療
感染流産の治療は「感染のコントロール(抗生物質)」と「感染源の除去(子宮内容除去術)」の2本柱です。
抗生物質療法
- 広域抗菌薬の静脈内投与が基本(グラム陰性菌・嫌気性菌・グラム陽性菌をカバー)
- 代表的なレジメン例:セフェム系+メトロニダゾール、またはクリンダマイシン+ゲンタマイシン
- 培養結果が出たら感受性に合わせて抗菌薬を調整(De-escalation)
子宮内容除去術
- 子宮内に妊娠組織が残存している場合は、抗生物質開始後に搔爬術または吸引術を行う
- 感染源の除去が治癒に不可欠で、抗生物質のみでは治らない
- 手術のタイミングは感染の安定度を見ながら産婦人科医が判断
重症例(骨盤膿瘍・敗血症)への対応
- 集中治療(ICU管理)・輸液・昇圧薬投与
- 膿瘍ドレナージ(穿刺または開腹)
- 子宮全摘術が必要になる場合もある(重症感染が子宮全体に及ぶ場合)
感染流産の予防と注意点
感染流産は予防できる場合もあります。流産後・流産手術後に感染リスクを高める行動を避けることが重要です。
流産後・手術後の感染予防
- 出血が続いている間は入浴(湯船)・プール・性行為を避ける(シャワーは可)
- 術後は医師から処方された抗生物質を指示通りに服用する
- 発熱・腹痛・悪臭おりものが現れたら早めに受診する(「様子見」は禁物)
- 流産後の検診は必ず受け、子宮内に組織が残っていないか確認する
クラミジア・淋菌感染症の予防
性感染症(STI)は感染流産のリスク因子になります。妊活中・妊娠前のSTI検査(クラミジア・淋菌)を受けておくことで、感染流産のリスクを下げられます。パートナーとともに検査を受けることが理想的です。
よくある質問
Q1. 流産後に38度の熱が出ました。感染流産ですか?
流産後の発熱は感染の可能性があります。特に38度以上の発熱が続く・腹痛がある・悪臭を伴うおりものがある場合は、感染流産を疑い早めに産婦人科を受診してください。軽症であれば抗生物質で回復しますが、放置すると重症化するリスクがあります。
Q2. 感染流産は次の妊娠に影響しますか?
軽症で早期に治療できた場合は、次の妊娠への影響は限定的です。ただし重症感染(骨盤腹膜炎・卵管閉塞など)が起きた場合は、卵管因子性不妊のリスクが生じる可能性があります。治療後の経過観察と、次の妊娠前に産婦人科での確認を受けることをおすすめします。
Q3. 流産後に抗生物質を飲まなければいけませんか?
感染予防のために流産後に抗生物質を処方する施設と、感染徴候が現れた時だけ使う施設があります。主治医の指示に従い、処方された抗生物質は自己判断で中断せず指示通り服用してください。
Q4. 感染流産と通常の流産はどう見分けられますか?
通常の流産では発熱はほとんどありません。感染流産は「流産の症状(出血・腹痛)+発熱+悪臭おりもの」の組み合わせが特徴です。流産後に新たな発熱・腹痛の悪化・悪臭おりものが現れた場合は感染合併を疑い受診してください。
Q5. 感染流産の治療後はいつから妊活できますか?
感染流産の治療(抗生物質・手術)が完了し、子宮・卵管の回復を確認した後から妊活を再開します。一般的には次の月経を1〜2回経過してから再開が多いですが、感染の程度・合併症の有無によって異なります。主治医と相談の上でタイミングを決めてください。
次のステップへ
流産後に発熱・腹痛・悪臭おりものがある場合は、ためらわず産婦人科または救急外来を受診してください。感染流産は早期発見・早期治療が予後を大きく左右します。流産後の経過観察をしっかり行い、異常を感じたらすぐに受診することが大切です。
免責事項
本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。個々の症状・状況については、必ず医療機関を受診し、担当医の指示に従ってください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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