
不妊治療と仕事の両立は、当事者だけでなく企業側にとっても課題です。厚生労働省が設けた「不妊治療と仕事の両立支援等助成金」は、従業員が不妊治療を続けながら働ける環境を整えた事業主を対象とした制度です。この記事では、事業主が実際に申請できる助成金の種類・金額・要件を具体的に解説します。人事担当者が申請準備を進める際に必要な情報をまとめました。
この記事のポイント
- 不妊治療両立支援等助成金の2コースの内容と支給額
- 申請に必要な要件と準備すべき書類
- 助成金取得後に維持すべき制度と注意点
不妊治療両立支援等助成金とはどんな制度か
「不妊治療と仕事の両立支援等助成金」は、雇用保険適用事業主が、不妊治療を受ける労働者のために①休暇・勤務制度の整備と②実際の利用を促進した場合に支給される助成金です。厚生労働省の「両立支援等助成金」の一メニューとして位置付けられており、支給は雇用環境・均等部(各都道府県労働局)が担当します。
この助成金は、中小企業・大企業ともに申請可能ですが、支給額は中小企業に手厚く設定されています。事業主が先に制度を整備し、その後実際に利用実績が出た段階で申請する「後払い方式」です。
助成金の2コースと支給額
不妊治療両立支援等助成金には「環境整備コース」と「休暇取得等支援コース」の2つがあります。
コース | 中小企業 | 大企業 | 主な要件 |
|---|---|---|---|
環境整備コース(制度整備助成) | 28万5,000円 | 19万円 | 不妊治療休暇等制度の就業規則への規定 |
環境整備コース(制度利用助成) | 28万5,000円(1人目) | 19万円(1人目) | 制度を実際に利用した労働者が出たこと |
休暇取得等支援コース | 28万5,000円 | 19万円 | 不妊治療のための連続5日以上の休暇取得 |
環境整備コースは制度整備助成と制度利用助成の2段階で申請します。まず就業規則等を整備して制度整備助成を申請し、その後実際に利用者が出た段階で制度利用助成を申請します。支給額は2024年度時点の情報であり、年度ごとに変更される可能性があるため、申請前に最新情報を確認してください。
環境整備コースの申請要件
環境整備コース(制度整備助成)を申請するには、以下の要件を満たす必要があります。
まず対象となる制度を就業規則等に規定することが必要です。対象となる制度は①不妊治療のための休暇制度(年5日以上)、②半日・時間単位の年次有給休暇、③フレックスタイム制度、④時差出勤制度、⑤テレワーク制度の5つのうち、少なくとも2つ以上です。
次に、労働者が制度を実際に利用できる状態にあること(就業規則の周知・相談窓口の設置等)が求められます。また、過去に同助成金で制度整備助成を受けたことがないことも条件です。
休暇取得等支援コースの申請要件
休暇取得等支援コースは、環境整備コースとは別立てで申請できます。主な要件は以下のとおりです。
- 不妊治療のために連続5日以上の休暇を取得した労働者がいること
- 休暇取得日数が20日以上(最大40日まで算定)であること
- 休暇取得後も引き続き雇用されていること
- 休暇取得前に不妊治療を受けることを事業主に伝えていること
「不妊治療のための休暇」には、年次有給休暇・特別休暇・欠勤などが含まれます。ただし欠勤の場合は無給扱いとなるため、有給休暇として整備した方が労働者の負担が少なくなります。
申請の流れと必要書類
申請手続きの流れを段階別に整理します。
第1段階として、制度を整備する前に「計画届」を都道府県労働局へ提出します。計画届の認定後に制度を整備し、就業規則等を改定します。第2段階として、制度整備後2ヶ月以内に「制度整備助成」の支給申請を行います。第3段階として、制度利用者が出た後(利用終了から2ヶ月以内)に「制度利用助成」の支給申請を行います。
主な必要書類として、計画届(様式第1号)、就業規則(改定前後の比較がわかるもの)、労働者名簿、賃金台帳、出勤簿・タイムカード、不妊治療を受けていることを証明する書類(医療機関の証明書等)などが必要です。書類は労働局のウェブサイトからダウンロードできます。
申請時の注意点と失敗しやすいポイント
この助成金の申請で躓きやすいポイントを事前に知っておくことで、審査通過率が上がります。
最も多い失敗は「計画届なしに制度整備してしまう」ことです。計画届の認定前に就業規則を改定しても助成金の対象になりません。順序が厳格に決まっているため、まず計画届を出すことが最初のステップです。
次に多いのは「制度の実態が伴っていない」ケースです。就業規則に規定しても、実際に利用できない状況(上司が認めない等)であれば要件を満たせません。制度利用助成の段階で実際の利用実績が必要なため、職場環境の整備も並行して進める必要があります。
また、申請期限の厳守も重要です。制度整備後・利用終了後それぞれ2ヶ月以内という期限があり、これを過ぎると申請できなくなります。
助成金以外の事業主向け支援制度
不妊治療両立支援等助成金と組み合わせて活用できる制度もあります。
「くるみん認定」は子育てサポート企業として認定される制度で、不妊治療支援の取り組みもプラス評価されます。認定取得後は税制優遇(税額控除)が受けられる場合があります。また「えるぼし認定」(女性活躍推進)も、不妊治療支援の整備が評価される制度です。
東京都など一部の自治体では独自の助成金制度を設けています。国の助成金との重複申請が可能な場合もあるため、所在地の自治体窓口に確認することをお勧めします。
FAQ
Q1. 個人事業主も申請できますか?
雇用保険の適用事業主であれば申請可能です。ただし従業員がいない一人事業主は対象外です。従業員を雇用して雇用保険に加入していることが前提条件です。
Q2. 助成金の申請は社会保険労務士に依頼できますか?
申請書類の作成・提出を社会保険労務士に委任することができます。初めての申請で書類が複雑な場合は、専門家のサポートを受けることで申請ミスを防げます。費用は事務所によって異なりますが、着手金+成果報酬型が多いです。
Q3. 助成金を受け取った後に制度を廃止できますか?
支給決定後に制度を廃止した場合、返還を求められる可能性があります。助成金の目的は継続的な両立支援環境の整備であるため、制度の維持が前提とされています。
Q4. 不妊治療の内容を会社に開示しなければなりませんか?
事業主への開示義務があるのは「不妊治療を受けていること」の事実のみで、治療の詳細内容を説明する義務はありません。医療機関の証明書は「不妊治療のための通院・入院である」ことの証明で足ります。
Q5. 支給額は年度ごとに変わりますか?
変わる場合があります。毎年度、厚生労働省の予算・政策方針によって支給額や要件が改定されることがあります。申請前に必ず最新の要領を厚生労働省または労働局で確認してください。
まとめ——制度整備から申請まで順序を守ることが最重要
不妊治療両立支援等助成金は、従業員の働きやすさを高めながら事業主が補助を受けられる制度です。環境整備コース(制度整備+利用)と休暇取得等支援コースの2コースがあり、中小企業は最大で複数回の支給を受けられます。
申請で最も重要なのは「計画届→制度整備→利用」という順序を守ることです。この順序を間違えると助成金の対象から外れます。申請書類の準備には時間がかかるため、不妊治療支援の整備を検討し始めた段階で、まず都道府県労働局か社会保険労務士に相談することをお勧めします。
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【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の申請結果を保証するものではありません。助成金の要件・支給額は変更される場合があります。申請前に必ず所管の労働局または厚生労働省の最新情報をご確認ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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