多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、排卵が起こりにくく、月経不順や妊娠しにくさにつながることがある病気です。超音波で小さな卵胞が多い、AMHが高い、月経が不順という一つの結果だけでは診断できません。ほかの病気の可能性も確認し、症状と検査を合わせて診断します。
治療は、今妊娠を希望するか、月経や多毛・にきびなど何が負担か、血糖や体重などの状態で変わります。体重や生活習慣だけで起こる病気と決めつけず、自分に必要な治療を相談してください。
PCOSで見られる症状
月経が不規則、月経が来ない、排卵しにくいといった変化に加え、にきびや多毛、血糖に関係する異常などが見られる場合があります。ただし、これらがすべての方に現れるわけではありません。肥満がなくてもPCOSは起こります。
原因には体質や環境などが関係すると考えられますが、単一の原因は明確ではありません。インスリンの働きにくさが関係する場合もありますが、食事や体重管理ができていないから発症したと、自分を責める必要はありません。
日本の2024年診断基準は、3項目を合わせて評価する
日本産科婦人科学会の2024年の基準では、成人について、似た病態を示すほかの病気を除外したうえで、次の3つをすべて満たすか評価します。
- 月経周期に異常がある。
- 超音波で多嚢胞卵巣の所見がある、またはAMHが高い。
- 男性ホルモンの過剰を示す検査・症状がある、またはLHが高い。
AMHは、卵巣の所見に代えて使える項目ですが、AMHだけでの診断はできず、診断のために全員が必ず測る検査でもありません。判断には年齢や測定方法などの条件があります。他人の検査値や、単一の数値だけと比べないでください。
海外のRotterdam基準や、国内の2007年基準とは項目・扱いが異なります。思春期は成人と同じ方法では判断せず、初経からの期間などに応じて「疑い」「リスク」として経過を見る場合もあります。
検査結果の説明は、どの基準と条件で判断しているかも担当医へ尋ねてください。検査のために薬を自己中止しないでください。
妊娠を希望しない場合も、月経が来ない状態は相談する
妊娠を希望していなくても、長く月経が来ない状態を放置してよいわけではありません。子宮内膜の異常につながる場合があるため、ホルモン剤などで月経・出血を管理することを検討します。
にきびや多毛などの困りごと、薬の使いにくさ、持病も伝えます。薬を使う目的、期待する効果、副作用、再診の時期を確認してください。自分で「年に何回出血すれば安全」と決めて診察をやめないようにします。
妊娠を希望する場合:排卵を促す治療などを相談する
排卵しにくい場合は、飲み薬や注射による排卵誘発を検討します。ほかの不妊要因、年齢、治療歴などによっては、治療の組み合わせや手術、体外受精を相談する場合もあります。全員が同じ順番を最後まで進むとは限りません。
卵巣が刺激に強く反応し、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)や多胎妊娠などにつながる場合があるため、薬の量や診察予定を守ります。治療中の下腹部痛、お腹の強い張り、急な体重増加などは、通院先へ速やかに連絡してください。
メトホルミンは、国内でも条件のある適応がある
メトホルミンを含むメトグルコの現行添付文書には、PCOSにおける排卵誘発と、生殖補助医療における調節卵巣刺激が記載されています。ただし、肥満・耐糖能異常・インスリン抵抗性のいずれかがある方に限るなどの条件があり、ほかの薬との併用も含めて医師が判断します。
この使用については厚生労働省の保険上の取扱いの通知もあり、「国内のPCOSでは一律に適応外・保険対象外」という説明は正確ではありません。一方で、PCOSの全員に処方される薬でも、どの使い方でも保険対象になる薬でもありません。自分の適応、費用、使う期間を確認します。
腎臓・肝臓の状態などの確認や、妊娠初期の服用を避けるための中止時期の指示が必要な薬です。別の目的で処方された薬を自己判断で転用・追加せず、担当医の指示に従ってください。
食事・運動は、自分に合う続け方を考える
食事や身体活動は、全身の健康を支えるためにも取り組みます。肥満を伴う方は減量を相談する場合がありますが、すべての方に体重減少が必要という意味ではありません。体重が減らなくても、健康的な生活による利益はあります。
2023年の国際ガイドラインは、PCOSに対して、特定の食事構成がほかより優れているという根拠はないとしています。極端な糖質制限など一つの方法を必須とせず、好み、体調、予算、仕事などに合わせ、必要なら管理栄養士へ相談します。
イノシトールなどのサプリメントも、妊娠や排卵への効果が確実な治療の代わりではありません。使っている場合は製品と量を伝え、診察や処方を自己中断しないでください。
受診前に用意すると役立つこと
- 月経が来た日、来ていない期間、出血の変化。
- 妊娠の希望と、その時期。
- にきび・多毛・体調・気持ちなど、現在困っていること。
- 薬・サプリ、過去の超音波・ホルモン・AMH検査の結果。
月経不順や無月経があるとき、妊娠を希望しているときは婦人科などへ相談してください。自己流の食事や、一定期間の妊活を終えるまで待つ必要はありません。妊娠・出産後も、血糖や脂質、血圧など、自分に必要な長期の確認を相談します。
参照した医療情報
- 日本産科婦人科学会:多嚢胞性卵巣症候群の診断基準(2024)表1・注記
- 日本内分泌学会:多嚢胞性卵巣症候群(2026年9月更新)
- PMDA:メトグルコ 添付文書
- 厚生労働省:公知申請に係る医薬品の保険上の取扱い(2022年9月26日)
- 2023年国際PCOSガイドラインの推奨:生活・食事・サプリメント
2026年10月23日確認。国外の薬の承認・保険制度や用量を、日本の全員に共通する指示として転用していません。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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