精液量を調べるときは、「平均」と「中央値」「下限値」を区別することが大切です。WHO2021年版の参照集団では、精液量の中央値は3.0mL、下位5%に当たる値は1.4mLです。
これは日本人全体の平均でも、妊娠できる・できないを分ける境界でもありません。量が気になる場合は、見た目だけで精子の数や不妊を判断せず、採取条件を含めて確認します。
気になる状況と、次に確認すること
| 状況 | 対応の考え方 |
|---|---|
| 1回だけ少なく見えた | 前回の射精からの日数、採取の取りこぼし、薬や体調を確認する。見た目で測定値や不妊を決めない |
| 検査で1.4mL未満だった | 基準より低い結果として医師と確認する。ほかの精液所見・採取条件を合わせ、必要な再検査や診察を相談する |
| 少量・ほとんど出ない状態が続く | 泌尿器科などへ相談する。射精後の尿の濁り、手術歴、糖尿病、服用薬なども伝える |
| 血が混じる・痛みなどがある | 量の目安だけで済ませず医療機関へ相談する。急な強い痛みや著しい体調悪化は急いで受診する |
| 妊娠しにくさに困っている | 量だけで待機や治療法を決めず、パートナーと双方の状況を評価する |
中央値3.0mLは、誰のどの数値でしょうか
WHO精液検査マニュアル第6版の表8.3では、精液量のデータは3,586人分で、50パーセンタイル(中央値)が3.0mL、5パーセンタイルが1.4mLです。
小さい順に並べた中央付近が中央値で、数値を合計して人数で割る算術平均とは違います。WHO2021:精液検査マニュアル第6版(本文211〜213ページ、表8.1〜8.3)
参照集団は、避妊のない性交を始めて12か月以内にパートナーが自然妊娠した男性など、条件を満たす集団です。日本人男性全体の無作為調査ではなく、表の採用条件には2〜7日の禁欲期間なども含まれます。「成人の平均は必ず3mL」「この量なら問題ない」と一般化しません。
1.4mLは、不妊の診断線ではありません
1.4mLは参照集団の下位5%に対応する値です。それより少なければ妊娠できない、上回れば不妊の問題がないという意味ではありません。WHOは、妊娠した集団と妊娠しにくい集団の精液所見には重なりがあり、下位5%を両者の境界と過大解釈しないよう説明しています。
EAUの男性不妊ガイドラインも、精液検査の値一つで妊孕性を区切らず、複数の所見と本人・パートナーの生殖に関する状態を合わせて評価するよう説明しています。検査票に基準値が載っていても、自分だけで妊娠確率や治療法を決めません。EAU:男性不妊の評価・精液所見の参照値
量・精子濃度・総精子数は違います
精液量は1回の射精で出た液体の量(mL)、精子濃度は1mLあたりの精子の数、総精子数は1回分に含まれる精子の数です。総精子数は、精液量と精子濃度から計算します。精液は精子だけでできているわけではなく、分泌液も含むため、量が多ければ精子が多い・質がよいとは限りません。
例えば、精液量2mL・精子濃度2,000万/mLなら総精子数は4,000万です。これは計算の例であり、妊娠の合否判定ではありません。運動性や形態なども別の情報です。白さ・粘り・勢いを、精子の数や妊娠の証明に置き換えないでください。
採取条件や取りこぼしで、結果が変わることがあります
WHOは、精液検査の採取前の射精を控える期間として2〜7日を示しています。実際の検査では、受ける施設から指定された日数・容器・採取場所・提出時間に従ってください。これは検査条件の説明であり、妊活中の性交を全員その間隔にする指示ではありません。
途中でこぼれた場合、特に初めの部分を取り逃がした場合は、結果の解釈に影響します。隠さず、いつ・どの部分が入らなかったかを検査先に伝えます。通常のコンドームや潤滑剤を、施設の確認なしに採取に使わないでください。
自宅で見た目を量るために、別の容器へ移すことも避け、必要な測定は検査先へ確認します。WHO2021:採取前の説明と採取方法(本文13〜14ページ)
前回の射精からの日数、発熱などの体調、薬、取りこぼしを記録すると役立ちます。量を増やすために禁欲期間を勝手に延ばしたり、検査直前だけサプリを追加したりせず、結果が比較できる条件を相談しましょう。
少量・出ない状態が続く場合は、診療を受けます
NHSは、射精の問題が続く場合は医師に相談するよう案内しています。精液が膀胱側へ流れる逆行性射精では、精液が少ない・出ない、射精後の尿が濁るなどがみられることがあります。ただし、これらだけで自己診断はできません。手術歴・糖尿病・服用薬なども医師が確認します。NHS:持続する射精の問題と逆行性射精
薬が関係していると思っても、処方薬を自己判断で中止しないでください。妊娠を希望するか、痛みなどがあるかも含めて相談します。血が混じる場合も診療を受け、量が多いから安全とは決めません。
異常値が出た後の再検査と、追加検査は個別に相談します
NICE2026は、初回の精液検査が異常な場合に確認の再検査を勧めています。再検査は理想的には3か月後としつつ、無精子症や高度の乏精子症などでは早く行う例外を明記しています。
EAUも初回異常時に少なくとも2回の精液検査を求めています。症状や妊娠計画によって診療が必要なため、全員3か月何もせず待つという意味ではありません。NICE2026:精液検査・再検査(1.17)
ホルモン、超音波、遺伝学的検査、精子DNA断片化などを全員が一式で受けるわけではありません。診察と所見から、何を疑い、検査結果で何が変わるかを説明してもらいます。食べ物やサプリで量を増やすことを、診療や妊娠率改善の代わりにしないでください。
出典と確認日
2026年10月26日にWHO2021の採取と参照集団・分布表、EAUとNICEの評価・再検査、NHSの射精の問題の採用節を確認しました。WHOの表は中央値と下位5%を区別して掲載しています。医師による本記事の個別監修はありません。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
公的機関や医学会などの情報をもとに、女性の健康と医療の選択に役立つ情報を整理しています。