
不妊治療で高額療養費を申請しようとしたとき、「実際にいくら戻ってくるのかわからない」という声は多く聞かれます。計算式が複雑に見えますが、自分の所得区分さえわかれば計算できます。この記事では2026年5月2日時点の情報をもとに、区分別の計算式とケーススタディで実際の払い戻し額を解説します。
この記事のまとめ
- 高額療養費の自己負担限度額は「所得区分」によって5段階に設定されている
- 最もシェアの高い区分ウ(標準報酬月額28〜50万円)では「8万100円+(医療費−26万7000円)×1%」が限度額
- 払い戻し額=実際に支払った3割負担額−限度額(マイナスになる月は払い戻しなし)
- 複数の医療機関に同月かかった場合は2万1000円以上の自己負担分を合算して申請できる
高額療養費制度の基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
制度名 | 高額療養費制度 |
根拠法令 | 健康保険法第115条 |
対象 | 公的医療保険(健保・国保)の被保険者・被扶養者 |
申請先 | 加入している保険者(協会けんぽ・健保組合・市区町村等) |
支給時期 | 申請から約2〜3か月後(診療月の翌月1日から2年以内に申請必要) |
事前対応 | 限度額適用認定証を取得すると窓口払いを上限額に抑えられる |
所得区分と計算式
自己負担限度額は標準報酬月額(給与から算定)または所得によって5区分に分かれます。まず自分の区分を確認し、計算式にあてはめます。
区分 | 標準報酬月額(協会けんぽ) | 限度額の計算式 |
|---|---|---|
ア | 83万円以上 | 25万2600円+(総医療費−84万2000円)×1% |
イ | 53〜79万円 | 16万7400円+(総医療費−55万8000円)×1% |
ウ | 28〜50万円 | 8万100円+(総医療費−26万7000円)×1% |
エ | 26万円以下 | 5万7600円(定額) |
オ | 住民税非課税 | 3万5400円(定額) |
不妊治療のケーススタディ
【ケース1】標準報酬月額36万円(区分ウ)・採卵月の保険診療費が30万円の場合
- 3割負担額:30万円×30%=9万円
- 限度額:8万100円+(30万円−26万7000円)×1%=8万100円+3000×1%=8万100円+330円=8万430円(小数点切り捨て)
- 払い戻し額:9万円−8万430円=9570円
【ケース2】同じく区分ウ・採卵月の保険診療費が40万円の場合
- 3割負担額:40万円×30%=12万円
- 限度額:8万100円+(40万円−26万7000円)×1%=8万100円+1330円=8万1430円
- 払い戻し額:12万円−8万1430円=3万8570円
【ケース3】区分ウ・不妊治療クリニック(保険診療20万円)と婦人科別病院(保険診療5万円)を同月受診
- クリニック:20万円×30%=6万円(2万1000円以上なので合算対象)
- 別病院:5万円×30%=1万5000円(2万1000円未満なので合算対象外)
- 合算できる自己負担:6万円
- 限度額:8万100円+(20万円−26万7000円)×1%(マイナスになるため0円扱い)=8万100円
- 6万円は限度額の8万100円を下回るため、この月は払い戻しなし
合算申請の仕組み
- 同じ医療保険に加入する家族(被扶養者含む)の費用は合算できる
- 同一医療機関でも「入院」と「外来」は別カウント(ただし合算申請で一定額を超えると払い戻しあり)
- 合算する際の条件:1医療機関で1か月の自己負担が2万1000円以上(70歳未満)
- 複数の医療機関・薬局の明細をまとめて高額療養費支給申請書に記載して申請
申請の実務ステップ
- Step1: 受診した月の翌月以降、保険者から高額療養費の支給通知が届く場合がある(自動支給の保険者も)
- Step2: 通知がない場合は高額療養費支給申請書を保険者のウェブからダウンロード
- Step3: 医療機関の領収書・明細書を準備し、申請書に記入
- Step4: 保険者に提出(郵送またはオンライン申請)
- Step5: 申請から約2〜3か月で指定口座に振り込まれる
FAQ
Q1. 標準報酬月額はどこで確認できますか?
給与明細の健康保険料欄や、毎年9月に会社から渡される「標準報酬月額決定通知書」で確認できます。協会けんぽのマイページでも確認可能です。
Q2. 体外受精の自費部分(培養液・PGT等)は高額療養費の対象ですか?
保険診療として請求されている部分のみが対象です。自費・先進医療の費用は計算に含まれません。
Q3. 払い戻しまで2〜3か月かかるとのことですが、その間の立替が大変です。対策は?
限度額適用認定証を事前取得することで窓口での立替払いを最小化できます。マイナ保険証を使うと申請なしで自動適用も可能です。
Q4. 昨年の診療分を今年申請することはできますか?
診療月の翌月1日から2年以内であれば申請できます。2年を過ぎると時効で請求権が消滅するため早めに申請しましょう。
Q5. 夫の健保に扶養で入っている妻の不妊治療費用も合算できますか?
はい、同一の健康保険の被扶養者であれば妻の医療費も夫の保険で合算できます(2万1000円以上が合算条件)。
まとめ
高額療養費の計算は「所得区分の確認→計算式で限度額を算出→支払い額との差を確認」という3ステップで行えます。不妊治療では月ごとの医療費の変動が大きいため、採卵月など費用がかさむ月に絞って計算するだけでも還付の見通しが立てやすくなります。事前に限度額適用認定証を取得しておけば立替払いも不要です。領収書は必ず保管し、2年以内に忘れず申請しましょう。
【免責事項】本記事は2026年5月2日時点の公的情報をもとに作成した一般的な情報提供を目的としています。個別の計算・申請については加入している保険者にご確認ください。医療行為の選択・判断は必ず医師にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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