
不妊治療は採卵・移植のたびに通院が必要で、スケジュールが読めないため、仕事との両立が大きな課題です。2023年施行の改正法(労働施策総合推進法等の改正)により、企業には不妊治療と仕事の両立支援が努力義務化されました。この記事では、厚生労働省のガイドラインに基づき、活用できる制度と企業・個人それぞれの対応を解説します。
「職場に迷惑をかけたくない」と感じて治療を中断するケースは少なくありません。制度を正しく把握し、上手に活用することで治療継続と仕事の両立が現実的になります。
- 不妊治療と仕事の両立支援に関する法的な枠組み
- 活用できる勤務制度・休暇制度の種類
- 職場への相談・開示の判断ポイント
法的な枠組み:2023年の制度整備
2023年4月施行の改正雇用保険法および労働施策総合推進法の改正により、企業(常時雇用100人超)には従業員の治療と仕事の両立支援に関する取り組みが義務化されました(不妊治療は「治療と仕事の両立支援」の対象に含まれます)。また、厚生労働省は「不妊治療と仕事の両立サポートハンドブック」を公開し、企業・従業員双方への指針を示しています。
法律・ガイドライン | 内容 | 企業への影響 |
|---|---|---|
労働施策総合推進法改正(2023年4月) | 不妊治療を含む治療と仕事の両立支援の努力義務化 | 100人超企業は対応方針の整備が求められる |
厚生労働省ガイドライン | 両立支援の具体的な手順・制度設計の指針 | 参考指針として活用推奨 |
男女雇用機会均等法 | 妊娠・出産を理由とした不利益取扱いの禁止 | 不妊治療を理由とした降格・解雇は違法 |
活用できる勤務制度・休暇制度
不妊治療と仕事を両立するために使える制度は複数あります。会社ごとに整備状況が異なるため、まず就業規則・福利厚生規程を確認することが重要です。
制度 | 内容 | 治療への活用場面 |
|---|---|---|
フレックスタイム制 | コアタイム外は始業・終業時刻を自由に設定 | 採卵・移植日の通院時刻に合わせた調整 |
時差出勤制度 | 始業・終業時刻をシフトする | 朝一番の採血・超音波に対応 |
半日有給・時間単位有給 | 有給休暇を半日または1時間単位で取得 | 通院のための短時間休暇 |
治療休暇(特別休暇) | 会社が独自設定する不妊治療用休暇 | 採卵・移植周期の連続休暇 |
在宅勤務・テレワーク | 自宅での勤務 | 採卵翌日・移植後の安静が必要な日 |
短時間勤務 | 1日の所定労働時間を短縮 | 治療頻度が高い時期の体力温存 |
不妊治療のスケジュール特性と必要な配慮
不妊治療は「いつ通院が必要になるか事前に確定できない」という特性があります。月経開始日を基準に卵胞の育ちを確認しながら採卵日を決めるため、1〜2週間前まで確定日時が分からないことがほとんどです。
- 採卵周期:月経開始から通院開始。採卵日は直前まで確定しない
- 移植周期:排卵日・内膜の状態を見て移植日が変わる
- 注射・投薬:毎日の服薬・自己注射がある場合も
- 判定日:妊娠判定の結果次第で次のステップが変わる
この不確定性を職場が理解しているかどうかが、両立の成否を大きく左右します。
職場への相談・開示の判断ポイント
不妊治療を職場に開示するかどうかは個人の判断です。開示には「制度を使いやすくなる」メリットがある一方、プライバシーへの懸念もあります。
開示を検討すべき状況:
- 採卵・移植周期に複数回の欠勤・遅刻が予想される
- 急な当日欠勤が発生する可能性が高い
- 上司との信頼関係があり、柔軟な対応を期待できる
開示の際のポイント:
- 上司または人事担当者に個別相談する(全体には公表しない)
- 「通院スケジュールが読みにくい」という点を具体的に伝える
- 業務への影響を最小限にするための工夫を提案する(引き継ぎ方法等)
- 開示の範囲・口外しないよう依頼する
企業が整備すべき支援制度(HR担当者向け)
厚生労働省のガイドラインでは、企業に以下の整備を推奨しています。特に100人超企業は制度整備が義務化されています。
取り組み | 具体例 |
|---|---|
方針の明示 | 就業規則・社内ポータルへの両立支援方針の掲載 |
相談窓口の設置 | 産業医・社内カウンセラー・人事担当者が対応 |
管理職研修 | 不妊治療の特性・配慮すべき点の理解促進 |
休暇制度の整備 | 不妊治療専用の有給休暇制度の新設 |
助成金の活用 | 両立支援等助成金(厚労省)の申請で企業側コストを軽減 |
両立支援等助成金:企業が受け取れる助成
企業が不妊治療両立支援制度を整備した場合、厚生労働省の「両立支援等助成金」を申請できます。
- 対象:中小企業(常時雇用100人以下)が主な対象
- 支給要件:①不妊治療両立支援プランの策定、②休暇取得実績 など
- 支給額:最大28.5万円(詳細は厚労省HPで確認)
- 申請先:都道府県労働局またはハローワーク
よくある質問
Q. 不妊治療を理由に解雇されることはありますか?
不妊治療を理由とした解雇・降格・不利益取扱いは、男女雇用機会均等法等により禁止されています。もし不当な扱いを受けた場合は、都道府県の労働局・雇用環境均等部への相談窓口があります。
Q. 上司に言わずに通院するにはどうすればいいですか?
フレックスタイムや半日有給・時間単位有給を活用すれば、詳細を説明せずに通院できることがあります。理由を明示する義務はなく「体調管理のための通院」とだけ伝えることも可能です。
Q. パートナーも仕事を休む必要がありますか?
精液採取・採卵・移植の立会いなど、パートナーも通院が必要な場面があります。精液採取は自宅でも可能なクリニックもあるため事前に確認を。採卵・移植立会いを強制するクリニックはほとんどありませんが、心理的サポートの観点から参加を希望するカップルも多くいます。
Q. 治療休暇(特別休暇)は有給ですか?
企業が独自に設定する治療休暇は有給・無給どちらもあります。就業規則または人事に確認してください。国が一律に義務化しているわけではなく、企業の任意設定です。
Q. 厚生労働省のハンドブックはどこで入手できますか?
厚生労働省の公式ウェブサイト「不妊治療と仕事の両立サポートハンドブック」からダウンロードできます。従業員向け・企業向けの2種類があります。
まとめ:制度を知ることが最初の一歩
不妊治療と仕事の両立は、制度の存在を知らないまま「我慢する」のが最も不利です。法的な保護・会社の制度・助成金を正しく把握することで、選択肢が広がります。
- 2023年改正により企業の両立支援が努力義務化
- フレックス・時間有給・特別休暇など複数の制度を組み合わせる
- 開示は必須ではないが、信頼できる上司への相談で柔軟な対応が得られることも
- 不当な扱いを受けた場合は労働局に相談できる
不妊治療に関する情報をまとめて確認
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※本記事は一般的な制度情報の提供を目的としており、個別の法的アドバイスではありません。制度の詳細・最新情報は厚生労働省公式サイトまたは都道府県労働局にご確認ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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