
この記事の情報取得日:2026年5月2日。「卵子凍結」という言葉を聞いたことはあっても、実際に何をする治療なのかよくわからないという方は少なくありません。本記事では仕組み・方法・保存期間・費用・リスクまで、基礎から体系的に解説します。
この記事でわかること
- 卵子凍結の仕組みと現在の標準技術(ガラス化法)
- 社会的凍結と医学的凍結の違い
- 保存期間・管理方法・融解後の使い方
- 検討を始めるタイミングの目安
卵子凍結とは——基本の仕組みをわかりやすく
卵子凍結とは、女性の卵子を体外に取り出してマイナス196℃の液体窒素で保存し、将来使用できる状態で保管する医療技術です。排卵誘発剤で複数の卵胞を育て、採卵処置で卵子を回収したのち、「ガラス化法(Vitrification)」という急速凍結技術で保存します。保存された卵子は融解後に体外受精・胚移植の流れで使用されます。
社会的凍結と医学的凍結——目的による2分類
卵子凍結は大きく2種類に分かれます。どちらを目的とするかによって費用・対象年齢・クリニックの対応が変わります。
分類 | 対象 | 目的 | 費用 |
|---|---|---|---|
社会的卵子凍結 | 健康な女性 | 将来の妊娠可能性を温存(晩婚・キャリア等) | 全額自費 |
医学的卵子凍結(妊孕性温存) | がん患者・卵巣手術予定者 | 治療前に生殖機能を保護 | 一部保険・助成あり |
日本では「小倉クリニック」が1983年に世界初の凍結卵子による出産を成功させて以来、技術が急速に進化しました。現在はガラス化法が標準となり、融解後の卵子生存率は90%以上に達しています。
採卵の方法——卵子が取り出されるまで
採卵に至るまでの流れは以下の通りです。月経開始から採卵完了まで通常2〜4週間かかります。
- 排卵誘発(10〜14日):ゴナドトロピン製剤を注射して複数の卵胞を育てる。毎日の自己注射が多い
- 卵胞モニタリング(2〜4回):超音波で卵胞サイズを確認しながら採卵日を決定
- 採卵処置(30〜60分):膣壁から超音波ガイド下で針を刺し卵子を吸引採取。静脈麻酔使用が多い
- 凍結処理(採卵後2〜3日):成熟卵子(MII期)をガラス化法で凍結保存
保存期間と管理——いつまで保管できるか
凍結卵子の保存期間はクリニックによって設定が異なります。無期限保管はほとんどなく、年齢上限や年数制限があるのが一般的です。
保管に関する項目 | 一般的な内容 |
|---|---|
保管温度 | 液体窒素(マイナス196℃)で管理 |
保管期間の上限 | 凍結者が50歳になるまで、または凍結から10年など(施設による) |
年間保管料 | 3〜6万円/年 |
使用時の手続き | 融解→体外受精→胚移植(別途費用20〜40万円) |
廃棄手続き | 申請により廃棄可能(第三者提供は日本では原則不可) |
費用の目安
採卵から凍結保管までの費用は、施設・年齢・使用薬剤によって異なります。
- 採卵1回(薬代・処置・凍結込み):30〜70万円
- 年間保管料:3〜6万円/年
- 融解・移植時:20〜40万円(体外受精費用として)
- 自治体助成:東京都などでは採卵費の一部助成あり(条件・年度による)
検討を始めるタイミング——受診のポイント
卵子凍結の有効性は早期ほど高まります。以下のタイミングで検討を始めることが一般的に推奨されます。
- 推奨年齢:34歳以下(ASRMガイドライン)、日本では38歳までが目安とされることが多い
- まず行う検査:AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査——卵巣予備能を数値で把握できる
- 受診前の準備:月経周期の記録、過去の婦人科疾患歴をまとめておく
- 確認事項:クリニックの年齢上限・費用内訳・保管期限を初診時に確認
アクセス・クリニック選びの基準
卵子凍結を提供するクリニックは全国各地にあります。選択基準として以下を参考にしてください。
- 日本産科婦人科学会または日本生殖医学会の認定施設・認定医がいるか
- 凍結実績・成功率データを公開しているか
- 採卵数・年齢帯別の成績を説明会・初診で開示しているか
- 万が一の緊急連絡体制(採卵後の体調変化対応)があるか
よくある質問(FAQ)
Q1. 卵子凍結は痛いですか?
排卵誘発注射は軽い刺激程度で自己注射に慣れる方が多いです。採卵処置は多くのクリニックで静脈麻酔を使用するため処置中の痛みは少なく、翌日以降に軽い腹痛が残ることがあります。
Q2. 凍結した卵子を使わなかった場合はどうなりますか?
廃棄申請を行うことで保管終了できます。日本では現在、凍結卵子の第三者提供(卵子提供)は原則認められていません。
Q3. 独身でも卵子凍結を受けられますか?
社会的凍結は未婚の方でも受けられます。ただし「使用時にはパートナーの精子が必要」という点(精子ドナーは国内では難しい)と、保管期限について事前に理解が必要です。
Q4. 凍結前にパートナーへの同意は必要ですか?
卵子凍結(未受精)は一般的にパートナーの同意書は不要です。ただし凍結受精卵(胚)の場合は両者の同意が必要です。
Q5. がん治療前の凍結と社会的凍結の違いは何ですか?
対象・費用・医療機関の対応が異なります。がん治療前の妊孕性温存については「小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業」として公的助成があります。詳細は主治医・専門医にご確認ください。
まとめ
卵子凍結は「将来の可能性を今の自分が守る」技術です。仕組みはシンプルですが、採卵回数・費用・成功率は年齢に大きく左右されます。「いつか考えよう」と先延ばしにするほど選択肢が狭まるため、まずAMH検査で現状を把握することが最初のステップです。疑問はクリニックの説明会や初診で率直に確認することをお勧めします。
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療診断・治療の代替となるものではありません。治療の適否・詳細は専門医にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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