
「なぜ死産は起こるのか」「予防できることはあるのか」——死産を経験した方、または妊娠中でリスクを知りたい方の疑問に、医学的なエビデンスに基づいて答えます。
この記事のポイント
- 死産の頻度は出産1,000件に約3〜5件(日本)
- 主な原因は胎盤異常・臍帯異常・先天異常・感染症など
- 一部のリスクは生活習慣や妊婦管理で低減できる
- 原因が特定できないケース(原因不明死産)も約30〜50%ある
死産の定義と頻度
日本の法律では、妊娠12週以降に胎児が死亡した状態を「死産」と定義しています(死産の届出に関する規程)。出産1,000件に対して約3〜5件の割合で発生しており(厚生労働省 人口動態統計)、決して稀な出来事ではありません。妊娠後期(28週以降)の死産を「後期死産(周産期死亡)」、12〜28週を「前期死産」と区分することもあります。
死産の主な原因——6つのカテゴリ
死産の原因は多岐にわたり、単一の原因ではなく複数の要因が重なることも少なくありません。以下に主要なカテゴリを示します。
原因カテゴリ | 具体例 | 推定される割合 |
|---|---|---|
胎盤異常 | 常位胎盤早期剥離、前置胎盤、胎盤機能不全 | 20〜25% |
先天異常・染色体異常 | 重篤な心奇形、18トリソミー、染色体数的異常 | 15〜20% |
臍帯異常 | 臍帯巻絡、臍帯脱出、臍帯真結節 | 10〜15% |
母体合併症 | 妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、全身性疾患 | 10〜15% |
感染症 | GBS感染、サイトメガロウイルス、トキソプラズマ | 5〜10% |
原因不明 | 解剖・病理検査でも特定できないケース | 30〜50% |
胎盤異常——最も多い原因
常位胎盤早期剥離は、正常な位置にある胎盤が出産前に子宮壁から剥がれる状態で、急激な大量出血と胎児への酸素供給の遮断が生じます。高血圧・喫煙・外傷(転倒など)がリスク因子とされています。胎盤機能不全(胎盤の老化・低形成)も胎児の発育不全を通じて死産リスクを高めます。定期的な胎児発育の超音波確認がリスクの早期把握につながります。
母体のリスク因子——予防できること・できないこと
死産のリスク因子の中には、生活習慣の見直しや医療管理で低減できるものがあります。一方、染色体異常などは予防できません。正しく区別することで、不必要な自責を防ぐことができます。
リスク因子 | 予防・管理の可否 | 対策 |
|---|---|---|
喫煙 | 予防可能 | 禁煙(妊娠前からが理想) |
肥満(BMI30以上) | 一部管理可能 | 妊娠前からの体重管理 |
妊娠高血圧症候群 | 早期発見・管理可能 | 定期健診・塩分管理 |
妊娠糖尿病 | 早期発見・管理可能 | 血糖管理・食事療法 |
高齢妊娠(35歳以上) | リスク増加あり・予防は難しい | 早期からの丁寧な管理 |
染色体・先天異常 | 予防不可 | 出生前診断での把握は可能 |
死産経験後の次の妊娠——再発リスクと対策
死産を経験した方が最も心配するのが「また同じことが起きるのではないか」という不安です。再発リスクは原因によって異なりますが、一般人口と比較して若干高くなることが知られています。一方で、適切な管理下での次の妊娠で多くの方が出産に至っています。
- 原因が特定できた場合:原因に応じた予防的管理(例:抗凝固療法、血糖コントロール強化)を次の妊娠から開始
- 原因不明の場合:ハイリスク妊婦として定期的な超音波・NST(ノンストレステスト)でフォロー
- 精神的サポート:次の妊娠中の不安は非常に強くなる。産婦人科医とのオープンなコミュニケーションが重要
死産後の検査——原因究明のプロセス
死産後に原因を特定するための検査が行われることがあります。すべての検査が必須ではなく、医師の判断と家族の意向によります。
- 胎盤・臍帯の病理検査:胎盤の状態・感染の有無などを確認(最も一般的)
- 胎児の染色体検査:先天異常の有無を確認(組織が採取できる場合)
- 母体の血液検査:感染症・凝固異常・自己免疫疾患などのスクリーニング
- 解剖(剖検):家族の同意のもとで行われる。詳細な原因究明が可能だが実施率は低い
「自分のせいではない」——原因不明死産について
死産を経験した方の多くが「何か自分のせいだったのではないか」と自分を責めます。しかし、死産の30〜50%は現在の医学でも原因が特定できません。「原因が見つからないのは、それが誰の責任でもなかったから」ということを、医師の言葉として伝えたいと思います。日常的な活動(仕事・家事・軽い運動・ストレス)が死産の直接原因になるエビデンスはありません。
FAQ
Q1. 前回の死産は次の妊娠に影響しますか?
原因が特定されていれば、次の妊娠での対策を講じることができます。原因不明の場合でも、ハイリスク妊婦として厳重に管理することで多くの方が出産に至っています。必ず専門医に相談してください。
Q2. 死産の予防のために妊娠中にできることはありますか?
禁煙・禁酒、定期健診の受診、妊娠高血圧・糖尿病の早期管理が推奨されます。ただし、すべての死産が予防できるわけではなく、規則正しい生活を送っていても起こることがあります。
Q3. 「胎動が減った」と感じたらどうすればよいですか?
妊娠28週以降は胎動を毎日確認し、普段と比べて明らかに少ない場合はすぐに産婦人科に連絡してください。胎動減少は胎児の状態変化を示すサインの一つです。
Q4. 染色体異常による死産は予防できますか?
染色体異常そのものの予防はできません。出生前診断(NIPT・羊水検査など)により妊娠中に把握することは可能ですが、治療介入は現時点では困難です。
Q5. 死産後、次の妊娠はいつからできますか?
身体的な回復には通常3〜6か月かかるとされ、月経が2〜3回再来してから妊活を再開することが一般的な目安です。精神的な準備も含め、担当医と十分に話し合ってから決断することをおすすめします。
Q6. 死産後に受けられる支援はありますか?
多くの産婦人科病院ではソーシャルワーカー・助産師によるグリーフケアを行っています。また、「天使のたまご」「JISKAN」などの当事者団体、自治体の保健センターも利用できます。
まとめ
死産の主な原因は胎盤異常・先天異常・臍帯異常・母体合併症などですが、30〜50%は原因不明です。予防できるリスク因子(喫煙・肥満・血糖管理など)への対策は有効ですが、すべての死産が防げるわけではありません。死産を経験した方は、自分を責めることなく、原因究明と次の妊娠への準備を担当医とともに進めてください。
専門医への相談を
死産後の経過観察や次の妊娠の計画については、産婦人科専門医への相談が不可欠です。「なぜ起きたのか」「次はどうすればよいか」を一緒に考えてくれる担当医を持つことが、前に進む力になります。
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を推奨するものではありません。具体的な管理方針については必ず担当医にご相談ください。参考:厚生労働省「人口動態統計」、日本産科婦人科学会ガイドライン
この記事を書いた人
EggLink編集部
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