
この記事のポイント
- スイムアップテストは運動精子のみを選別する精子処理法で、不妊検査というより人工授精・体外受精の前処理として使用される
- 精子が自力で上昇する(スイムアップ)性質を利用して、高運動精子を濃縮する技術
- スイムアップで回収される精子数が少ない場合、体外受精よりも顕微授精(ICSI)の適応になる目安となる
- 精液検査のWHO基準値(2021年)との組み合わせで、治療方針を決める重要な指標になる
スイムアップテストとは:仕組みと目的
スイムアップテスト(Swim-up test)は、精液を培養液に重層し、活発に泳いで上層に移動してきた精子のみを回収する精子選別法です。「テスト」という名称がついていますが、実際には人工授精(AIH)や体外受精(IVF)の前処理として精子を調製するための操作です。この処理後に回収される精子の数と運動率が、治療方針の選択に直結します。
スイムアップ処理の流れ
- 精液を培養液(HTF培養液など)の下層に静置する
- 37°C・5〜30分インキュベートする(精子が上層へ泳いでいく)
- 上層の培養液を回収する(高運動精子が濃縮された画分)
- 回収された精子の数・運動率・形態を確認する
密度勾配法との違い
精子調製法にはスイムアップ法のほかに、「密度勾配遠心法(Density Gradient Centrifugation、DGC)」があります。精液の状態(精子濃度・運動率)によって使い分けることが多く、どちらが優れているかは一概に言えません。
比較項目 | スイムアップ法 | 密度勾配遠心法 |
|---|---|---|
回収精子数 | 少ない(高運動精子のみ) | 多め |
DNA断片化率 | 低い(自力で上昇した精子) | 低い(密度で分離) |
適した精液 | 精子数が普通〜多い場合 | 精子数が少ない・運動率が低い場合 |
白血球除去 | 部分的 | より効果的 |
処理時間 | 30〜60分 | 30〜60分(遠心含む) |
どのような検査・治療で使われるか
スイムアップ処理は、不妊検査の文脈では「精子の処理後の回収数」を確認するために行われ、その結果が治療の選択に直接影響します。人工授精・体外受精・顕微授精のいずれかを選ぶ際の重要な判断材料となります。
処理後精子数と治療選択の目安
スイムアップ後の運動精子数 | 推奨される治療 |
|---|---|
1,000万個以上 | 人工授精(AIH)が有効な目安 |
100万〜1,000万個 | 体外受精(IVF)を検討 |
100万個未満 | 顕微授精(ICSI)を強く検討 |
10万個未満 | ICSIが第一選択。精子DNA検査も検討 |
※上記は目安であり、施設や担当医によって基準は異なります。
精液検査との関係
スイムアップテストは精液検査(精液分析)と組み合わせて評価します。精液検査のWHO基準(2021年)では、精子濃度1,600万/mL以上・総運動率42%以上・正常形態率4%以上が「正常範囲」とされています。精液検査が基準値内でも、スイムアップ後の回収数が少ない場合は治療方針が変わることがあります。
WHO精液検査基準値(2021年版)
- 精液量:1.4mL以上
- 精子濃度:1,600万/mL以上(前回2010年版は1,500万/mL)
- 総精子数:3,900万/射精以上
- 総運動率:42%以上
- 前進運動率:30%以上
- 正常形態率(クルーガー基準):4%以上
スイムアップの回収数が少ない場合
スイムアップ後の回収精子数が少ない原因には、精子の運動性低下(精子無力症)・精子濃度の低下(乏精子症)・精子の形態異常(奇形精子症)などがあります。男性側の精子検査を複数回行い、平均値で評価することが重要です。
精子回収数が少い場合の追加検査
- 精子DNA断片化検査:受精・胚発育に影響する精子DNAの損傷度を評価
- 内分泌検査(FSH・LH・テストステロン):造精機能に関わるホルモン評価
- 染色体検査:クラインフェルター症候群など染色体異常の除外
- 泌尿器科受診:精索静脈瘤・閉塞性無精子症などの器質的原因の除外
よくある質問
Q. スイムアップテストは不妊検査として保険適用されますか?
スイムアップ処理単独での保険算定はなく、人工授精や体外受精の一部として保険適用されます。検査としてスイムアップ結果を確認する費用は、施設によって扱いが異なるため、受診先に確認してください。
Q. 自然妊娠を試みながらスイムアップの結果を確認できますか?
スイムアップ処理は採精後にクリニックで行うため、自然妊娠のプロセスとは別です。ただし、スイムアップ後の回収数を確認することで、自然妊娠の可能性を客観的に評価できます。精子回収数が少ない場合は、早めに不妊専門医との相談を検討してください。
Q. 精液検査が正常でもスイムアップの回収数が少ないことがありますか?
あります。精液検査では総精子数・運動率を評価しますが、スイムアップは「自力で上昇できる活発な精子」のみを選別するため、結果が異なることがあります。特に精子の運動パターンに問題がある場合(局所的な運動など)は、精液検査では正常に見えてもスイムアップ回収数が少ないことがあります。
Q. スイムアップで精子が全く回収できない場合はどうなりますか?
スイムアップで精子が回収できない場合、精子の重篤な問題(重度乏精子症・無精子症)が疑われます。泌尿器科や生殖医療専門医による精査が必要です。精巣内精子採取術(TESE)など、手術で精子を採取する方法が選択肢となる場合があります。
まとめ
スイムアップテストは精子の運動能力を実際の体内環境に近い形で評価できる精子処理法であり、人工授精・体外受精・顕微授精の治療選択において重要な判断材料になります。精液検査の結果と組み合わせ、担当医師とともに最適な治療方針を検討することが重要です。
免責事項:本記事は医療情報の提供を目的としており、記載する基準値・費用情報は執筆時点のものです。実際の検査・治療については必ず医師にご相談ください。WHO基準値は2021年版を参照していますが、施設ごとに採用する基準が異なる場合があります。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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