
妊娠中期の流産予防|後期流産を防ぐために
妊娠中期の流産(後期流産)は妊娠12〜22週未満に起こり、全妊娠の約1〜2%に発生するとされています。初期流産と異なり、頸管無力症や感染症など予防・管理が可能な原因が多いことが特徴です。この記事では、産婦人科の診療ガイドラインに基づき、後期流産の原因・予防策・危険サインを整理しました。「前回の流産が頭から離れない」という方にも、具体的にできることをお伝えします。
この記事のポイント
- 後期流産(妊娠12〜22週未満)は頸管無力症・感染症・子宮形態異常が主な原因とされている
- 頸管長の定期チェックや頸管縫縮術など、医療的に予防できる手段がある
- 出血・破水・規則的な腹痛は「すぐ受診すべき危険サイン」として覚えておきたい
- 前回流産歴がある場合は、早期からハイリスク管理を受けることが推奨されている
後期流産とは?定義と発生頻度
後期流産とは、妊娠12週0日〜21週6日に起こる流産のことです。初期流産(12週未満)に比べて頻度は低いものの、母体への身体的・精神的な負担が大きいとされています。
日本産科婦人科学会の定義では、妊娠22週未満の妊娠の終了を「流産」と分類しています。このうち12週以降を「後期流産」と呼びます。
分類 | 時期 | 発生頻度(目安) |
|---|---|---|
初期流産 | 妊娠12週未満 | 全妊娠の約10〜15% |
後期流産 | 妊娠12〜22週未満 | 全妊娠の約1〜2% |
初期流産は胎児の染色体異常が原因の大半を占めますが、後期流産は母体側の要因が関与するケースが多く、適切な管理で予防できる可能性があるとされています。
後期流産の主な原因
後期流産の原因は、頸管無力症・子宮内感染・子宮形態異常の3つが代表的です。原因を知ることが、予防の第一歩になります。
頸管無力症(子宮頸管無力症)
子宮の出口(頸管)が、陣痛を伴わずに自然に開いてしまう状態です。後期流産の原因として最も多いとされています。痛みや出血がないまま進行することがあるため、定期的な超音波検査での発見が重要です。
子宮内感染(絨毛膜羊膜炎など)
細菌性腟症などの感染が子宮内に波及し、炎症を引き起こすことがあります。感染による炎症は子宮収縮や前期破水を誘発し、流産につながる場合があるとされています。
子宮形態異常
中隔子宮・双角子宮・単角子宮などの先天的な子宮奇形は、胎児の発育スペースが制限されたり、血流が不十分になることで流産リスクを高める可能性があります。
その他の原因
- 抗リン脂質抗体症候群:血栓が胎盤の血流を阻害するとされている
- 子宮筋腫:位置や大きさによって着床・発育に影響する場合がある
- 血栓性素因:遺伝的な血液凝固異常が関与することがある
医療的な予防策と管理方法
後期流産の予防には、頸管長の定期モニタリング・頸管縫縮術・プロゲステロン投与の3つが代表的な医療手段です。いずれも産婦人科医の判断のもとで行われます。
頸管長の超音波チェック
経腟超音波で子宮頸管の長さを測定します。正常は約35〜40mmとされており、25mm未満に短縮すると早産・後期流産のリスクが上昇するという報告があります。妊娠16〜24週の間に定期的に測定することが推奨されています。
頸管縫縮術(シロッカー法・マクドナルド法)
頸管無力症と診断された場合や、前回の後期流産歴がある場合に検討される手術です。子宮頸管を糸で縫い縮めることで、頸管が開くのを物理的に防ぎます。
術式 | 特徴 | 実施時期の目安 |
|---|---|---|
シロッカー法 | 頸管の内側(内子宮口付近)を縫縮。抜糸には再手術が必要な場合がある | 妊娠12〜14週頃 |
マクドナルド法 | 頸管の外側を巾着縫い。外来で抜糸可能 | 妊娠12〜16週頃 |
どちらの術式が適しているかは、頸管の状態や流産歴によって医師が判断します。
プロゲステロン(黄体ホルモン)投与
プロゲステロンの腟錠投与は、頸管長が短い妊婦さんの早産・後期流産リスクを低減させる可能性があるとする研究が報告されています。子宮収縮を抑え、頸管の成熟を遅らせる作用があるとされています。担当医と相談のうえで使用が検討されます。
日常生活で気をつけたいこと
医療的管理に加えて、日常生活の中でも後期流産のリスクを下げる行動があります。完璧を目指す必要はありませんが、できる範囲で意識してみてください。
- 過度な運動・重い物の持ち上げを避ける:腹圧がかかる動作は頸管への負荷になりうる
- 感染予防を心がける:細菌性腟症の早期治療、性感染症の予防が重要とされている
- 十分な休息をとる:疲労やストレスは子宮収縮を誘発する可能性がある
- 定期健診を欠かさない:頸管長の変化や感染の兆候を早期に発見できる
- 禁煙:喫煙は胎盤の血流低下や前期破水のリスク因子とされている
お腹の張りが頻繁にある場合は、自己判断で我慢せず、早めにかかりつけ医に相談することが大切です。
すぐに受診すべき危険サイン
出血・破水・規則的な下腹部痛の3つは、後期流産の兆候として見逃してはいけないサインです。いずれか一つでも当てはまる場合は、すぐにかかりつけの産婦人科に連絡してください。
危険サイン | 具体的な症状 | 緊急度 |
|---|---|---|
性器出血 | 鮮紅色の出血、量が増えていく出血 | すぐに受診 |
破水(前期破水) | 水っぽいおりものが止まらない、下着がびしょ濡れになる | すぐに受診 |
規則的な下腹部痛 | 10〜15分間隔で繰り返す痛み、腰痛を伴う | すぐに受診 |
強い腹部の張り | 安静にしても治まらない持続的な張り | 早めに相談 |
発熱 | 38度以上の発熱(子宮内感染の可能性) | 当日中に受診 |
「大したことないかも」と思っても、連絡をためらう必要はありません。産婦人科の医療者は、こうした連絡に慣れています。気になったら相談する、それが一番の予防です。
前回の流産歴がある場合の管理
後期流産の既往がある方は、次の妊娠で再発リスクが高まるとされており、早期からのハイリスク管理が推奨されています。一人で不安を抱え込まず、妊娠がわかった時点で医師に前回の経緯を伝えてください。
妊娠前にできること
- 前回の流産原因の精査(頸管無力症・子宮奇形・抗リン脂質抗体症候群などの検査)
- 子宮形態異常がある場合は、手術的治療の適応について相談
- 不育症専門外来のある施設への紹介を依頼
妊娠後の管理計画
- 妊娠初期:前回の流産歴を共有し、管理計画を立てる
- 妊娠12〜14週頃:予防的頸管縫縮術の実施を検討
- 妊娠16〜24週:1〜2週間ごとの頸管長測定を開始
- 頸管短縮が認められた場合:プロゲステロン投与や安静管理の追加
2回以上の後期流産・早産歴がある場合は、「反復流産(不育症)」として専門的な検査・治療の対象になります。日本産科婦人科学会や日本生殖医学会のガイドラインに基づいた管理を受けることが勧められています。
後期流産の心理的ケア
後期流産は身体だけでなく心にも大きな影響を与えます。悲しみや自責感を抱くのは自然な反応であり、決して「弱い」ということではありません。
妊娠中期になると胎動を感じ始める時期でもあり、喪失感はより深くなりがちです。パートナーや家族との間で悲しみの感じ方が異なることもあります。
- 医療機関の相談窓口:多くの周産期センターにはグリーフケアの専門スタッフがいる
- 自助グループ・ピアサポート:同じ経験をした方との対話が助けになることがある
- 心療内科・カウンセリング:気持ちの落ち込みが2週間以上続く場合は専門家への相談を検討
「次の妊娠はいつから」という焦りが出ることもありますが、身体と心の回復を優先し、担当医と相談してタイミングを決めることが大切です。
よくある質問(FAQ)
Q. 後期流産は予防できますか?
すべてを防ぐことは難しいですが、頸管無力症や感染症が原因の場合は、頸管縫縮術や早期の感染治療で予防できる可能性があるとされています。定期的な頸管長チェックが早期発見につながります。
Q. 頸管長が短いと言われました。必ず流産しますか?
頸管長が短いからといって必ず流産するわけではありません。プロゲステロン投与や安静管理、必要に応じた頸管縫縮術で経過を管理できるケースが多いとされています。担当医の指示に沿って経過をみてください。
Q. 頸管縫縮術にリスクはありますか?
前期破水や感染、子宮収縮の誘発などのリスクが報告されています。ただし、後期流産の既往がある場合はメリットがリスクを上回ると判断されることが多いとされています。手術前に医師から十分な説明を受けてください。
Q. 妊娠中の仕事は続けてよいですか?
一般的な事務作業であれば継続可能な場合が多いとされています。ただし、長時間の立ち仕事や重労働、強いストレスがかかる環境は、担当医と相談のうえで調整することが推奨されます。母性健康管理指導事項連絡カードの活用も検討してみてください。
Q. 流産後、次の妊娠まではどのくらい空けるべきですか?
WHOの推奨では流産後少なくとも6か月の間隔を空けることが望ましいとされていますが、身体の回復状況によって個人差があります。担当医と相談して、身体的にも心理的にも準備が整ってから次の妊娠を検討することが勧められています。
Q. 後期流産の兆候がないか自分で確認する方法はありますか?
お腹の張り・下腹部痛・出血・水っぽいおりものの有無を日常的にチェックしてください。妊娠中期以降は胎動の変化にも注意が必要です。「いつもと違う」と感じたら、自己判断せずにかかりつけ医に相談してください。
Q. 安静にしていれば後期流産は防げますか?
安静だけで確実に防げるわけではありません。頸管無力症や感染症など、原因によっては医療的な介入が必要です。安静は補助的な手段として有効な場合がありますが、過度に自分を制限しすぎるとストレスの原因にもなりますので、医師と相談しながら適度な活動量を決めましょう。
まとめ
後期流産(妊娠12〜22週未満)は、頸管無力症・子宮内感染・子宮形態異常が主な原因として知られています。頸管長の定期チェック・頸管縫縮術・プロゲステロン投与など、医療的に予防できる手段が複数あります。
出血・破水・規則的な腹痛は緊急サインです。「おかしいな」と感じたら、迷わずかかりつけ医に連絡してください。前回の流産歴がある方は、妊娠がわかった段階で早めに医師に相談し、ハイリスク管理のもとで安心して妊娠期間を過ごすことが大切です。
次のステップへ
後期流産が心配な方、前回の流産歴がある方は、早めに産婦人科で相談することが最も効果的な予防策です。頸管長のチェックや管理計画について、次回の妊婦健診で担当医に聞いてみてください。不育症の検査や専門外来への紹介も、かかりつけ医を通じて相談できます。
※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。気になる症状がある場合は、必ずかかりつけの産婦人科医にご相談ください。
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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の治療法を推奨するものではありません。症状や治療については、必ず担当医にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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