
流産後に仕事を休めるのか、給付金はもらえるのか。つらい気持ちを抱えたまま職場への連絡に悩む方が多くいます。結論からいえば、流産後の休暇取得は労働基準法・健康保険法に明確に規定されており、妊娠週数に応じた休業・給付を受ける権利があります。この記事では、法的根拠から申請手順まで、実際に動ける情報を段階的に解説します。
【この記事のポイント】
- 流産後の休暇は「産前産後休業」(労働基準法第65条)で保護されており、妊娠12週以降の流産・死産は最大8週間の休業が認められる
- 妊娠12週未満の流産は産後休業の対象外だが、傷病手当金(健康保険法第99条)で就労不能期間の所得補償が受けられる
- 申請書類・手順を事前に把握しておくことで、心身の消耗が大きい時期に手続きをスムーズに進められる
まず確認:流産後に使える3つの制度
流産後に利用できる主な制度は3つです。自分の状況がどれに当てはまるか、ここで全体像を把握してください。
制度名 | 根拠法 | 対象条件 | 申請先 |
|---|---|---|---|
産後休業 | 労働基準法第65条 | 妊娠12週(84日)以降の流産・死産 | 雇用主(休業権) |
出産手当金 | 健康保険法第102条 | 妊娠12週以降 + 健康保険被保険者 | 健康保険組合・協会けんぽ |
傷病手当金 | 健康保険法第99条 | 流産による就労不能(週数問わず) | 健康保険組合・協会けんぽ |
妊娠週数によって適用できる制度が異なるため、「流産時の妊娠週数」を確認するところから始めましょう。
労働基準法第65条の法的根拠:産後休業が流産にも適用される理由
労働基準法第65条第2項は「産後8週間は就業させてはならない」と定めており、この「産後」には妊娠12週(84日)以降の流産・死産後が含まれます。厚生労働省の行政解釈でも明確に示されており、雇用形態(正社員・パート・派遣)を問わず適用されます。
産後休業の具体的な取得条件
- 対象:妊娠12週(84日)以降の流産・死産。出産(流産・死産を含む)の翌日から最長8週間
- 産後6週間経過後:本人が希望し、医師が支障ないと認めた業務については復職可能
- 雇用形態:正社員・パートタイム・有期雇用・派遣社員、すべて対象
「妊娠12週」の数え方と週数の確認方法
妊娠週数は最終月経開始日を0日として計算します。「12週」は最終月経開始日から84日目に当たります。母子健康手帳や診断書に記載されている週数で確認してください。
- 妊娠11週6日まで:産後休業の対象外(傷病手当金を検討)
- 妊娠12週0日以降:産後休業の対象
使用者(雇用主)は産後休業期間中に労働者を就業させることができません。産後休業を理由とした解雇・降格・不利益な取扱いは男女雇用機会均等法第9条で禁止されています。
週数別:適用できる制度の違いを確認しましょう
流産の時期によって使える制度が異なります。ステップ1として、自分の週数を確認し、該当する制度を特定してください。
妊娠12週未満の流産(化学流産・稽留流産など)
産後休業の対象外です。身体的・精神的回復が必要で就労できない状態であれば、傷病手当金の申請が可能です。
- 医師が「就労不能」と診断していること
- 連続3日間の待期期間を経た4日目以降から支給対象
- 支給額:標準報酬日額の3分の2×日数
- 申請期限:就労不能と認められた日から2年以内
妊娠12週(84日)以降の流産・死産
産後休業(最長8週間)と出産手当金の両方を申請できます。出産育児一時金(50万円)も申請対象です。
- 産後休業:流産・死産の翌日から最長8週間
- 出産手当金:産後休業中に支給。標準報酬日額の3分の2×休業日数
- 出産育児一時金:50万円(健康保険被保険者または被扶養者)
死産(妊娠22週以降)の場合
妊娠22週以降は法律上の「死産」となり、死産届の提出義務が生じます(市区町村役場、7日以内)。同時に産後休業・出産手当金の権利も生じます。医師から死産証明書を受け取り、手続きを進めてください。
出産手当金・傷病手当金の申請手順(ステップ形式)
給付金は自動的には支給されません。以下のステップで申請を進めてください。
ステップ1:主治医から診断書(証明書)を取得する
申請書類の「医師記載欄」に主治医の署名・証明が必要です。退院時または通院時に記載を依頼してください。記載内容は出産(流産)年月日・妊娠週数・就労不能の期間です。証明書料金が別途発生する場合があります(数千円程度)。
ステップ2:勤務先(人事・総務)に申請書の事業主欄記入を依頼する
「出産手当金支給申請書」または「傷病手当金支給申請書」を健康保険組合・協会けんぽのウェブサイトから取得し、事業主記載欄(休業期間・出勤状況・報酬支払いの有無)を記入してもらいます。プライバシーへの配慮を希望する場合は、産業医や人事担当者に直接相談してください。
ステップ3:健康保険組合または協会けんぽに申請書を提出する
- 提出先:健康保険組合(組合健保)、または全国健康保険協会(協会けんぽ)各都道府県支部
- 申請期限:出産日(流産日)の翌日から2年以内
- 支給時期:申請受付後おおむね2〜3週間(組合によって異なる)
- 会社経由提出と本人直接提出のどちらが必要か、所属健保に事前確認を推奨
傷病手当金の場合は、待期期間(連続3日間の就労不能)が完了した後、4日目から申請対象となります。有給休暇消化後に傷病手当金を申請するケースが一般的です。
職場への伝え方と不利益取扱いへの対応
流産後に職場へどう伝えるかは、多くの方が悩む点です。法的には流産の事実を詳細に報告する義務はありませんが、産後休業・給付金の申請には雇用主の協力が必要です。
最低限伝えるべき内容
- 「体調不良により休暇が必要」と伝えるだけでも産後休業の申請は可能
- 産後休業には「出産した事実と日付」の共有が必要だが、経緯の詳細を伝える義務はない
- 医師の診断書があれば、雇用主側に事実確認を求める権限はない
不利益取扱いを受けた場合の相談窓口
産後休業取得を理由とした解雇・降格・契約打ち切りは、男女雇用機会均等法第9条で禁止されています。不利益取扱いを受けた場合は以下に相談してください。
- 都道府県労働局 雇用均等室:無料・匿名相談可
- 電話相談:0120-794-713(女性の職業生活に関する相談窓口)
- オンライン申請:厚生労働省「雇用環境・均等」サイトから手続き可能
国民健康保険加入者・退職後の注意点
出産手当金・傷病手当金は健康保険(被用者保険)の制度です。国民健康保険には原則これらの給付はないため、自営業者・フリーランスの方は代替制度を確認してください。
国民健康保険加入者が使える主な制度
制度 | 内容 | 条件 |
|---|---|---|
出産育児一時金 | 50万円 | 妊娠12週以降の流産・死産 |
自治体独自支援 | 市区町村により異なる | 居住地の市区町村窓口に確認 |
医療費控除 | 流産に伴う医療費を確定申告で控除 | 年間10万円(または所得の5%)超 |
退職後の出産手当金継続受給の条件
- 退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あること
- 退職日に産後休業中ではないこと
- 退職後に任意継続被保険者となった場合は対象外
退職を検討している場合は、必ず退職前に加入する健康保険組合・協会けんぽに確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 流産後の産後休業は何日取得できますか?
妊娠12週(84日)以降の流産・死産では、最長8週間(56日)の休業が認められます。産後6週間が経過した後、本人が希望し医師が支障ないと認めた場合は早期復職も可能です。妊娠12週未満の流産は産後休業の対象外ですが、就労不能状態であれば傷病手当金で対応できます。
Q. 出産手当金はいつ振り込まれますか?
申請書を健康保険組合・協会けんぽが受理してからおおむね2〜3週間で振り込まれます。休業期間終了後にまとめて申請するケースが多いですが、休業中の分割申請も可能です。流産日の翌日から2年以内であれば遡って申請できます。
Q. 流産を会社に知らせたくない場合でも制度を使えますか?
申請には事業主の記載(休業期間・給与支払い状況の証明)が必要なため、休業の事実は伝える必要があります。ただし流産の詳細や週数を報告する義務はありません。医師の診断書を提出し「産後休業を取得したい」と伝えるだけで足ります。
Q. パートタイムや派遣でも産後休業は取れますか?
はい、取得できます。労働基準法第65条は雇用形態を問わず適用されます。ただし出産手当金は健康保険の被保険者であることが条件です。週の労働時間が短く健康保険に加入していない場合は対象外となります。加入状況を事前に確認してください。
Q. 化学流産でも休暇を取れますか?
化学流産(hCG陽性後の早期流産)は産後休業の対象外です。身体的・精神的に就労不能な状態であれば、医師の診断に基づき傷病手当金を申請できます(健康保険加入者)。主治医に就労可否を相談した上で手続きを進めてください。
Q. 出産育児一時金と出産手当金の違いは何ですか?
出産育児一時金は出産・流産・死産に伴う医療費補助として一括支給される給付(50万円)です。出産手当金は産後休業中の所得補償として「標準報酬日額の3分の2×休業日数」が支給されます。妊娠12週以降の流産・死産では両方を申請できます。
Q. 退職後に流産した場合、給付金は受け取れますか?
退職前に1年以上継続して健康保険の被保険者だった場合、退職後も継続給付を受けられる可能性があります。ただし退職日が産後休業中であることが条件で、任意継続被保険者は対象外です。退職前に必ず健康保険組合・協会けんぽに確認してください。
Q. 流産に関わる医療費は医療費控除の対象ですか?
はい、対象です。診察料・処置費用・入院費・手術費などは医療費控除として確定申告で控除できます。年間の医療費合計が10万円(または所得の5%)を超えた場合に適用されます。領収書と公共交通機関の実費(交通費も対象)を保管しておいてください。
まとめ
流産後の権利は妊娠週数で大きく分かれます。妊娠12週以降であれば産後休業(最長8週間)・出産手当金・出産育児一時金の3つが申請可能です。12週未満の場合は産後休業の対象外ですが、就労不能であれば傷病手当金を活用できます。
まず確認すべきは①流産時の妊娠週数、②健康保険の加入状況、③主治医への就労不能証明書の依頼——この3点が明らかになれば申請書類の準備に進めます。心身の回復に集中するためにも、制度を正しく活用してください。
不明点は都道府県労働局の雇用均等室(0120-794-713)または健康保険組合・協会けんぽに相談してください。
次のステップへ
申請を始める前に、主治医への相談が最初の一歩です。「休養のための診断書を作成してほしい」と伝えるだけで、手続きがスムーズに進みます。体と心が回復するための休養は権利です。産婦人科への受診予約はオンラインでも可能ですので、まずは担当医に相談することをお勧めします。
参考文献・根拠法令
- 労働基準法第65条(昭和22年法律第49号)— 産前産後休業に関する規定
- 健康保険法第102条(大正11年法律第70号)— 出産手当金に関する規定
- 健康保険法第99条 — 傷病手当金に関する規定
- 男女雇用機会均等法第9条 — 婚姻・妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止
- 厚生労働省「出産手当金について」(令和4年度改正対応版)
- 厚生労働省「妊娠・出産・育児期の就労継続支援ガイドブック」2023年版
- 日本産科婦人科学会「流産・死産の定義と周産期統計」2022年
- 国立成育医療研究センター「妊娠と社会制度」患者向け情報提供資料 2023年
本記事は医療・法律情報の提供を目的としており、個別の法的・医療的判断の代わりとなるものではありません。具体的な申請手続きや症状に関しては、健康保険組合・労働局・担当医師にご相談ください。最終更新日:2026年04月28日
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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の治療法を推奨するものではありません。症状や治療については、必ず担当医にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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