抗精子抗体は、精子に反応する抗体です。検査には、血液の成分である血清を使う方法や、精液中の精子に結合している抗体を調べる方法などがあります。「抗精子抗体検査」という名前だけで、対象、検査法、数値の意味がすべて同じとは限りません。
検査を受ける前後に確認すること
| 確認する項目 | 質問の例 |
|---|---|
| 検査の目的 | 何を疑って調べるのか。結果によって治療方針が変わるのか |
| 検体と検査名 | 誰の血液・精液を使い、どの方法で抗体を調べるのか |
| 結果の読み方 | 陽性・判定保留・陰性は何を意味するか。数値の単位と基準は何か |
| その後の対応 | ほかの所見とどう合わせるか。再確認や治療変更は必要か |
血清の精子不動化抗体と、精子に結合する抗体の検査
国内のSRLの検査案内では、血清を材料とする「精子不動化抗体」を、不動化法(Isojima法)で調べています。検査室で精子の動きへの作用を評価する方法です。単に精子の数や運動率を調べる通常の精液検査とは異なります。SRL:精子不動化抗体の検査材料・方法・判定
一方、EAUの指針は精子表面の抗体を調べる方法として、MAR testやimmunobead testを挙げています。精子に結合した粒子などを評価する検査で、血清の精子不動化抗体とは測っているものや結果の表示が違います。EAU:男性不妊、表11.2の精子抗体検査
検査名が似ていても、別の検査法や検査室の数値をそのまま比較しないでください。例えばSIV、SI50、結合している精子の割合は、同じ単位ではありません。結果用紙の正式名称と基準を見ながら説明を受けましょう。
不妊の初診で、全員に必須の検査ではありません
AUA/ASRMの男性不妊評価指針は、初期評価で抗精子抗体検査を一律には行わず、結果が診療方針に影響する場合に検討するとしています。これは男性の評価についての推奨であり、女性の血清検査を含むすべての状況を同じ扱いにするものではありません。AUA/ASRM:男性不妊の初期評価と抗精子抗体検査
「不妊ならまず全検査」「初診から一式を終えるまで治療できない」と考えず、病歴、これまでの検査・治療、精液所見などから、何を確かめる必要があるか相談してください。受診を始める目安と、この追加検査を受ける適応は別の判断です。
陽性は、不妊の原因や妊娠できないことの確定ではありません
陽性の場合は、どの検査でどの程度の反応があり、本人たちの状況にどう関係するかを確認します。抗体が見つかったことだけで、今回の不妊の原因をすべて説明したり、自然妊娠が不可能だと断定したりすることはできません。
EAUはMAR testとimmunobead testについて、根拠に基づく共通の参考限界が確立されていないとしています。他施設の「50%」「強陽性」などを、すべての検査で共通の妊娠できる・できない境界として扱わないでください。判定保留がある検査も含め、再確認が必要かを検査した施設へ聞きます。
陰性でも、ほかの不妊要因がないことや、今後の妊娠が保証されるわけではありません。結果だけで夫婦のどちらかを責めたり、免疫が強い・弱いという全身の評価へ置き換えたりしないでください。
陽性後の治療は、結果とほかの条件を合わせて相談します
治療方針は、抗体検査だけでなく、年齢、妊娠を希望している期間、排卵・卵管・精液などの評価、過去の治療結果、本人たちの希望を踏まえて考えます。人工授精、体外受精、顕微授精などを検討する場合も、どの過程の問題に対応するのか、期待できることと限界の説明を受けてください。
陽性なら全員が直ちに顕微授精になる、検査だけでその成功率が分かる、とは言えません。また、抗体を下げることを目的にステロイドなどを自己使用したり、サプリで治ると考えて治療を変更したりしないでください。薬を提案された場合は、根拠、目的、副作用、ほかの選択肢を確認します。
採血・採精と、費用・結果が出るまでの時間
血清を使う検査では採血が必要です。精液を使う場合は、採取方法や提出条件を施設へ確認してください。必要な条件は検査によって異なるため、一般的な精液検査の記事の採取条件を自動的に当てはめません。
検査の費用、保険の扱い、診察料や外注費、結果が出るまでの時間は、検査法と施設で確認します。一般的な不妊検査一式の費用を、この検査の価格として掲載しません。検査会社の「実施料0点」などの表示も、患者の支払いが無料という意味にはできません。
相談には、検査結果用紙、ほかの精液検査の結果、治療歴、使用薬を持参すると整理しやすくなります。診療先を変える場合も、陽性・陰性の一語だけでなく、検査名と数値・基準を共有してください。
出典と確認日
2026年10月26日にSRLとEAUの採用箇所、ASRM掲載の男性不妊評価指針を確認しました。血清と精子表面の検査、初期評価と追加検査、陽性所見と妊娠成績を分けています。医師による本記事の個別監修はありません。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
公的機関や医学会などの情報をもとに、女性の健康と医療の選択に役立つ情報を整理しています。