EggLink

傷病手当金と不妊治療|休職中の収入保障

2026/4/22

傷病手当金と不妊治療|休職中の収入保障

不妊治療中に体調不良や副作用で仕事を休まざるをえなくなった場合、傷病手当金が収入の一部をカバーしてくれる可能性があります。ただし、「不妊治療だから傷病手当金が出る」とは限りません。受給できる条件と申請の流れを正しく理解することが重要です。

傷病手当金は「病気や怪我で働けなくなった場合」に支給される制度であり、不妊治療そのものを理由に申請できるとは限りません。しかし、採卵後の卵巣過剰刺激症候群(OHSS)や手術後の療養など、明確な医学的理由がある場合は対象となりえます。

  • 傷病手当金の対象になる不妊治療関連の状態
  • 支給額の計算方法と受給期間
  • 申請手順と注意点

傷病手当金とは何か

傷病手当金は、健康保険(協会けんぽ・健保組合)に加入している被保険者が、病気や怪我で働けなくなり、かつ給与が支払われない場合に支給される制度です。国民健康保険(自営業・フリーランス等)には原則として傷病手当金制度はありません(一部の国保組合を除く)。

要件

内容

対象者

健康保険(協会けんぽ・健保組合)の被保険者

傷病の原因

業務外の病気・怪我(業務上は労災保険が対象)

療養中であること

医師が労務不能と認めた状態

4日以上の休業

連続3日休業後、4日目以降が支給対象

給与の不支給

休業期間中に給与が支払われていないこと(一部支払いがある場合は差額支給)

不妊治療で傷病手当金が受け取れるケース

不妊治療中に傷病手当金が支給される可能性があるのは、以下のような医学的に「労務不能」と認められる状態の場合です。

状態

傷病手当金の対象可能性

注意点

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の入院・療養

高い(医師が労務不能と判断)

重症の場合は入院が必要なことも

採卵後の腹痛・体調不良で就労不能

医師の判断による

軽症の場合は対象外のことも

不育症に関連した手術後の療養

手術内容・回復期間による

子宮手術等は対象になりやすい

治療のためのスケジュール調整による欠勤

原則対象外

「通院のための欠勤」は傷病手当金の対象外

精神科・心療内科への通院(うつ状態等)

診断書があれば対象になりやすい

不妊治療に起因するメンタル不調も含む

重要:「不妊治療中だから休む」という理由だけでは支給対象にはなりません。担当医から「労務不能」である旨の診断書・意見書が必要です。

支給額の計算方法

傷病手当金の支給額は「標準報酬日額の3分の2」が支給されます。

計算式:
支給日額 = 支給開始日以前の12ヶ月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3

計算例(月収30万円の場合):

  • 標準報酬月額(目安):30万円
  • 支給日額:30万円 ÷ 30 × 2/3 = 約6,667円/日
  • 30日間休業した場合:約20万円/月

月収(目安)

傷病手当金日額(目安)

30日間休業時の支給額

20万円

約4,444円

約13.3万円

30万円

約6,667円

約20万円

40万円

約8,889円

約26.7万円

50万円

約11,111円

約33.3万円

有給休暇を使用している場合は給与が支払われるため、傷病手当金は支給されません(有給消化後の休業から対象)。

支給期間と注意事項

傷病手当金は同一の傷病について通算1年6ヶ月が支給上限です。2022年1月の法改正により「通算制」になりました(以前は暦上の1年6ヶ月。現在は実際に働けない期間のみカウント)。

支給開始から1年6ヶ月の間に、一度回復して職場復帰し、再び同じ傷病で休業した場合でも、働けていた期間は1年6ヶ月に算入されません。長期の不妊治療を行う場合、この仕組みを理解しておくことが重要です。

申請手順

傷病手当金の申請は以下の手順で行います。

  1. 担当医に「傷病手当金意見書記入」を依頼:申請書の医師記入欄に「労務不能」の期間を記載してもらう
  2. 事業主(会社)に「事業主記入欄」を記入してもらう:欠勤・給与不支給の確認
  3. 本人記入欄を記載:休業期間・口座情報など
  4. 健保組合または協会けんぽに提出:郵送または窓口
  5. 支給決定後、指定口座に振り込まれる(申請から1〜2ヶ月程度)

申請書は毎月または退院後など一定期間ごとにまとめて申請するのが一般的です。

両立支援・職場への相談も検討を

不妊治療を続けながら仕事をする場合、傷病手当金に頼るだけでなく、職場への適切な情報共有・柔軟な勤務制度の活用が長期的に有利です。2023年施行の改正不妊治療促進支援法(労働施策総合推進法の改正)により、企業には不妊治療と仕事の両立支援が努力義務化されています。

  • フレックスタイム・時差出勤制度の活用
  • 治療休暇(特別休暇)の申請
  • 上司・人事への開示は必須ではないが、相談で柔軟対応が可能なことも

よくある質問

Q. 国民健康保険加入者(自営業・フリーランス)は傷病手当金を受け取れますか?

一般的な国民健康保険には傷病手当金制度がありません。ただし、特定の国保組合(医師国保・文芸美術国保等)は独自に傷病手当金を設けている場合があります。加入している保険の種類を確認してください。

Q. 採卵のために半日休んだ場合も申請できますか?

傷病手当金は連続3日の休業が必要です。通院・採卵のための半日休暇は対象外です。OHSSなどで連続して就労不能になった場合に申請を検討してください。

Q. 有給休暇と傷病手当金は同時に使えますか?

有給休暇中は給与が支払われるため、その期間は傷病手当金は支給されません。有給を使い切った後の休業から傷病手当金の対象になります。

Q. 傷病手当金の申請書はどこでもらえますか?

協会けんぽの場合はホームページからダウンロードできます。健保組合加入の方は会社の総務・人事担当者か、直接健保組合に問い合わせてください。

Q. 退職後も傷病手当金を受け取り続けられますか?

退職日までに1年以上被保険者だった場合、退職後も継続して受け取れます(継続給付)。ただし退職日当日に有給休暇を使って出勤している形にした場合などは継続給付の対象外になるケースがあります。退職前に必ず健保組合に確認を。

Q. 傷病手当金を受け取りながら不妊治療を続けられますか?

医師が「労務不能」と判断している期間中に治療のための通院は可能です。ただし、就労できるほど回復したと判断されれば支給は停止されます。

まとめ

傷病手当金は不妊治療の費用を直接補助する制度ではありませんが、OHSSや術後療養など医学的に就労不能な状態が生じた場合に収入を守る重要なセーフティネットです。

  • 対象:健康保険(協会けんぽ・健保組合)の被保険者
  • 条件:医師が労務不能と認め、4日以上の欠勤・給与不支給が要件
  • 支給額:標準報酬日額の3分の2
  • 上限:通算1年6ヶ月

不妊治療の費用・制度を専門家に相談

傷病手当金・高額療養費・医療費控除など複数の制度を組み合わせることで経済的な負担を軽減できます。クリニックのソーシャルワーカーや社会保険労務士への相談も有効です。当サイトでは不妊治療に関する費用・制度情報を詳しく解説しています。


※本記事は一般的な制度情報の提供を目的としており、個別の受給判断を保証するものではありません。傷病手当金の受給可否は加入する健康保険・担当医の判断によって異なります。詳細はご加入の健保組合または協会けんぽにお問い合わせください。

E

この記事を書いた人

EggLink編集部

医療・婦人科専門メディア

産婦人科・婦人科に関する正確で信頼性の高い情報をお届けします。医療監修のもと、女性の健康に役立つコンテンツを制作しています。

公開:2026/4/22更新:2026/5/2