
この記事の情報取得日:2026年5月2日。「2回採卵して10個集まったと思っていたら、成熟卵子は5個だった」「もう1回採卵を勧められたけど、体への負担が心配」——3回目以上の採卵を検討する際には、メリットとリスクを正確に判断することが重要です。判断を支える医学的情報を整理しました。
この記事のポイント
- 採卵を繰り返しても卵巣予備能(AMH値)を急速に低下させるエビデンスは現時点では限定的
- 目標凍結卵子数(年齢別推奨:35歳未満なら10〜15個、35〜37歳なら15〜20個)を基準に追加採卵の必要性を判断する
- 3回目以降でも採卵成績(成熟卵子数)が大きく落ちないケースが多い——ただし体への累積ストレスは考慮が必要
3回目以上の採卵——続けることの医学的根拠
卵子凍結を複数回行う理由として最も多いのは「目標凍結卵子数に達していない」ことです。1回の採卵で得られる成熟卵子数は年齢・AMH値・卵巣の反応性によって大きく異なり、1〜3個しか採れないこともあれば、15個以上採れることもあります。
「社会的卵子凍結」の推奨凍結卵子数は、生殖医療学会や研究者によって以下のように示されています。
年齢 | 目標成熟卵子数(凍結) | 根拠・出典 |
|---|---|---|
35歳未満 | 10〜15個 | Massonら(Fertil Steril 2020) |
35〜37歳 | 15〜20個 | 年齢とともに染色体異常率が上昇するため多く必要 |
38〜40歳 | 20〜25個(現実的に難しいケースも) | クリニックによって目標値の設定が異なる |
目標数に届いていない場合、追加採卵を行うことは医学的に合理的な選択肢です。
採卵回数と卵巣予備能——AMH値への影響
「採卵を繰り返すとAMH値が下がって卵巣の老化が早まる」という不安を持つ方は多いですが、現時点の研究では以下の見解が主流です。
- ガラス化凍結のために採卵した卵子は未受精の状態であり、本来その周期に「捨てられる予定の卵子」を採取したもの
- 排卵誘発剤(ゴナドトロピン)は卵巣にある「その周期の発育中卵胞プール」を刺激するものであり、原始卵胞プール(将来の卵子の元)を消費するわけではないというのが現在の有力な解釈
- 複数の後ろ向き研究でも、IVF(体外受精)を複数サイクル経験した女性のAMH値に有意な低下は認められていない(Inabaら 2016、Youngら 2015等)
ただし個人の卵巣反応性には大きな差があり、「採卵を重ねても成績が安定する方」と「2〜3回目で急激に反応が落ちる方」がいます。担当医との個別評価が不可欠です。
3回目以降の採卵で成績が変わるか——実際のデータ
採卵回数 | 一般的な成熟卵子数の変化 | 注意点 |
|---|---|---|
1回目 | ベースライン(初回反応を確認) | 刺激プロトコルの最適化前 |
2回目 | 1回目と同等〜やや増加することも | 1回目のデータを元にプロトコル調整 |
3回目以降 | 多くの場合1〜2回目と同等 | 卵巣の「慣れ」による反応低下も一部で報告 |
5回目以降 | 個人差が大きい | 累積OHSSリスク・精神的負担の蓄積に注意 |
2回目以降は前回のデータを活用して排卵誘発プロトコルを最適化できるため、2〜3回目で成績が改善するケースもあります。
繰り返し採卵のリスクと注意点
採卵回数を重ねることに伴うリスクや負担を正確に理解しておくことが重要です。
- OHSS(卵巣過剰刺激症候群)の累積リスク:各周期に発症リスクがあり、複数回繰り返すことで通算の発症頻度が上がる。PCOSなど高リスク体質の方は特に注意
- 身体的・精神的負担の蓄積:注射・通院・採卵手技の繰り返しによる身体・精神へのストレスは過小評価されやすい。採卵と採卵の間に十分な回復期間(最低1〜2周期)を確保することが推奨される
- 費用の累積:1周期あたり30〜70万円の費用が複数回発生する。東京都等の助成金(1回あたり上限あり)の活用も確認する
- 年齢の経過:採卵を先延ばしにすることで年齢が上がり、卵子の染色体正常率が低下するトレードオフがある
3回目以降の採卵を続けるか止めるかの判断基準
「もう1回採卵すべきか」の判断は、以下の要素を総合的に考慮して担当医と相談することが重要です。
- 現時点の凍結卵子数と目標数のギャップ:残り何個必要か。目標の80%超に達しているなら「一旦終了」も選択肢
- AMH値・前回の採卵成績:前回の成熟卵子数が急激に落ちている場合は次回への期待値が下がる
- 現在の年齢と残り時間:35〜38歳の境界にいる場合、年齢による卵子の質低下が重要な時間軸になる
- 精神的・経済的余力:「もう疲れた」「これ以上費用が出せない」という状況も正当な判断根拠
よくある質問
Q1. 3回採卵して合計10個凍結しています。あと何個集めればいいですか?
35歳未満であれば10〜15個が一般的な目安とされています。10個に達しているならば「一旦終了」「残り5個を1回で補う」どちらも選択肢になります。最終的には担当医と卵子の状態(成熟率・変性卵子の除外後の実数)を確認したうえで判断してください。
Q2. 採卵のたびに採れる卵子数が減っています。これは卵巣が弱っているサインですか?
回数を重ねるごとに採れる成熟卵子数が減少傾向にある場合、卵巣予備能の自然な低下(年齢による)、または卵巣の刺激に対する慣れ(感受性の変化)が考えられます。AMH値の定期的な確認と、プロトコルの見直し(用量・剤型の変更)を担当医に提案することが有効です。
Q3. 採卵の間隔はどのくらい空けるべきですか?
採卵と採卵の間に最低1〜2周期(約1〜2ヶ月)の回復期間を設けることが一般的に推奨されています。卵巣腫大が完全に回復し、ホルモン値が正常に戻ってから次の周期を開始することで、次回の採卵成績が安定する傾向があります。
Q4. 採卵を5回以上繰り返している方もいますか?
はい、AMH値が低いPOR(卵巣低反応)の方や、40歳前後で目標数に届かない方が5〜10回以上採卵を重ねるケースがあります。体と相談しながら継続するかどうかを判断することが重要で、心理的なサポートを受けながら治療を進めることも推奨されます。
Q5. 3回目の採卵前に別のクリニックでセカンドオピニオンを受けることはできますか?
可能ですし、推奨される選択肢です。別のクリニックでの排卵誘発プロトコルの評価・AMH値の再検査・採卵方針の相談は有益な情報を得られることがあります。費用はかかりますが、複数の採卵周期にかかるコストと比較すれば、セカンドオピニオン費用(1〜3万円程度)は有効な投資になります。
まとめ
3回目以上の採卵は、目標凍結卵子数に達していない場合の合理的な選択肢です。現時点の研究では、採卵回数がAMH値を急速に低下させるという明確なエビデンスはなく、2〜3回目でプロトコル最適化により成績が向上するケースもあります。
判断の基準は「目標数とのギャップ」「前回の採卵成績」「年齢と時間」「精神的・経済的余力」の4点です。担当医と数値を確認しながら、自分にとっての「十分」の定義を明確にして判断することが最も重要です。
【免責事項】本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の治療や検査を推奨するものではありません。記載内容は情報取得日時点のものであり、最新情報は医療機関にご確認ください。実際の治療・検査については、必ず担当医師にご相談のうえ判断してください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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