不妊治療の自己注射は、処方された薬と器具について医療機関で指導を受けて行います。同じ「自己注射」でも、ペンと針付きシリンジでは操作が異なり、量・時間・保管条件も共通ではありません。ネット上の手順だけで始めず、自分の薬で最初から片付けまで確認しましょう。
打ち忘れ、液漏れ、途中で止まったなどのときに、自分で不足量を推測して追加注射しないでください。薬名と状況を伝え、施設から受けた対応表や連絡先で確認します。強い腹痛や息苦しさなどがある場合は、手技の相談よりも速やかな診察が必要です。
注射前に、処方と自分の器具を照らし合わせる
| 確認すること | 指導時に聞いておきたい内容 |
|---|---|
| 薬名・規格・予定 | 処方された製品、1回量と単位、使う日・時間。前の治療周期の予定や別の薬の量を流用しない。 |
| 操作と練習 | 必要な準備、空打ちの有無と方法、針の扱い、注射部位、注入終了の確認を、自分の器具で教わる。 |
| 保管と期限 | 未使用か使用開始後か、使用開始日、保管温度、持ち運びの方法、凍結・高温時の連絡先。 |
| 困ったとき | 打ち忘れ、液漏れ、器具の破損、量が不明な場合の対応と、夜間・休日を含む連絡先。 |
| 使用後 | 針や本体の扱い、専用容器、医療機関への返却等、実際の回収・廃棄方法。 |
指導を聞いた後、自分で操作して見てもらい、不明点をその場で確認するとよいでしょう。紙の説明や製品の在宅自己注射説明書を手元に置き、忘れやすい点を記録します。「1〜2回で必ず慣れる」と決まっているわけではありません。怖さや手の動かしづらさがあれば、追加の練習や支援を相談してください。
空打ちの量・角度・待つ秒数は、他の製品から借りない
ペンの空打ち、針を刺す角度、皮膚の扱い、注入後に針を抜くまでの操作などは、自分が使う製品の説明書と受けた指導で確認してください。「すべて2単位で空打ち」「全員同じ角度・秒数」とする共通手順は示せません。針付きシリンジに、別のペンの準備操作を当てはめることも避けます。
ダイヤルや表示の意味、最後まで投与できたかの確かめ方、残量が足りない場合の対応も製品別に確認します。液が漏れた、針が外れた、操作を間違えた場合は、自己判断でやり直したり、残液を別の器具へ移したりせず、指示を求めてください。
針・器具は他の人と共有せず、使用済みの針を再使用しません。針を外す方法やキャップの扱いも、実際の器具と廃棄容器を使って教わりましょう。一般ごみや資源回収へそのまま出さず、施設から案内された方法で処分します。
打ち忘れ・時間のずれ・量が不明なとき
打ち忘れに気づいたら、処方時の対応指示を確認してください。薬によって対応が違い、採卵等の予定と結び付いた注射では時間の確認が特に重要です。自己判断で2回分をまとめたり、翌日の量を増やしたりしないでください。
例えば、PMDAのオビドレル患者向ガイドは、使用し忘れた場合に速やかに医師へ連絡して指示を受けるよう案内しています。一方、ゴナールエフのガイドには別の対応が記載されています。片方の案内を、すべての不妊治療薬へ流用しないことが大切です。
連絡するときは、薬名・規格、予定の量と時刻、実際に使った時刻、器具の表示や起きたことを伝えます。注射予定が迫っているのに方法が分からない場合も、そのまま推測して操作せず、事前に教わった時間外の連絡方法で確認しましょう。
冷蔵・室温・持ち運びは、製品と使用開始後の条件で確認する
「すべて冷蔵」「室温ならすべて28日」とまとめることはできません。今回確認したゴナールエフのガイドには、使用前と使用開始後を分けた保管条件があり、オビドレルには別の保管上の注意があります。薬を受け取ったときに、自分の製品・包装と使用開始日を確認してください。
凍結、高温、保管時間が分からない場合は、使えるかを薬局・施設に確認します。「冷蔵庫へ戻した」「解凍した」「室温にしたら見た目が戻った」ことだけで使用可能とは判断しないでください。破損や薬液の見た目に異常を感じた場合も、製品の説明を確認して相談します。
通院や旅行で持ち運ぶ予定があるときは、所要時間や移動中の温度、保冷方法を事前に伝えましょう。保冷剤に直接触れて凍る可能性なども含め、具体的な方法を確認します。
腹部の張り・痛みなどを、注射の痛みだけで片付けない
卵巣刺激に使う薬では、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などへの注意が必要です。今回確認した2製品のガイドは、下腹部痛、腹部の張り、吐き気、急な体重増加、尿量の減少などに注意し、症状があれば速やかに医師等へ相談するよう案内しています。
薬の使用後にも症状が出ることがあるため、最後の注射が終わったことだけで安心しないでください。
急な息苦しさ、胸痛、激しい腹痛、麻痺や激しい頭痛、意識が遠のく、全身のじんましんと呼吸の異常などでは、緊急の診察を求めてください。動けない、意識や呼吸の異常がある場合は119へ連絡します。次の注射の可否も医療者に確認し、定期受診の日まで待たないようにします。
注射部位の痛み・赤み・腫れが強い、広がる、続く場合も相談してください。範囲が何cm未満なら安全、少量の気泡や液漏れなら必ず問題ない、と自分で決めることは避けましょう。
確認した資料
2026年10月24日に確認。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
公的機関や医学会などの情報をもとに、女性の健康と医療の選択に役立つ情報を整理しています。