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切迫流産と仕事|休職の判断基準

2026/4/19

切迫流産と仕事|休職の判断基準

切迫流産と診断されたら仕事はどうなる?まず知っておくべきこと

切迫流産と診断されると、「仕事を続けていいのか」という判断に迷う方が少なくありません。安静度は症状の重さによって異なり、一律に「即休職」とも言えません。主治医の安静指示の内容を正確に把握することが、すべての出発点です。

切迫流産とは何か

切迫流産とは、妊娠22週未満において流産が差し迫った状態を指します。具体的には性器出血・下腹痛・子宮収縮のいずれか、またはその組み合わせが認められ、子宮口はまだ閉じている状態です。日本産科婦人科学会の定義では、妊娠22週未満の症状を切迫流産、22週以降37週未満を切迫早産と区別しています。

妊娠全体の10〜20%に何らかの出血が起こるとされており、切迫流産は決して珍しい診断ではありません。ただし、症状の重さには大きな幅があります。ごく少量の茶色いおりもの程度から、鮮血が続く状態、さらに子宮収縮(張り)を伴う状態まで、同じ「切迫流産」でも安静度の指示は症状によって異なります。

仕事に関する判断が難しい理由

「安静にしてください」という医師の指示は、自宅安静なのか入院安静なのか、デスクワークはOKなのか、通勤だけでも不可なのか——口頭だけでは職場に正確に伝わりません。後述する母性健康管理指導事項連絡カード(母健カード)を活用すれば、この曖昧さを文書で解消できます。

安静度別・就労可否の判断フロー

切迫流産の安静指示は大きく3段階です。軽度の出血のみでほかの症状がない場合はデスクワーク継続が可能なケースもある一方、子宮収縮(お腹の張り)がある場合は原則として休職が必要です。自己判断せず、主治医の指示に沿って確認してください。

レベル1:軽度出血のみ、子宮収縮なし

少量の茶色〜ピンク色のおりもの程度で、腹痛・子宮収縮がなく、超音波で胎嚢・胎児心拍が確認できている状態です。主治医から「日常生活に準じた生活でよい」「無理な運動は避けて」という指示が出ている場合、在宅勤務・デスクワーク程度であれば継続できるケースがあります。

  • 通勤:ラッシュ時の混雑した電車は避けることが望ましい
  • デスクワーク:着座が中心であれば主治医に確認のうえ継続可の場合あり
  • 立ち仕事・重作業:原則として避ける
  • 出張・長距離移動:不可

この段階でも、出血量が増える・鮮血になる・腹痛が出るなど症状が悪化した場合は即座に受診が必要です。

レベル2:出血継続または子宮収縮あり→要休職

鮮血が続く、または腹部の張り・収縮感が繰り返される状態です。この場合は自宅安静が指示されることが多く、通勤を含む就労は困難になります。医師から「自宅安静」の指示が出ていれば、後述の母健カードに「休業または勤務時間の短縮」を記載してもらうことで、会社は就業制限への対応義務を負います。

  • 通勤・外出:原則不可
  • デスクワーク(在宅):主治医の許可がなければ避ける
  • 家事:最小限に留め、横になる時間を確保する

レベル3:入院安静が必要な状態

大量出血、強い腹痛・子宮収縮が頻回に起こる、または頸管無力症など器質的な問題が疑われる場合は入院管理が必要です。入院中は当然就労不可となり、傷病手当金の申請対象となります。退院後も安静指示が続く場合は、レベル2の対応に準じます。

安静レベル

主な症状

就労可否の目安

必要な手続き

レベル1

軽度出血のみ、収縮なし

在宅デスクワーク:主治医と相談

母健カード(勤務制限)

レベル2

出血継続または子宮収縮あり

休職が原則

母健カード(休業)+傷病手当金

レベル3

大量出血・入院安静

就労不可

傷病手当金(入院から申請可)

母性健康管理指導事項連絡カード(母健カード)の使い方

母健カードは、医師が妊婦に対して必要な措置(勤務時間の短縮・業務の転換・休業など)を指示し、それを会社に伝えるための公式書類です。このカードを受け取った会社は、男女雇用機会均等法第13条に基づき、指示された措置を講じる義務があります。

母健カードとは何か

正式名称は「母性健康管理指導事項連絡カード」。厚生労働省が様式を定めており、産婦人科・婦人科の医師や助産師が記載できます。記載できる措置の例は以下のとおりです。

  • 作業の制限(重量物の取り扱い、長時間の立ち作業など)
  • 勤務時間の短縮(時差通勤・時間外労働の制限を含む)
  • 休業(自宅安静・入院安静)
  • その他の必要な措置

カードの様式は厚生労働省のサイトからダウンロード可能で、産院に用意されていることも多いです。診察時に「母健カードを書いていただけますか」と主治医に依頼してください。

会社の対応義務(男女雇用機会均等法第13条)

男女雇用機会均等法第13条は、事業主に対して「医師等から指導を受けた旨を事業主に申し出た女性労働者に対し、必要な措置を講じなければならない」と定めています。母健カードはこの「申し出」を文書化したもので、受け取った会社は指示された措置を拒否できません

ただし、制度の活用にはいくつかの注意点があります。

  • 口頭の申し出でも法的効力はあるが、カードがあると会社側に明確に伝わる
  • 有給休暇の取り扱いは労使間で協議が必要(強制的に有給消化させることは一般的にない)
  • 休業中の賃金保障は会社の就業規則による(無給の場合は傷病手当金で補填できる)

カードを受け取った会社がとるべき手順

  1. 人事・労務担当者がカードの内容を確認する
  2. 指示された措置(休業・時短等)をどの制度で対応するか本人と協議する
  3. 必要に応じて業務の引き継ぎ計画を立案する
  4. 休業の場合は健康保険組合への傷病手当金申請の手続き案内を行う

傷病手当金の申請手順と支給額の計算例

切迫流産による休職が4日以上続く場合、健康保険の傷病手当金を申請できます。支給額は標準報酬月額の2/3が目安で、最長1年6か月受給可能です。申請は会社経由で健康保険組合(または協会けんぽ)に行います。

支給要件と支給期間

傷病手当金が支給されるための要件は4つあります。

  • 健康保険の被保険者であること(扶養家族・国民健康保険は対象外)
  • 業務外の病気・ケガによる療養であること(切迫流産は対象)
  • 労務不能であること(医師が就労不能と認めていること)
  • 連続して3日間休業し(待期3日間)、4日目以降の休業であること

支給期間は支給開始日から最長1年6か月です。出産手当金との切り替えタイミングについては、健康保険組合に事前確認をお勧めします。

支給額の計算方法と具体例

1日当たりの支給額は「標準報酬月額 ÷ 30日 × 2/3」で計算します。

標準報酬月額

1日当たり支給額(概算)

30日休職した場合の総支給額(概算)

20万円

約4,444円

約13.3万円

28万円

約6,222円

約18.7万円

36万円

約8,000円

約24万円

44万円

約9,778円

約29.3万円

標準報酬月額は給与明細ではなく、健康保険料の算定基礎となる金額で、残業代・通勤手当なども含む過去の平均給与をもとに等級が決まります。毎年9月に改定されるため、加入している健康保険組合で正確な等級を確認してください。

なお、休職中に会社から一部給与が支給される場合、傷病手当金との差額のみ受給できます。会社から賃金の2/3が出ていれば傷病手当金はゼロになる点に注意が必要です。

申請の具体的な手順

  1. 申請書を入手する:加入している健康保険組合(または協会けんぽの各都道府県支部)のサイトからダウンロード、または会社経由で入手
  2. 医師に記載を依頼する:申請書の「医師記入欄」に、療養の指示と労務不能と判断した期間を記入してもらう(産院の診察時に依頼)
  3. 会社(事業主)に記載を依頼する:申請書の「事業主記入欄」に、休業期間と給与支払いの有無を記入してもらう
  4. 申請書を提出する:会社経由または本人が直接、健康保険組合・協会けんぽに提出
  5. 支給決定通知と振込:審査後、概ね2〜3週間で指定口座に振り込まれる

申請は1か月単位でまとめて行うのが一般的ですが、2か月以上にわたる場合は月ごとに分割申請することも可能です。

職場への伝え方と上司・人事への相談のポイント

切迫流産を職場に伝えるタイミングや伝え方は、状況によって慎重な判断が必要です。伝えるべき情報を整理し、事実と制度の話として進めることで、スムーズな手続きにつながります。

何をどこまで伝えるか

職場に必要な情報は「休む期間の見込み」「就労制限の内容」「引き継ぎの方針」の3点です。診断名や詳しい症状を伝える義務はなく、母健カードがあれば指示された措置の内容が明記されているため、過度な説明をしなくても伝わります。

  • 直属の上司:まず口頭で報告し、後日母健カードのコピーを提出する
  • 人事・総務:休職・時短の手続きに必要な書類を確認する(傷病手当金の申請書類もここで入手できることが多い)
  • 同僚:業務の引き継ぎに関係する最低限の情報だけ伝えれば十分

復職の見通しが立てにくい場合の対処

切迫流産の安静期間は症状によって大きく異なり、「○週間で復職します」と断言しにくいことがあります。会社に対しては「主治医の指示に従い随時報告します」という姿勢を示し、2〜4週ごとに状況を報告することで信頼関係が保てます。

主治医に「職場への報告のために現在の状態を教えてほしい」と相談すると、診断書という形で文書化してもらえることも少なくありません。復職可否の最終判断は医師の許可が出てからの話です。

休職中の過ごし方と注意すべきこと

安静指示が出ている期間は、身体的な安静だけでなく精神的なストレス管理も重要です。完全な安静が必要かどうかは症状によって異なるため、禁止されていない範囲での生活を維持することも大切になります。

安静中にできること・できないことの整理

主治医から指示された安静度に従い、以下を参考に生活を整理してください。

行動

レベル1(軽度)

レベル2(自宅安静)

レベル3(入院)

シャワー

主治医に確認

主治医の許可次第

入浴

短時間なら可

原則不可

不可

家事(調理・洗濯)

軽作業は可

最小限

不可

パソコン作業

主治医に確認

主治医の許可次第

外出(短時間)

近所なら可

原則不可

不可

精神的なケアの重要性

切迫流産中の安静生活は、仕事への不安、経済的な不安、赤ちゃんへの心配が重なり、精神的に消耗しやすい時期です。不安が強い場合は、主治医や助産師に率直に相談してください。精神的なストレス自体が子宮収縮に影響することもあるため、メンタルケアは安静の一部と捉えることが大切です。

パートナーや家族に状況を正直に話し、家事や買い物の分担を具体的にお願いすることで、安静に専念できる環境が整います。一人で抱え込まないことが、安静期間を乗り越える第一歩です。

よくある質問(FAQ)

切迫流産と仕事・休職・傷病手当金に関してよく寄せられる7つの質問をまとめました。個別の状況によって対応が異なるため、具体的な手続きは主治医・職場・健康保険組合に確認してください。

Q1. 切迫流産と診断されましたが、まだ会社に話していません。すぐに報告すべきですか?

就業に制限が生じる場合(通勤が困難・立ち仕事ができないなど)は、早めに直属の上司に伝えることをお勧めします。詳細な病状を説明する必要はなく、「医師から安静の指示が出ており、業務に支障が出る可能性がある」という事実を伝えれば十分です。母健カードがあれば、それを提出することで具体的な措置の協議が始まります。

Q2. 母健カードは必ず産院にありますか?費用はかかりますか?

母健カードの様式は厚生労働省が定めており、多くの産院に用意されています。ない場合は厚生労働省のウェブサイトからダウンロードして持参するか、会社の人事部門から入手する方法もあります。記載費用は産院によって異なりますが、無料〜数百円程度が一般的な相場です。診察のついでに確認しておくとスムーズでしょう。

Q3. 傷病手当金の申請中に症状が改善して復職した場合、申請は取り消しになりますか?

申請は取り消しにはなりません。実際に労務不能だった期間の分は支給されます。復職後に再び安静が必要になった場合は、再度申請できます。ただし、同一疾病での支給は通算で1年6か月が上限です。

Q4. 派遣社員・契約社員でも傷病手当金はもらえますか?

雇用形態(派遣・契約・パート)にかかわらず、健康保険(社会保険)に加入していれば傷病手当金の対象です。ただし、国民健康保険(フリーランス・自営業者など)は傷病手当金制度がない自治体がほとんどのため、加入している保険の種類を先に確認してください。

Q5. 会社が母健カードの指示内容を無視した場合、どこに相談できますか?

男女雇用機会均等法に基づく指導義務を会社が履行しない場合、各都道府県の労働局雇用環境・均等部(室)に相談できます。相談は無料で、必要に応じて会社への指導が行われます。妊婦が不利益取り扱い(降格・解雇等)を受けた場合も、同様の窓口で対応可能です。

Q6. 安静が解除された後、職場復帰はどのように進めればよいですか?

主治医から就労許可が出たら、まず人事・上司と復職の時期・業務範囲を相談してください。いきなり以前と同じ業務量に戻るのではなく、短時間勤務や在宅勤務から始める選択肢を会社と協議することも可能です。妊娠中は引き続き母健カードで時間外労働の制限等を申請できます。

Q7. 有給休暇を使いたくない場合、傷病手当金との併用はできますか?

傷病手当金は有給休暇を消化した日には支給されません(その日は給与が支払われるため)。有給休暇の使い方は本人が選択できますが、長期休職が見込まれる場合は有給を温存して傷病手当金を先に活用するという選択も検討できます。どちらが有利かは休職期間の長さと給与水準によって変わるため、人事担当者や社会保険労務士への相談が助けになります。

まとめ

切迫流産診断後の就労可否は、症状の重さで判断が変わります。軽度出血のみの場合は在宅デスクワークが可能なケースもありますが、子宮収縮を伴う場合は休職が必要です。判断の基準は常に「主治医の安静指示の内容」です。

就労を制限・休止する際は、母健カードを活用して会社への申し出を文書化することがスムーズな手続きへの第一歩になります。会社は男女雇用機会均等法第13条に基づき、指示された措置を講じる義務があります。休職が4日以上続く場合は、傷病手当金(標準報酬月額の2/3)の申請も忘れずに行ってください。

経済的な不安と身体的な不安が重なる時期ですが、制度を正しく活用することで負担を軽減できます。主治医・職場・健康保険組合の三者と連携し、安心して安静に取り組める環境を整えてください。

次のステップ

切迫流産・切迫早産に関して不安なことがあれば、かかりつけの産婦人科にご相談ください。症状の変化(出血量の増加・腹痛・規則的なお腹の張り)があった場合は、次の受診日を待たずに速やかに受診することが大切です。

仕事・休職・手当に関する手続きは、職場の人事担当者や加入している健康保険組合の窓口でも案内を受けられます。周囲のサポートを積極的に活用してください。

参考文献

  • 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会「産婦人科診療ガイドライン 産科編 2023」
  • 厚生労働省「男女雇用機会均等法のあらまし」(令和4年度版)
  • 厚生労働省「母性健康管理指導事項連絡カードの活用方法について」
  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金について」
  • 厚生労働省「妊娠中・出産後の女性労働者に対する職場環境の整備について」

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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の治療法を推奨するものではありません。症状や治療については、必ず担当医にご相談ください。

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この記事を書いた人

EggLink編集部

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公開:2026/4/19更新:2026/4/28