妊娠を考えて葉酸を調べ始めたら、食事で必要な量と、妊娠前から追加で摂ることが望まれる葉酸を分けて確認しましょう。葉酸は赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを減らすために大切ですが、多く摂ればよい、妊娠できるようになる、というものではありません。
葉酸を妊娠前から確認する理由
葉酸はビタミンB群の一つで、細胞の増殖などに関わる栄養素です。神経管閉鎖障害は、赤ちゃんの脳や脊髄のもとになる部分が形成される過程で起こる先天異常です。妊娠に気づく前から形成が進むため、妊娠前から葉酸を摂ることが重要とされています。
ただし、葉酸不足だけが原因ではなく、遺伝など複数の要因が関わります。葉酸を摂れば必ず予防できるわけでも、飲んでいなかったら必ず異常があるわけでもありません。国立成育医療研究センターも、すべての神経管閉鎖障害が葉酸不足で起こるわけではないと説明しています。
通常の食品と、追加の400µgを分ける
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の妊婦は、通常の食事に加えて、サプリメントや強化食品などから葉酸(folic acid)400µg/日を摂ることが望まれるとしています。
通常の食品に含まれる葉酸(folate)と、サプリメントなどの葉酸(folic acid)は利用され方が異なります。食事の推奨量と追加の400µgを、そのまま足して一つの「合計目標」にしたり、サプリメントだけで食事の分を置き換えたりしないでください。
| 場面 | 通常の食品からの葉酸 | 別に確認すること |
|---|---|---|
| 成人女性 | 推奨量240µg/日 | 妊娠を計画・妊娠の可能性がある場合は、追加の400µg/日も確認する |
| 妊娠初期 | 食事からの付加量は0µg/日 | 食事を整え、通常の食品以外からの400µg/日を確認する |
| 妊娠中期・後期 | 成人女性の推奨量に240µg/日を付加 | サプリメントの継続や量は、食事・体調・処方を含めて相談する |
| 授乳中 | 成人女性の推奨量に100µg/日を付加 | 自己判断で複数の製品を重ねず、食事と摂取内容を確認する |
初期の「付加量0」は、葉酸を摂らなくてよいという意味ではありません。通常の食品からの量と、神経管閉鎖障害のリスク低減を目的とする追加の葉酸を分けた表示です。食品安全委員会は、妊娠前1か月から妊娠初期にかけての追加摂取を案内しています。
食べ物は、100gの順位より普段の1食で考える
緑黄色野菜、豆類、果物などを組み合わせ、同じ食品に偏らない食事を心がけましょう。次は食品安全委員会の資料に示された例です。品種・調理法・量により含有量は異なり、毎食この量を食べるよう指定するものではありません。
| 食品と調理状態 | 資料での1食量の例 | その量に含まれる葉酸 |
|---|---|---|
| なばな(洋種、茎葉、ゆで) | 80g | 192µg |
| ほうれん草(ゆで) | 80g | 88µg |
| えだまめ(ゆで) | 30g | 78µg |
| いちご | 80g | 72µg |
葉酸が多いからと、妊娠中に鶏・豚のレバーを毎日食べる方法は勧められません。レバーにはビタミンAも多く、食品安全委員会は妊娠中の鶏・豚レバーをなるべく控えるよう案内しています。一度食べたことだけで直ちに赤ちゃんへの影響を判断するものではありませんが、量や頻度が心配なら医療機関へ相談してください。
サプリメントは、1日分の表示と重複を確認する
1粒に含まれる量と、製品が案内する1日分の量は違うことがあります。葉酸だけの製品のほか、妊婦向けマルチビタミンや強化食品にも同じ成分が入っていることがあるため、使っているものの表示を並べて確認しましょう。成分の名称、量、単位がわからない場合は医師や薬剤師に確認できます。
国内の基準では、通常の食品以外に含まれる葉酸の耐容上限量は、18〜29歳で900µg/日、30〜49歳で1,000µg/日です。これは摂取を目指す量ではなく、通常の食事性葉酸の推奨量とも別の基準です。
「1種類だけなら安全」「上限以下なら誰にでも問題ない」とは考えず、処方や持病も含めて相談してください。
妊娠初期の追加400µgを、自己判断で何倍にも増やす必要はありません。神経管閉鎖障害のある妊娠の経験がある方、治療薬を服用している方などは、妊娠前に担当医へ摂取方法を相談してください。研究や海外の高用量の案内を、そのまま自分の量にはしないでください。
「活性型」「相乗効果」の言葉だけで選ばない
米CDCの2026年の医療者向け案内では、一般的なMTHFRの遺伝子型を理由に一律の検査や葉酸量の変更を行う臨床的な推奨はないと説明しています。妊娠する可能性がある場合には、一般的な変異があってもfolic acidの摂取が勧められています。
遺伝子型だけから、自分には通常の葉酸が使えない、高額な検査や別の型への切り替えが必要だと判断しないでください。
ほかのビタミンや鉄が入っているだけで、すべての人の葉酸の吸収や妊娠率が上がるとはいえません。必要な栄養素や治療は人によって異なるため、配合成分が多いことよりも、自分の食事・摂取量・処方に合うかを確認しましょう。
研究の「リスク低減」と、個人の結果を分ける
神経管閉鎖障害の再発リスクが高い人を対象とした研究の割合を、一般の妊娠にそのまま当てはめることはできません。MRCの1991年の研究は、過去に神経管閉鎖障害のある妊娠を経験した人が対象です。そこで得られた相対的な効果を、通常の400µgによる全員共通の予防率としないでください。
妊娠前の栄養管理と、着床率・妊娠継続率を上げる治療は同じではありません。特定の食事や栄養素を増やすことで妊娠率が上がるという説明には、どの人を対象に何を比較した根拠なのかを確認する必要があります。
妊娠がわかってから気づいた場合
それまでサプリメントを飲んでいなかったことだけから、赤ちゃんの状態は判断できません。気づいた時点で食事や摂取内容を確認し、妊婦健診で相談してください。飲めなかった分をまとめて摂ったり、治療薬を自己判断で中止したりしないでください。
確認した資料
- 厚生労働省:日本人の食事摂取基準2025年版(正誤反映済み報告書)
- 同報告書・水溶性ビタミン(葉酸207〜212ページ)
- 厚生労働省:現行の食事による栄養摂取量の基準・別表第十六
- 食品安全委員会:妊娠前からの食べ物・葉酸・ビタミンA
- 国立成育医療研究センター:妊娠中のお薬Q&A・葉酸
- CDC:医療者向け葉酸の案内(2026年7月)
- MRC Vitamin Study(1991年・対象条件を確認した公開要旨)
- ASRM:自然妊娠に関する食事・葉酸の位置づけ
2026年10月23日に資料を確認。国内の摂取基準を中心に、研究対象・用量・葉酸の種類を区別して整理しています。個別の処方量は担当医の指示を確認してください。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
公的機関や医学会などの情報をもとに、女性の健康と医療の選択に役立つ情報を整理しています。