
この記事のポイント
- 性交後検査(PCT)とフーナーテストは同じ検査であり、名称が異なるだけ
- 排卵期に性交渉を行い、翌日に頸管粘液を採取して精子の運動性を確認する検査
- 精子と頸管粘液の相性・抗精子抗体の有無を評価できる、不妊原因探索の重要な検査
- 日本では保険適用(3割負担で約800〜1,500円)だが、欧米では有用性が議論されている
性交後検査(PCT)とフーナーテストとは
性交後検査(Post Coital Test、略称PCT)とフーナーテスト(Hühner test)は、同一の検査を指す異なる呼称です。フーナーテストはこの検査を考案したドイツの産婦人科医マックス・フーナーの名前に由来し、PCTは手順を表した英語名です。日本の不妊専門クリニックではどちらの名称も使われています。
検査の基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
別名 | フーナーテスト、Hühner test、PCT |
実施時期 | 排卵期(排卵2〜8時間前後) |
検査内容 | 性交渉後に頸管粘液を採取し、精子の数・運動性・形態を顕微鏡で確認 |
痛み | ほぼなし(内診と同程度) |
費用 | 保険適用:約800〜1,500円(3割負担) |
何を調べる検査か
PCTは「精子が子宮頸管を通過できるかどうか」を直接評価する検査です。精液検査では精子の質(数・運動率・形態)を単体で評価しますが、PCTでは体内環境(頸管粘液)との相互作用を確認します。精液検査が良好でもPCTが不良な場合、頸管因子不妊(抗精子抗体・頸管粘液の質の問題)が疑われます。
精液検査との違い
比較項目 | 精液検査 | 性交後検査(PCT) |
|---|---|---|
評価対象 | 精子単体の質(数・運動率・形態) | 精子と頸管粘液の相互作用 |
抗精子抗体の評価 | 直接確認できない | 精子の凝集・運動停止で間接的に示唆 |
実施環境 | 採精室または自宅 | 性交渉後に来院(クリニックでの採取) |
再現性 | 高い | 排卵タイミングや性交後時間によって変動 |
検査の流れ:ステップごとの解説
PCTは排卵日を正確に捉えることが精度の鍵です。超音波検査で排卵日を確認しながら、タイミングを合わせることが重要です。
- 排卵日の特定:基礎体温・排卵検査薬・超音波で排卵期を確認(通常月経13〜15日目)
- 性交渉:排卵の2〜12時間前を目安に性交渉を行う(当日〜前日夜が多い)
- 来院・採取:性交渉から2〜12時間後に来院。子宮頸管から粘液を採取
- 顕微鏡観察:高倍率顕微鏡で精子の数・運動性・凝集の有無を確認
- 結果説明:当日または数日以内に結果が出ることが多い
結果の見方と基準値
PCTの評価は施設によって基準が異なりますが、一般的には以下の目安が使われています。結果が不良でも、単回の検査で断定せず、繰り返し検査や追加検査(抗精子抗体検査など)で総合評価することが重要です。
一般的な評価基準
- 良好(Positive):1視野に運動精子が5〜10個以上存在する
- 不良(Negative):運動精子が0〜2個以下、または精子の凝集・運動停止が見られる
- 要再検:排卵タイミングのずれ、性交後時間の過不足、頸管粘液量不足が疑われる場合
検査の限界と議論
PCTは再現性が低い検査として知られており、欧米のガイドラインでは標準不妊検査から外されているケースもあります。英国のNICEガイドライン(2013年)ではルーチン検査としての推奨を取り下げており、日本生殖医学会でも補助的検査として位置付けられています。
PCTの限界
- 排卵タイミングや性交後時間によって結果が大きく変わる
- 「不良」でも自然妊娠している事例が多数ある
- 単独の結果で治療方針を決めることは適切でない
- 検査者の技術・施設の顕微鏡精度による差異がある
抗精子抗体と頸管因子不妊
PCTで精子の凝集や急激な運動停止が見られた場合、抗精子抗体(ASA)の存在が疑われます。抗精子抗体は女性側・男性側どちらにも存在する可能性があり、精子を攻撃する免疫反応です。確定診断には専用の抗体検査(SpermMAR法、TAT法など)が必要です。
抗精子抗体が陽性だった場合の選択肢
- 人工授精(AIH):頸管を介さず子宮内に精子を直接注入
- 体外受精(IVF):体外で受精させることで頸管の影響を回避
- 経過観察:力価が低い場合、自然妊娠を試みることもある
よくある質問
Q. PCTで「不良」と言われましたが、必ず不妊治療が必要ですか?
必ずしもそうではありません。PCTは変動が大きい検査です。排卵タイミングのズレ、検査前の禁欲期間が長すぎる・短すぎるなどの条件で結果が変わります。まず再検査を行い、他の不妊検査の結果と合わせて総合的に判断します。
Q. PCTはいつ受けるのが最適ですか?
排卵の2〜12時間前後が理想です。超音波検査で卵胞の大きさ(18〜20mm以上)を確認してから性交渉のタイミングを指示されることが多いです。基礎体温や市販の排卵検査薬だけでは精度が不十分なため、クリニックでの指導のもとで実施するのがベストです。
Q. 性交後何時間以内に来院すればいいですか?
一般的には性交渉後2〜12時間以内が推奨されています。多くのクリニックでは当日の午前中に性交渉を行い、午後の診察時間に来院するスケジュールを案内します。12時間を超えると精子の状態が変化するため、なるべく早めの来院が望ましいです。
Q. PCTが不要と言われることがありますが、受けた方がいいですか?
担当医師の判断に従うのが基本です。PCTを実施しないクリニックも増えていますが、頸管因子不妊の評価として有用と考える医師も多くいます。不妊原因が不明な場合や、精液検査が良好なのに妊娠しない場合などは、検査を求めてみることも選択肢の一つです。
まとめ
性交後検査(PCT)とフーナーテストは同一の検査で、精子と頸管粘液の相性を評価する不妊検査の一つです。再現性の課題はありますが、頸管因子不妊や抗精子抗体の存在を示唆する手がかりになり得ます。結果を一つの情報として、他の検査と合わせて総合的に不妊原因を探ることが大切です。
免責事項:本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の治療法や検査の推奨を行うものではありません。記載する費用・基準値・制度情報は執筆時点のものであり、変更されている場合があります。実際の受診・検査については必ず医師にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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