
「エンドメトリアルスクラッチを受けるべきか迷っている」「本当に効果があるのか知りたい」——そうした疑問を持つ方に向けて、医学的根拠に基づいた情報をお届けします。(情報取得日:2026年5月2日)
この記事の要点
- エンドメトリアルスクラッチは子宮内膜に微細な傷をつけ、着床環境を整える補助的処置
- 反復着床不全(RIF)患者への有効性を示す研究がある一方、大規模RCTでは効果に疑問も
- 自費診療が中心で費用は3〜8万円程度、先進医療承認外
- 主治医との十分な相談のうえで実施を判断することが重要
エンドメトリアルスクラッチとは
項目 | 内容 |
|---|---|
処置の種類 | 子宮内膜掻爬(軽微) |
実施タイミング | 胚移植の前周期・排卵前 |
所要時間 | 5〜10分程度 |
麻酔 | 原則不要(局所麻酔を使う施設もあり) |
対象 | 反復着床不全(胚移植2〜3回以上失敗)の方 |
保険適用 | なし(自費) |
費用目安 | 3万〜8万円程度(施設により異なる) |
処置の仕組みと期待される効果
エンドメトリアルスクラッチは、胚移植の前周期にパイペル(細い管)などを用いて子宮内膜に意図的に微細な傷をつける処置です。傷の修復過程で分泌されるサイトカイン・成長因子が着床関連タンパクの発現を高め、着床の「窓」を整えると考えられています。
処置後に起こる炎症反応が免疫細胞(NK細胞・マクロファージ)を活性化し、胚の受け入れ態勢を改善するという仮説が主流です。ただし、作用機序は完全には解明されていません。
- 着床率向上:一部の研究では反復着床不全患者の妊娠率が15〜20%程度改善
- 子宮内膜の再構築:新生内膜の形成を促進する可能性
- マイクロバイオーム改善:子宮内細菌叢への影響も研究中
一方、2019年に発表されたNewEngland Journal of Medicine掲載の大規模無作為化試験(RCT)では、未処置群との妊娠率に有意差がみられなかったとの報告もあります。現在も世界的に議論が続いており、全例に推奨できる処置ではありません。
エビデンスの現状と注意点
エンドメトリアルスクラッチに関する研究では「有効」「有意差なし」の双方の結果が混在しています。患者選択基準・実施タイミング・スクラッチ手技の違いが結果に影響するためです。
- 反復着床不全(RIF)の定義が施設によって異なるため、対象患者が揃っていない
- 処置の深さ・範囲・使用器具が標準化されていない
- 日本生殖医学会は「反復着床不全に対して実施を考慮できる」と記載しつつ、エビデンスレベルは「中程度」と位置づけている
主治医から説明を受けたうえで、処置のメリット・デメリットを十分理解してから判断することが大切です。
費用の目安
- 処置単体:3万〜5万円程度
- 麻酔・処置材料を含む場合:5万〜8万円程度
- 事前の子宮内膜検査・感染症スクリーニング:別途1万〜2万円程度
先進医療には承認されていないため全額自費です。施設によって料金が大きく異なるため、受診前に費用確認を行ってください。
受診・相談時のポイント
- 体外受精の胚移植を2〜3回以上繰り返しても妊娠しない反復着床不全の方が主な対象
- 子宮内膜炎・ポリープ・筋腫などがある場合は先にそちらを治療するのが原則
- 月経周期との兼ね合いがあるため、実施タイミングを主治医と事前に決めておく
- 処置後2〜3日は出血・軽い腹痛が続くことがある
- 感染リスクを下げるため、術前に子宮内培養検査を実施する施設が多い
実施施設の探し方と選び方
- 日本生殖医学会・日本産科婦人科学会の認定施設リストを参照する
- 不妊治療専門クリニックでの実施が多い
- 処置経験件数・術後サポート体制・費用・アクセスを複数施設で比較する
- 初診時に処置の適応かどうか確認し、セカンドオピニオンも活用する
よくある質問
Q1. 痛みはどのくらいありますか?
月経痛程度の下腹部痛を感じる方が多く、数分で終わります。強い痛みがある場合は術者に伝えてください。局所麻酔を用意している施設もあります。
Q2. 処置後すぐに胚移植できますか?
通常は処置を行った周期の翌周期以降に胚移植を行います。同一周期での移植は避けるのが一般的です。
Q3. 何回受けても効果はありますか?
反復実施に関するエビデンスは限られています。1回の実施後に評価し、主治医の判断を仰いでください。
Q4. 保険は使えませんか?
現時点では先進医療にも認定されておらず、全額自費です。民間の不妊治療保険に加入している場合は給付対象になることがあります。
Q5. スクラッチをしないと妊娠できないのですか?
そうではありません。反復着床不全の原因は子宮内膜の問題だけでなく、胚の染色体異常・免疫的要因・血液凝固異常など多岐にわたります。総合的な検査結果を踏まえた治療計画が重要です。
まとめ
エンドメトリアルスクラッチは、反復着床不全に悩む方に対して補助的に検討される処置です。一部のエビデンスは有用性を支持していますが、大規模RCTでは効果が示されなかった報告もあり、推奨度は「施設・患者ごとに検討」というレベルです。
処置を受ける際は、主治医から十分な説明を受け、他の検査・治療との組み合わせも含めた計画を立てることが大切です。自己判断で施術を求めるのではなく、専門医と対話しながら最適な選択をしてください。
【免責事項】本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。実際の治療については必ず担当医にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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