36歳の「妊娠率」という数字を見るときは、妊娠と出生、自然妊娠と治療、一周期と複数周期を区別します。年齢が同じ人の集計でも、本人が次の周期に妊娠する確率とは同じではありません。
同じ「成功率」という呼び方でも、誰のどの期間の、何を分母にした数字かで意味が変わります。本稿は、学会の周期データを読むための説明と、受診先で確認したい点を整理します。
2023年の36歳区分は、指標ごとに分母を確認します
日本産科婦人科学会の2023年ART集計の年齢別表では、36歳区分を次のように示しています。ARTの周期集計であり、一般の36歳全員の自然妊娠の確率ではありません。日本産科婦人科学会:2023年ART集計・年齢別表(PDF8頁)
| 2023年・36歳区分の指標 | 分子と分母 | 割合 |
|---|---|---|
| 妊娠周期/移植周期 | 9,251 ÷ 20,835 | 44.4% |
| 妊娠周期/総治療周期 | 9,251 ÷ 35,664 | 25.9% |
| 生産周期/総治療周期 | 6,832 ÷ 35,664 | 19.2% |
| 生産周期/総治療周期(全凍結周期を除く) | 6,832 ÷ 24,856 | 27.5% |
妊娠と出生、移植と総治療周期を同じにしません
この区分の妊娠周期は9,251、生産周期は6,832です。生産周期は出生に至った周期の集計で、出生児数や治療を受けた人数とは同じではありません。
妊娠周期を移植周期20,835で割ると44.4%、総治療周期35,664で割ると25.9%です。分子が同じでも、移植した周期だけを見るか、総治療周期を見るかで数字は変わります。生産周期についても、全凍結周期を分母から除くかで19.2%と27.5%に分かれます。
この表だけから、採卵一回で得た全ての胚を後に使った累積の出生率や、一人が複数回治療した後の確率は算出できません。保存胚を使う場合は、どの時点の年齢で集計された成績かも確認してください。本稿は表の年齢区分を、確認なく採卵時年齢と呼んでいません。
ARTの統計を、自然妊娠や本人の確率へ当てはめません
ARTの治療を受けた集団と、治療を受けずに妊娠を希望している集団は同じではありません。自然妊娠の一周期の確率と、一年間で妊娠した割合、学会のART妊娠率を横並びにして、方法の優劣を決めないでください。
本稿で分母・対象と結果の条件を確認できていない自然妊娠の数字や、本人の次回の妊娠・出生率は示していません。施設の説明でも、対象年、年齢と背景、方法、妊娠か出生か、開始・採卵・移植等の分母を聞けます。
受診の時期は、期間の目安と病歴・症状を合わせます
ASRMの2026年委員会意見は、既知の不妊要因がなく定期的に避妊せず性交している場合、35歳以上では6か月を評価開始の一般的な目安としています。既知の不妊要因や月経の乱れ等がある場合は、期間を待たずに評価するとしています。ASRM:不妊の評価を始める時期と初期評価(2026年)
この目安は、6か月まで受診できないという条件ではありません。月経の状態、病歴や以前の妊娠・検査と治療の経過を伝え、必要な評価を相談できます。精子を提供する男性パートナーがいる場合も、並行した評価を考えます。
今回の選択と、次に見直す理由を相談します
35歳や37歳の集計と36歳の集計の差を、同じ本人が一年経つと必ずその分だけ変化する予測にしないでください。集団の背景や治療内容も異なり、本人の計画は検査・経過と希望を踏まえて相談します。
平均値だけで治療を増やす・減らす、一定回数で自動的に変更するという手順にはしません。今回の検査で何が分かり、提案された方法でどの過程を助けるか、身体の負担と期待できること・分からないことを確認できます。
費用と続け方も、本人の計画で確認します
治療の保険適用と自己負担は、病名・治療内容・適用条件によって異なります。高額療養費も診療月・年齢・所得区分等で上限が変わり、先進医療の技術料など保険外の費用は対象になりません。
治療施設には保険・自費の内訳を、加入先の健康保険には自分の上限と申請方法を確認してください。協会けんぽ:高額療養費の対象・診療月別の上限
処置だけと治療全体、保険と自費、採卵・培養・保存や将来の移植でどこまで含む費用かを分けて確認します。結果の数字と費用・通院の負担を一緒に考え、継続・変更・休止の希望を伝えられます。
関連記事
関連記事の見出しだけで、本人の妊娠・出生の確率、検査や治療の必要性を判断しないでください。
原典と確認日
2026年11月2日に保存原典の採用節と改稿履歴を照合して改稿しました。日本産科婦人科学会の2023年ART集計の年齢別表(PDF8頁)を全文と画像で再読し、分子・分母から割合を検算しました。
2023年の集計を2026年の最新実績とは呼んでいません。保存ASRM2026年の初期評価・要約等の採用範囲を用い、全原研究や本人の予後を確認したものではありません。本記事の個別の医師・専門家監修はありません。
免責事項
一般的な情報提供です。本人の検査・治療や薬の選択は担当する医療者へ、費用や給付の条件は受診先・加入先へ確認してください。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
公的機関や医学会などの情報をもとに、女性の健康と医療の選択に役立つ情報を整理しています。