EggLink
さがす

子宮内膜のパターン(木の葉状)と着床率

2026/4/19

子宮内膜のパターン(木の葉状)と着床率

「内膜パターンが悪いと言われた」「木の葉状でないと着床できないの?」——胚移植前の超音波検査でこうした不安を抱える方は多くいます。子宮内膜のパターンは着床環境を評価する重要な指標ですが、パターン単独ではなく内膜の厚さ・ホルモン値・個人差との組み合わせで判断されます。本記事では超音波分類の意味、パターン別の妊娠率データ、そして改善のための治療選択肢を詳しく解説します。

子宮内膜パターンとは何か——超音波で何を見ているか

子宮内膜パターンは、経膣超音波で観察した際の内膜の輝度(エコー輝度)と形態を指します。排卵前後のホルモン環境によって内膜の構造が変化するため、パターンを見ることで「今の内膜が着床に適した状態か」をおおまかに評価できるとされています。移植当日の内膜パターンは、凍結融解胚移植(FET)の成否を左右する因子の一つとして広く研究されています。

子宮内膜パターンの超音波分類(Grade分類)

タイプ

別称

超音波所見

特徴

Type A(Grade A)

木の葉状・三層構造

内膜中央に高輝度線、両側に低輝度帯が対称的に存在

卵胞期〜排卵期に典型的。着床に最適とされる

Type B(Grade B)

均一高輝度

内膜全体が均一に高輝度(白っぽい)

黄体期に変化する過渡的パターンまたは血流低下

Type C(Grade C)

均一低輝度・不明瞭

内膜全体が均一に低輝度(暗い)または境界不明瞭

内膜菲薄・血流不全・慢性子宮内膜炎との関連が示唆される

この分類はGrunfeld分類(1991年)をもとにしており、現在も多くの生殖補助医療施設で使われています。ただし施設・検者によって評価基準が若干異なる点には注意が必要です。

パターン別の着床率——データで見る木の葉状の優位性

複数のコホート研究では、Type A(木の葉状)はType B・Cと比較して臨床妊娠率が有意に高いと報告されています。ただし数値はプロトコルや年齢によって幅があります。

内膜パターン別の臨床妊娠率(FET周期・複数研究のまとめ)

パターン

臨床妊娠率(報告範囲)

オッズ比(Type A比)

主な関連研究

Type A(木の葉状)

45〜58%

基準(1.0)

Richter 2007, Zhao 2015, Liu 2020

Type B(均一高輝度)

28〜42%

0.55〜0.71

Richter 2007, Wu 2014

Type C(均一低輝度)

18〜32%

0.32〜0.55

Zhao 2015, Al-Ghamdi 2008

2020年にFertility and Sterility誌に掲載されたメタアナリシス(Liu et al.)では、Type A以外の内膜パターンを持つFET周期は生児出生率が約30〜40%低下する傾向が示されています。一方で、Type B・CでもType A内膜の患者と同等の妊娠例が存在することもデータは示しており、パターン単独で移植キャンセルを判断するかどうかは施設・症例によって方針が異なります。

内膜パターンと内膜厚の組み合わせ——どの組み合わせが最も重要か

内膜の評価にはパターンと厚さを組み合わせた総合判断が必要です。内膜厚が十分でもパターンが不良な場合、また逆にパターンが良好でも菲薄な場合は着床率が低下するとされています。

内膜パターン×内膜厚別の妊娠率(概略)

内膜厚

Type A(木の葉状)

Type B(均一高輝度)

Type C(均一低輝度)

8mm以上

◎ 高(45〜58%)

△ 中(30〜42%)

▲ 低(22〜32%)

7〜7.9mm

○ 中〜高(35〜50%)

△ 中(25〜35%)

▲ 低(15〜25%)

6〜6.9mm(薄め)

△ 中(25〜38%)

▲ 低(15〜25%)

× 非常に低(10%以下の報告あり)

6mm未満(菲薄内膜)

▲ 低(移植中止を検討)

▲ 低(移植中止を検討)

× 移植中止を検討するケースが多い

多くの施設では内膜厚7mm以上かつType A(またはType B+7mm以上)を移植実施の目安としています。ただしこれはあくまで目安であり、患者背景・胚のグレード・移植歴によって個別判断がなされます。

注目すべき知見として、内膜パターンがType Bでも内膜厚が10mm以上あれば、Type A・8mmと遜色のない妊娠率を示したという後ろ向きコホート研究も報告されており(He et al., 2019)、厚さによる補完が一定程度起きる可能性が示唆されています。

なぜ木の葉状(Type A)が着床に有利なのか——メカニズム

Type Aの三層構造は、エストロゲン(卵胞ホルモン)による内膜の増殖が十分に進んだ状態を反映しています。この時期の内膜では、着床に必要な複数の分子的変化が起きているとされています。

  • 血流の確保:内膜螺旋動脈への血流が増加し、胚への酸素・栄養供給が改善される
  • グランド(腺)の発達:子宮内膜腺が分泌活動を開始し、着床を補助するLIF(白血病阻止因子)・インテグリン等が産生される
  • ピノポーデの形成:内膜上皮表面に着床窓(implantation window)が形成される微絨毛構造が出現する
  • 免疫寛容環境:制御性T細胞(Treg)が増加し、胚を異物として排除しない局所免疫環境が整う

一方でType CやType Bは、エストロゲン不足・血流障害・慢性炎症・内膜の線維化などが原因で三層構造の形成が不完全になっている可能性があります。

内膜パターンが不良になる原因——セルフチェックポイント

内膜パターンが木の葉状にならない場合、複数の原因が関与している可能性があります。自身に当てはまる要因がないか確認してみましょう。

ホルモン系の原因

  • エストロゲン産生不足(卵巣機能低下・POI・低AMH)
  • プロゲステロン早期上昇(LUF・排卵障害)
  • 甲状腺機能低下症・高プロラクチン血症

子宮・血流系の原因

  • 子宮内膜の菲薄化(過去の手術・掻爬術・子宮内膜症)
  • 子宮内膜の線維化・アッシャーマン症候群
  • 子宮動脈血流の低下(PI値・RI値の高値)
  • 慢性子宮内膜炎(CE:CD138陽性細胞の存在)

生活習慣系の関連因子

  • 喫煙(子宮内膜血流に悪影響)
  • 過度な低体重・低エストロゲン状態
  • 長期的な低用量ピル服用後の内膜回復遅延(一時的)

セルフチェックとして「月経量が以前より明らかに減った」「月経期間が短くなった(1〜2日)」「過去に子宮内手術を受けたことがある」に当てはまる場合は、内膜環境の悪化が疑われます。担当医に内膜パターンの詳細評価を相談することが推奨されます。

内膜パターン改善のための治療オプション

内膜パターンが不良と判断された場合、いくつかの治療アプローチが検討されます。エビデンスの強さと侵襲度は各方法で異なります。

標準的アプローチ(エビデンスあり)

エストロゲン補充療法

FET周期において経口・経皮・経膣のエストロゲン製剤を投与し、内膜増殖を促します。内膜厚が6〜7mmで留まる薄い内膜に対しては、投与量・経路・期間の調整により改善が得られる場合があるとされています。経膣投与は肝初回通過効果を回避し、子宮局所への移行が高まる可能性が示されています。

バイアグラ(シルデナフィル)膣錠

子宮内膜血流を改善する目的でオフラベル使用されるケースがあります。小規模研究では内膜厚・血流改善の報告がある一方、大規模RCTのエビデンスはまだ限定的です。

低用量アスピリン

子宮内膜血流の改善目的で用いられることがあります。ただし最近のメタアナリシス(Siristatidis et al., 2016)では生殖補助医療における単独使用の妊娠率改善効果は明確に示されておらず、施設によって方針が異なります。

先進的アプローチ(比較的新しい)

PRP(多血小板血漿)療法

自己血液から採取した多血小板血漿を子宮腔内に注入する方法です。PRP中に含まれる成長因子(PDGF・VEGF・EGF等)が内膜再生を促す可能性が示唆されており、菲薄内膜・反復着床不全の患者を対象とした複数の研究で内膜厚増加および妊娠率改善が報告されています(Chang et al., 2019; Eftekhar et al., 2018)。ただし現時点では標準治療ではなく、実施施設は限定的です。

G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)子宮腔内注入

G-CSFは骨髄由来細胞の動員を介して内膜再生を促進する可能性があるとされ、菲薄内膜に対する子宮腔内注入が試みられています。複数のRCTで内膜厚増加と着床率改善が報告された一方、2022年のコクランレビューでは結論を出すには更なるエビデンスが必要との見解が示されています。日本では保険適用外です。

子宮内膜スクラッチング(内膜刺激)

移植前周期に子宮腔内をカテーテルで軽度損傷させることで着床率改善を狙う方法です。局所炎症反応により着床関連因子の発現が高まる仮説がありますが、2019年のRCT(LUSTRE trial)では対照群との有意差が示されず、反復着床不全患者への適応は慎重な判断が必要とされています。

幹細胞療法・骨髄細胞注入

難治性菲薄内膜に対する実験的アプローチとして研究段階にあります。骨髄由来間葉系幹細胞や末梢血単核球の子宮内注入により内膜の再生が促される可能性が示されていますが、標準治療としての確立には至っていません。

内膜パターン改善治療オプションの比較

治療法

主な適応

エビデンスレベル

侵襲度

保険適用

エストロゲン補充(量・経路調整)

薄い内膜・ホルモン不足

適用あり(FET)

低用量アスピリン

血流低下・血栓傾向

中(効果には議論あり)

適用あり(適応による)

シルデナフィル膣錠

難治性薄い内膜・血流低下

中(小規模RCTあり)

保険外(オフラベル)

G-CSF子宮腔内注入

菲薄内膜・反復着床不全

中(RCTあり、コクラン保留)

保険外

PRP子宮腔内注入

菲薄内膜・反復着床不全

中(複数RCTあり)

保険外

子宮内膜スクラッチング

反復着床不全

中(効果に議論あり)

低〜中

先進医療(施設による)

幹細胞療法

難治性菲薄内膜

低(研究段階)

保険外(臨床試験)

受診・相談すべきタイミング——いつ担当医に伝えるか

以下に当てはまる場合は、担当医に内膜パターンの詳細評価や追加検査・治療変更を相談することが推奨されます。

  • 複数周期にわたりType B/Cが続いている:1周期だけの所見ではなく、2〜3周期連続してパターンが改善しない場合は原因精査が必要です
  • 移植をキャンセルされた経験がある:内膜が薄い・パターン不良によるキャンセルが続く場合は、菲薄内膜・慢性子宮内膜炎のスクリーニング(CD138染色)を検討します
  • 反復着床不全(RIF)と診断された:良質胚を3回以上移植しても着床しない場合は、ERA検査・EMMA/ALICE検査・子宮鏡検査などと合わせて内膜環境の総合的評価が推奨されます
  • 月経量が著しく減少した:過去の手術歴・感染歴がある場合はアッシャーマン症候群の除外が必要です
  • 現在のクリニックでPRP・G-CSFを実施していない:難治性の場合は先進治療を実施している施設へのセカンドオピニオンも選択肢の一つとされています

よくある質問(FAQ)

Q1. 木の葉状でないと移植できませんか?

多くの施設ではType A(木の葉状)かつ内膜厚7〜8mm以上を移植実施の目安にしていますが、Type Bでも内膜厚や他の条件次第で移植を進める場合があります。一律に「木の葉状でないと移植不可」ではなく、担当医が総合的に判断します。キャンセルや延期の理由が不明確な場合は、施設に理由と今後の方針を確認することをお勧めします。

Q2. 内膜パターンは生活習慣で改善できますか?

生活習慣は内膜環境に間接的に影響する可能性があります。喫煙は子宮内膜血流に悪影響を及ぼすとされているため、禁煙は推奨されます。また過度な低体重はエストロゲン産生を低下させるため、適切な体重管理も重要とされています。ただし、器質的な原因(アッシャーマン症候群・慢性子宮内膜炎など)がある場合は医療的介入が必要です。

Q3. 排卵後(黄体期)に内膜パターンが変わるのは正常ですか?

正常です。排卵後にプロゲステロンが上昇すると、内膜は分泌期に移行し、Type Aから均一高輝度(Type B様)に変化します。これは生理的な変化です。一般に胚移植前の評価はエストロゲン投与中〜HCG/プロゲステロン投与前後に行われ、その時点でのパターンを評価します。

Q4. 内膜パターンと内膜厚のどちらが重要ですか?

両者は独立した評価軸ではなく、補完関係にあります。一般に内膜厚≥7mmかつType Aの組み合わせが最も高い着床率と関連するとされています。一方で内膜厚8mm以上でもType Cの場合は妊娠率が低下するとの報告があり、パターンが重要な指標となる場面もあります。担当医は両者を合わせて判断します。

Q5. PRP療法は何回くらい必要ですか?

PRP療法の実施回数は施設やプロトコルによって異なります。報告されている多くの研究では1〜3周期の注入が試みられており、1回の注入後に内膜厚改善が認められたケースも報告されています。ただし全例に効果があるわけではなく、効果が見られない場合は別のアプローチへの切り替えを担当医と検討することになります。

Q6. 子宮内膜炎(慢性)があると内膜パターンはどうなりますか?

慢性子宮内膜炎(CE)は超音波所見だけでは確定診断が難しいとされています。CEでは内膜の不均一なエコー像・微小ポリープ様所見が観察される場合がありますが、これらは非特異的です。確定診断には子宮内膜生検でのCD138(形質細胞マーカー)陽性細胞の確認が必要とされます。CEが判明した場合、抗生剤治療後に内膜環境が改善するケースが報告されています。

Q7. 内膜パターンがType Aでも着床しない場合はどうすればよいですか?

内膜パターンが良好でも反復着床不全が続く場合は、着床窓のタイミングズレ(ERA検査)、子宮内フローラの異常(EMMA/ALICE検査)、免疫的要因(NK細胞活性・抗リン脂質抗体症候群など)、胚の染色体異常(PGT-A)などの追加評価が検討されます。内膜パターンは着床環境の一側面にすぎず、着床には多因子が関与しています。

まとめ

子宮内膜パターンは、Type A(木の葉状・三層構造)・Type B(均一高輝度)・Type C(均一低輝度)に分類され、特にType Aが最も高い着床率と関連することが複数の研究で示されています。ただしパターン単独ではなく、内膜厚との組み合わせ・ホルモン値・個人の背景因子と合わせて評価されます。

パターンが不良な場合の治療選択肢は、標準的なエストロゲン補充・血流改善から、PRP・G-CSF・幹細胞療法などの先進的アプローチまで幅広くあります。複数周期にわたり改善しない場合や反復着床不全が疑われる場合は、原因精査と治療変更について担当医と積極的に相談することが大切です。

参考文献

  • Grunfeld L, et al. Clomiphene citrate and intrauterine insemination as first-line therapy. Fertil Steril. 1991.
  • Richter KS, et al. Relationship between endometrial echogenicity and implantation rate. Fertil Steril. 2007;88(4):911-7.
  • Al-Ghamdi A, et al. Endometrial pattern, but not thickness, predicts IVF outcome. Fertil Steril. 2008;90(4):1207-12.
  • Zhao J, et al. The effect of endometrial pattern on IVF-ET outcome. Arch Gynecol Obstet. 2015;293(2):457-60.
  • He RH, et al. Endometrial thickness and pattern influence ART outcome. Reprod Biol Endocrinol. 2019.
  • Liu KE, et al. The impact of endometrial thickness on IVF/ICSI outcome: a systematic review and meta-analysis. Fertil Steril. 2020;114(4):806-12.
  • Chang Y, et al. Intrauterine administration of PRP in thin endometrium. PLoS ONE. 2019;14(12).
  • Eftekhar M, et al. Effect of autologous PRP administration on endometrium thickness. Arch Gynecol Obstet. 2018;298(5):1033-9.
  • Siristatidis CS, et al. Aspirin for in vitro fertilisation. Cochrane Database Syst Rev. 2016.
  • Nastri CO, et al. Endometrial injury in women undergoing IVF. Cochrane Database Syst Rev. 2022.

※本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の治療法を推奨・保証するものではありません。症状や治療方針については必ず担当医にご相談ください。

関連記事

E

この記事を書いた人

EggLink編集部

医療・婦人科専門メディア

産婦人科・婦人科に関する正確で信頼性の高い情報をお届けします。医療監修のもと、女性の健康に役立つコンテンツを制作しています。

公開:2026/4/19更新:2026/4/28