
不妊治療にかかる費用の総額は、治療法や回数・クリニックによって大きく異なります。厚生労働省のデータや各種調査をもとに「実際のところ、いくらかかるのか」を詳しく解説します。保険適用拡大後の最新情報も含め、家計計画の参考にしてください。
不妊治療を始める前に費用の全体像を把握しておくことで、資金計画が立てやすくなり、治療中断リスクを下げることができます。助成制度の活用法も合わせてご確認ください。
- 不妊治療の総額平均と内訳(2022年保険適用後の最新データ)
- ケース別・総額シミュレーション(タイミング法〜体外受精)
- 費用を抑える助成金・保険・高額療養費制度の活用法
不妊治療の総額平均はいくら?結論から
2022年の保険適用拡大後、不妊治療の総額は以下が目安です。タイミング法のみで妊娠できた場合は10万円未満で済む一方、体外受精・顕微授精を複数回実施すると100万円以上になるケースも少なくありません。
治療ステージ | 1回あたりの費用(保険適用) | 複数回の総額目安 |
|---|---|---|
タイミング法 | 数千円〜1万円程度 | 3〜6ヶ月で3〜10万円 |
人工授精(AIH) | 3,000〜1万円程度 | 3〜6回で2〜6万円 |
体外受精(IVF) | 採卵+移植で5〜15万円 | 3回で15〜50万円 |
顕微授精(ICSI) | 採卵+移植で7〜18万円 | 3回で20〜60万円 |
※保険適用は女性43歳未満・通算6回(40歳以上は3回)が上限。それ以降は全額自費になります。
保険適用前と後:費用比較の実態
2022年4月の保険適用拡大により、体外受精の自己負担は適用前の「30〜50万円/回」から「5〜15万円/回(3割負担)」へと大幅に下がりました。
保険適用が受けられる主な治療
- タイミング法(排卵誘発剤を使用する場合も含む)
- 人工授精(AIH)
- 体外受精・胚移植(IVF-ET)
- 顕微授精(ICSI)
- 凍結融解胚移植
- 着床前遺伝子検査(PGT-A)※一部条件あり
保険適用外(自費)になる主なもの
- 先進医療(TESE、子宮内膜スクラッチ等)
- 女性43歳以上の体外受精・顕微授精
- 規定回数を超えた治療
- 精子・卵子凍結保存料
ケース別:不妊治療の総額シミュレーション
実際の治療経過をモデル化した総額シミュレーションです。どのステージで妊娠できるかによって最終的な費用は大きく変わります。
ケース | 治療内容 | 期間 | 概算総額 |
|---|---|---|---|
早期妊娠(タイミング法のみ) | タイミング指導+排卵誘発 | 3〜6ヶ月 | 5〜15万円 |
人工授精で妊娠 | タイミング法3回+AIH3回 | 6〜12ヶ月 | 15〜30万円 |
体外受精で妊娠 | AIH3回+IVF2回 | 1〜2年 | 40〜70万円 |
複数回体外受精 | AIH3回+IVF5回以上 | 2〜4年 | 100〜200万円 |
日本産科婦人科学会の調査(2022年)によると、体外受精を受けたカップルの約3割は累計100万円以上を費やしているとされています。
高額療養費制度で取り戻せる金額
保険適用の不妊治療費が1ヶ月の上限額を超えた場合、高額療養費制度で超過分が払い戻されます。所得区分によって異なりますが、年収370〜770万円の一般世帯の場合、1ヶ月の上限は約8万円です。
高額療養費の月額上限目安(一般世帯)
- 年収約370万円未満:57,600円
- 年収約370〜770万円:80,100円+(医療費-267,000円)×1%
- 年収約770〜1,160万円:167,400円+(医療費-558,000円)×1%
採卵・移植が同じ月に重なるケースでは1ヶ月の費用が10〜20万円になることもあるため、高額療養費を申請することで実質的な自己負担を大幅に圧縮できます。
特定不妊治療費助成制度(自治体)の活用
保険適用外の治療については、お住まいの都道府県・市区町村の助成制度を活用できる場合があります。助成額・条件は自治体によって異なるため、治療開始前に必ず確認してください。
主な自治体助成制度の例
- 東京都:保険外の先進医療に対して最大30万円/年(条件あり)
- 大阪府・神奈川県等:市区町村との連携で追加助成あり
- 一部自治体:不妊検査費用の助成(5,000〜5万円程度)
厚生労働省が提供する「不妊治療特設サイト」では、全国の助成制度一覧を確認できます(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/funin/index.html)。
医療費控除で年間最大数十万円を節税
不妊治療費(交通費を含む)は医療費控除の対象です。年間の医療費(保険診療・自費ともに対象)が10万円を超えた部分について、所得税・住民税の控除が受けられます。
医療費控除の計算例
- 年間不妊治療費:80万円
- 控除対象額:80万円-10万円=70万円
- 所得税率20%の場合:70万円×20%=14万円の節税
確定申告時に領収書を保管しておくことが必須です。交通費はレシートが不要なため、日付・区間・金額をメモするだけで申告できます。
費用に関する注意点・見落としがちな追加コスト
クリニックが提示する「体外受精費用」はあくまで基本的な診療費であり、以下の追加費用が発生することがあります。事前に確認して予算を立てておくことをおすすめします。
- 凍結保存料(胚・精子):年間1〜5万円
- 排卵誘発剤の自己注射薬代:1周期3〜10万円(自費の場合)
- 検査費用(AMH・精子DNA断片化等):数千円〜2万円
- プレコンセプションケア(男性不妊外来等):5,000〜2万円
- 採卵キャンセル時のキャンセル料(クリニックによる)
よくある質問(FAQ)
Q1. 不妊治療の平均総額はいくらですか?
体外受精を実施したカップルの総額中央値は50〜100万円程度とされています。タイミング法のみで妊娠できた場合は10万円未満で済むケースも多く、治療のステージや回数によって大きく異なります。
Q2. 保険が適用されないケースはどんな場合ですか?
女性43歳以上の体外受精・顕微授精、規定回数を超えた治療(40歳以上は3回・40歳未満は6回)、先進医療(子宮内膜スクラッチ等)は保険適用外です。また、保険診療と自費診療を混在させる「混合診療」は原則禁止のため、保険外治療を追加する場合は全額自費になる可能性があります。
Q3. 高額療養費制度はどのように申請しますか?
加入している健康保険(協会けんぽ・組合健保・国保等)に「高額療養費支給申請書」を提出します。事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと窓口での支払いを上限額に抑えることができ、一時的な資金負担を軽減できます。
Q4. 共働きの場合、どちらの保険で申請すれば得ですか?
高額療養費は個人単位で計算されます。夫婦それぞれが別々に申請できるため、両者の医療費が高額な月は両方申請することで合計払い戻し額が増えます。「世帯合算」制度を利用すると、同一世帯内の医療費を合算して申請できる場合もあります。
Q5. 医療費控除と高額療養費制度は両方使えますか?
両方利用することは可能です。ただし、医療費控除の計算では高額療養費で払い戻された金額を差し引いた実際の自己負担額をベースに算出します。還付された分は二重控除にならないよう注意してください。
Q6. 不妊検査の費用は保険適用ですか?
一般的な不妊検査(ホルモン検査・精液検査・子宮卵管造影検査等)は保険適用です。AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査は2022年度から保険適用になりました。遺伝子検査や特殊な免疫検査は自費になる場合があります。
Q7. 治療費のローンや分割払いは利用できますか?
多くのクリニックでは医療ローンや分割払いに対応しています。ただし、ローン利用時は金利が発生するため、総支払額が増えます。自治体の助成金・高額療養費の払い戻しタイミングを考慮してキャッシュフローを計画することをおすすめします。
まとめ
不妊治療の総額は治療ステージや回数によって大きく異なり、タイミング法のみで10万円未満の場合から、体外受精を複数回実施して200万円以上になるケースまで幅があります。2022年の保険適用拡大で体外受精の自己負担は大幅に下がりましたが、保険適用の回数制限・年齢制限があるため、治療計画の段階で費用シミュレーションを行うことが重要です。高額療養費制度・自治体助成金・医療費控除を組み合わせることで、実質的な負担を軽減できます。
- 治療開始前に費用の全体像を把握し、貯蓄・保険・助成金を計画的に組み合わせる
- クリニックの費用明細(追加コスト含む)を事前に確認する
- 高額療養費の「限度額適用認定証」を事前に取得しておく
次のステップ:専門医への相談
費用や治療計画について不安がある場合は、治療を始める前にクリニックのカウンセリングを活用してください。多くのクリニックでは初回相談を無料または低価格で提供しています。費用面だけでなく、体の状態・年齢・希望する治療ゴールを総合的に確認した上で最適な治療プランを選択することが、長期的なコスト削減にもつながります。
【免責事項】本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の治療法を推奨・保証するものではありません。治療の選択・費用については必ず担当医にご相談ください。費用・制度情報は2025年時点のものであり、変更になる場合があります。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
産婦人科・婦人科に関する正確で信頼性の高い情報をお届けします。医療監修のもと、女性の健康に役立つコンテンツを制作しています。
Next Action

