
不育症の遺伝カウンセリングは、反復流産の原因に染色体構造異常(転座・逆位)や遺伝的背景が関与している場合に受ける専門的な相談です。「染色体異常と言われたが、次の妊娠はどうすれば?」「PGT-SRは選ぶべきか?」という疑問に、遺伝の専門家と一緒に答えを見つけていくプロセスを解説します。
この記事のポイント
- 不育症の遺伝カウンセリングは、転座・逆位などの染色体構造異常が見つかった後に受けることで、次の治療方針(自然妊娠継続 or PGT-SR)を夫婦で決定するための情報と心理的サポートを得られます
- 遺伝カウンセリングは医療行為であり、臨床遺伝専門医または認定遺伝カウンセラーが担当します。費用は施設によりますが自費5,000〜3万円程度が多いです
- カウンセリングで決定を「強制」されることはありません。夫婦の価値観・状況に合った選択を支援するための場です
遺伝カウンセリングを受けるタイミング
不育症における遺伝カウンセリングは、主に以下のタイミングで推奨されます。早期に受けることで、次の治療計画をより明確に立てることができます。
- 夫婦染色体検査で均衡型転座・逆位が見つかった場合(最も多いケース)
- 反復流産の原因が不明(説明不能不育症)で体外受精・PGT-SRを検討している場合
- 流産組織(POC検査)で染色体構造異常が見つかった場合
- 遺伝性疾患の家族歴がある・染色体異常の子どもを産んだことがある場合
遺伝カウンセリングで何が行われるか
遺伝カウンセリングは「専門家が答えを押しつける場」ではなく、夫婦が十分な情報を持って自律的に決定できるよう支援する非指示的(Non-directive)なアプローチが基本です。
カウンセリングの流れ
- 染色体異常の詳細説明:転座の種類・位置・流産リスクへの影響を個別に分析して説明
- 再発確率の計算:次の妊娠で不均衡型胚になる確率を、転座の種類に基づいて計算
- 治療選択肢の提示:自然妊娠継続・PGT-SR・養子縁組などの選択肢をメリット・デメリット含めて説明
- 心理的サポート:診断による不安・悲しみ・夫婦間の葛藤に対する心理的サポート
- 質疑応答:疑問・不安に丁寧に回答
事前に準備しておくこと
カウンセリングを最大限に活用するために、以下を事前に準備しておくと時間を有効に使えます。
- 夫婦の染色体検査結果(報告書)のコピー
- 流産の既往回数・妊娠週数の記録
- これまでの不育症検査結果(抗リン脂質抗体・凝固検査等)
- 聞きたいことをメモにまとめておく
- できれば夫婦2人で受診する(一人で受けた場合は後からパートナーに伝える必要がある)
カウンセリングで確認すべき質問リスト
以下の質問を準備しておくと、具体的な情報を得ることができます。
- 「私たちの転座で、正常・均衡型の胚が生まれる確率はどのくらいですか?」
- 「PGT-SRを実施した場合、移植できる胚が見つかる可能性はどのくらいですか?」
- 「自然妊娠を続けた場合、統計的にはいつ頃出産できると予測されますか?」
- 「PGT-SRの費用・保険適用の現状を教えてください」
- 「今後の妊娠を試みない選択もあり得ますか?」
PGT-SR(着床前遺伝子検査)と遺伝カウンセリングの関係
PGT-SRを実施するためには、実施前後に遺伝カウンセリングを受けることが日本産科婦人科学会の指針で求められています。カウンセリングなしにPGT-SRは実施されません。
- PGT-SR実施前:検査の目的・方法・限界・倫理的側面の説明と理解の確認
- PGT-SR実施後:検査結果(移植可能胚の有無)への心理的サポート、今後の方針決定
- 移植できる胚がなかった場合:次の採卵サイクルの検討・他の選択肢(自然妊娠継続・養子縁組等)への心理的サポート
施設の探し方と費用
遺伝カウンセリングは、臨床遺伝専門医または認定遺伝カウンセラーが担当します。不育症専門外来に併設されていることが多いです。
施設の探し方
- 日本遺伝カウンセリング学会(JSGC)認定施設一覧を検索
- 不育症専門外来が設置された大学病院・総合病院(全国約60施設)
- PGT-SR実施施設では遺伝カウンセリングが必須のため施設に確認
費用目安
- 初回遺伝カウンセリング:5,000〜3万円程度(自費が多い。施設により異なる)
- 継続カウンセリング(2回目以降):3,000〜1.5万円程度
- 保険適用の場合:一部の遺伝カウンセリングは保険点数がある(施設により保険請求できる場合と自費のみの場合がある)
心理的な側面:カウンセリングで「決めなければいけない」プレッシャー
遺伝カウンセリング後、PGT-SRの選択を巡って夫婦間で意見が分かれたり、「どの選択が正しいのかわからない」という混乱が生じることがあります。これは非常によくある反応です。
- カウンセリング後すぐに決定する必要はない。時間をかけて考えていい
- 夫婦の価値観・年齢・経済的な状況によって「正解」は異なる
- 2回目のカウンセリングで追加の質問や不安を解消することもできる
- 心理的なサポートが必要な場合は、不妊専門のカウンセラー(臨床心理士・公認心理師)への相談も選択肢
よくある質問(FAQ)
Q1. 遺伝カウンセリングは予約なしで受けられますか?
多くの施設では予約制です。特に大学病院や不育症専門外来は予約が取りにくい場合があるため、早めに問い合わせることをお勧めします。
Q2. 転座が見つかった場合、遺伝カウンセリングは必ず受けるべきですか?
強制ではありませんが、強く推奨します。転座の種類・位置によってリスクが大きく異なり、担当産婦人科医だけでは個別のリスク計算が難しい場合があります。
Q3. カウンセリングで「子どもを産むのをやめろ」と言われることはありますか?
ありません。遺伝カウンセリングは非指示的アプローチが原則であり、専門家が特定の選択を強制したり推奨する場ではありません。夫婦が自分たちで決定できるよう情報提供を行う場です。
Q4. 自然妊娠を選んだ場合、遺伝カウンセリングは不要になりますか?
一度受けておくことで、自然妊娠中の不安の整理・次の妊娠時の着床前検査の再検討など、継続的なサポートを受けやすくなります。
まとめ
不育症の遺伝カウンセリングは、染色体構造異常が見つかった際に夫婦が正確な情報と心理的サポートを受けながら、次の治療方針を決定するための重要なプロセスです。
- 均衡型転座・逆位が判明したら遺伝カウンセリングへの受診を積極的に検討する
- カウンセリング前に染色体検査報告書・流産歴・聞きたい質問を準備する
- 決定を急がず、夫婦で十分に話し合い、必要に応じて2回以上カウンセリングを受ける
次のステップへ
染色体異常を告げられた後の不安は当然です。まず日本遺伝カウンセリング学会(JSGC)認定施設または不育症専門外来に受診の予約を入れることを第一歩としてください。一人で抱え込まないことが大切です。
【免責事項】本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療を行うものではありません。症状や治療方針については必ず担当医にご相談ください。掲載情報は2025年5月時点のものです。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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