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子宮内癒着(Asherman症候群)と不育症

2026/4/22

子宮内癒着(Asherman症候群)と不育症

子宮内癒着(Asherman症候群)と不育症|原因・診断・治療を専門解説

子宮内癒着(Asherman症候群)は、子宮内腔に癒着が形成されることで月経異常や不妊、反復流産を引き起こす疾患とされています。不育症の原因として見落とされやすい病態ですが、適切な診断と治療により妊娠・出産に至るケースも多く報告されています。本記事では、子宮内癒着の原因・症状・診断法から治療・術後管理・妊娠率データまで、エビデンスに基づいて専門的に解説します。

この記事の要約

疾患名

子宮内癒着(Asherman症候群)

主な原因

子宮内手術(流産手術・帝王切開など)後の子宮内膜損傷

代表的な症状

月経量減少・無月経・不妊・反復流産

診断方法

子宮鏡検査(ゴールドスタンダード)・HSG・MRI

治療法

子宮鏡下癒着剥離術+術後再癒着予防

術後妊娠率

軽症例で約60〜70%、重症例で約30〜40%と報告

子宮内癒着(Asherman症候群)とは

子宮内癒着とは、子宮内膜が損傷を受けた後に子宮腔内で組織同士が癒着(くっつく)する病態です。1948年にイスラエルの産婦人科医Joseph Ashermanが報告したことから「Asherman症候群」とも呼ばれています。

癒着の範囲や程度はさまざまで、子宮腔の一部に限局する軽度なものから、子宮腔全体が閉塞する重度なものまで存在します。不育症や不妊症の精査において、子宮因子として重要な鑑別疾患の一つに位置づけられています。

  • 子宮内膜の基底層にまで及ぶ損傷が癒着形成の主因とされている
  • 癒着組織は線維性(膜様)から筋性(緻密)まで多様である
  • 罹患率は子宮内操作を受けた女性の約20%前後と推定されている

子宮内癒着の原因とリスク因子

子宮内癒着の最も多い原因は、妊娠に関連した子宮内手術とされています。特に流産後や分娩後の子宮内容除去術(D&C)が高リスクとして知られています。

子宮内癒着の主な原因とリスク

原因

癒着発生率の目安

備考

流産後の子宮内容除去術

約20〜30%

反復手術で上昇

分娩後の子宮内容除去術

約25%

産褥期は特にリスク高

帝王切開

報告により異なる

切開部位の癒着

子宮筋腫核出術

約30〜50%

粘膜下筋腫の手術後

子宮内膜ポリープ切除術

比較的低リスク

広範囲切除時に注意

子宮内膜炎(結核性など)

地域差あり

感染症が誘因となる

複数回の子宮内操作を受けた場合、癒着発生リスクは累積的に上昇すると報告されています。また、産褥期(分娩後2〜4週間以内)の子宮内操作は、子宮内膜が脆弱な状態であるため、特に癒着が形成されやすいと考えられています。

子宮内癒着の症状|不育症との関連

子宮内癒着の症状は癒着の程度や部位によって大きく異なります。無症状で偶然発見されるケースもある一方、深刻な月経異常や不妊につながる場合もあるとされています。

  1. 月経量減少(過少月経):子宮腔の狭小化により経血排出量が減少する
  2. 無月経:重度の癒着で子宮腔が完全閉塞した場合に生じる
  3. 月経困難症:経血の排出障害により下腹部痛が出現することがある
  4. 不妊:受精卵の着床障害や子宮内膜の機能不全が原因と考えられている
  5. 反復流産・不育症:着床部位の血流不全や内膜菲薄化により妊娠維持が困難になるとされる

不育症との関連では、子宮内癒着があると胎盤形成が不十分になり、初期流産や後期流産のリスクが上昇する可能性が指摘されています。反復流産の精査において子宮形態異常のスクリーニングは重要な検査項目とされています。

診断方法と重症度分類

子宮内癒着の診断にはいくつかの画像検査が用いられますが、子宮鏡検査がゴールドスタンダード(確定診断)とされています。診断と同時に治療を行える点も子宮鏡検査の利点です。

主な診断方法の比較

検査法

特徴

感度

子宮鏡検査

直視下で癒着の性状・範囲を確認可能。確定診断

最も高い

子宮卵管造影(HSG)

造影剤の充填欠損で癒着を推定。スクリーニングに有用

中程度

超音波ソノヒステログラフィー

生理食塩水注入下で子宮腔内を観察

中〜高

MRI

子宮筋層の評価も可能。子宮鏡が困難な場合の補助

中程度

重症度分類

子宮内癒着の重症度は複数の分類法が提唱されていますが、欧州産科婦人科内視鏡学会(ESGE)分類や米国不妊学会(AFS)分類が広く使用されています。

AFS(米国不妊学会)分類の概要

グレード

癒着の範囲

癒着の性状

月経パターン

軽症(I)

子宮腔の1/3未満

膜様(薄い)

正常月経

中等症(II)

子宮腔の1/3〜2/3

膜様+線維性

過少月経

重症(III)

子宮腔の2/3以上

緻密・筋性

無月経

重症度は治療の難易度や術後妊娠率に大きく影響するため、正確な評価が治療方針の決定において重要とされています。

治療法|子宮鏡下癒着剥離術

子宮内癒着の治療は、子宮鏡下癒着剥離術(hysteroscopic adhesiolysis)が第一選択とされています。子宮鏡で直接癒着を観察しながら、はさみや電気メス、レーザーなどで癒着を剥離・切除します。

  • 手術の目的:子宮腔の正常な形態と容積を回復させること
  • 手術時間:通常30分〜1時間程度
  • 入院期間:日帰りまたは1泊程度の短期入院が一般的
  • 麻酔:全身麻酔または静脈内鎮静が多い

重症例では1回の手術で完全に癒着を剥離できないことがあり、複数回の手術が必要となる場合も報告されています。また、超音波ガイド下や腹腔鏡併用下で行うことで子宮穿孔のリスクを低減できるとされています。

治療時の注意点

癒着剥離術では、正常な子宮内膜を温存しながら癒着のみを切除する繊細な操作が求められます。過度な切除は新たな内膜損傷を招くおそれがあるため、経験豊富な術者による手術が推奨されています。

術後管理と再癒着予防

子宮内癒着は治療後の再癒着率が高いことが知られており、術後の再癒着予防策が治療成功の鍵とされています。

主な再癒着予防法

方法

内容

目的

子宮内バルーン留置

術後にバルーンカテーテルを子宮腔内に留置(5〜14日間)

癒着面同士の接触を物理的に防止

IUD(子宮内避妊器具)留置

バルーンの代替として使用される場合がある

子宮腔の空間維持

エストロゲン療法

術後にエストロゲン製剤を投与(通常2〜3周期)

子宮内膜の再生・増殖を促進

癒着防止バリア材

ヒアルロン酸ゲルなどを子宮腔内に注入

癒着面の物理的バリア

術後子宮鏡検査(セカンドルック)

術後1〜3か月後に再検査

再癒着の早期発見・追加治療

複数の予防策を組み合わせることで再癒着率を低下させられる可能性が報告されています。術後のセカンドルック子宮鏡検査は再癒着の有無を確認するうえで有用とされ、多くの施設で推奨されています。

治療後の妊娠率と予後

子宮内癒着の治療後の妊娠率は、癒着の重症度や治療の完遂度によって大きく異なると報告されています。

重症度別の治療後妊娠率(文献報告の目安)

重症度

術後妊娠率

生児獲得率

軽症(I)

約60〜70%

約50〜60%

中等症(II)

約40〜60%

約30〜50%

重症(III)

約30〜40%

約20〜30%

  • 軽症例では子宮鏡下癒着剥離術後に良好な妊娠率が期待できるとされている
  • 重症例でも適切な術後管理を行うことで妊娠・出産に至るケースが報告されている
  • 治療後の妊娠においては、前置胎盤や癒着胎盤のリスク上昇に注意が必要とされている

治療後に妊娠が成立した場合でも、ハイリスク妊娠として慎重な管理が推奨されています。胎盤異常や早産のリスクについて、担当医と十分に相談することが重要です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 子宮内癒着は自然に治ることはありますか?

子宮内癒着が自然に消失することは一般的にないとされています。癒着の程度にかかわらず、症状や妊娠希望がある場合は子宮鏡下での治療が推奨されています。

Q2. 流産手術の後、必ず子宮内癒着になりますか?

流産手術を受けた全ての方に癒着が生じるわけではありません。報告により差はありますが、流産手術後の癒着発生率は約20〜30%程度とされています。複数回の手術で発生率が上昇する傾向が指摘されています。

Q3. 子宮内癒着があっても体外受精で妊娠できますか?

癒着が残存したままでは体外受精を行っても着床障害により妊娠率が低下する可能性があるとされています。一般的には、まず癒着剥離術で子宮腔の形態を回復させてから体外受精に進むことが推奨されています。

Q4. 手術後、どのくらいで妊娠を試みてよいですか?

術後のエストロゲン療法やセカンドルック子宮鏡検査を経て、子宮内膜が十分に回復したことを確認してから妊娠を目指すことが一般的です。多くの場合、術後2〜3か月程度で妊活の再開が検討されるとされています。

Q5. 子宮内癒着の手術は痛みがありますか?

子宮鏡下癒着剥離術は通常、全身麻酔または静脈内鎮静下で行われるため、術中の痛みはほとんどないとされています。術後に軽度の下腹部痛や出血がみられることがありますが、多くは数日以内に軽快するとされています。

Q6. 再癒着した場合、再度手術は可能ですか?

再癒着に対しても子宮鏡下での再手術は可能とされています。ただし、繰り返し手術を行う場合、子宮内膜の菲薄化が進行する可能性があるため、治療方針について主治医と十分に相談することが重要です。

Q7. 子宮内癒着を予防する方法はありますか?

子宮内手術後の癒着予防として、子宮内バルーン留置やヒアルロン酸ゲルの注入、エストロゲン投与などが検討されることがあります。また近年は、流産の管理において手術を避け薬物療法を選択することで癒着リスクを低減できる可能性も報告されています。

まとめ

子宮内癒着(Asherman症候群)は、子宮内手術後に生じうる病態であり、不育症や不妊症の重要な原因の一つとされています。月経量の減少や反復流産がみられる場合には、子宮内癒着の可能性を考慮した精査が推奨されます。

  • 子宮鏡検査が確定診断のゴールドスタンダードとされている
  • 子宮鏡下癒着剥離術が第一選択の治療法である
  • 術後の再癒着予防(バルーン留置・ホルモン療法など)が治療成功の鍵
  • 軽症例では術後妊娠率60〜70%と良好な成績が報告されている
  • 重症例でも適切な治療と管理で妊娠・出産の可能性がある

子宮内癒着は早期発見・早期治療が予後を左右するとされています。気になる症状がある方は、子宮鏡検査に対応した医療機関への相談をご検討ください。

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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の治療法を推奨するものではありません。症状や治療については、必ず担当医にご相談ください。

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この記事を書いた人

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公開:2026/4/22更新:2026/4/28