
不妊治療の保険適用範囲が2022年4月に大幅拡充されました(情報取得日:2026年5月2日)。体外受精・顕微授精・人工授精などの治療が保険の対象となり、自己負担は従来の自費診療と比べて大幅に軽減されています。「保険が使えるか?」「自費と何が違うのか?」「回数制限は何回まで?」という疑問に、この記事でまとめて答えます。
この記事のポイント
- 2022年4月から体外受精・顕微授精・人工授精が保険適用に
- 保険適用の条件(年齢・回数上限・婚姻要件)を整理
- 先進医療との「保険+自費の混合」も可能なしくみを解説
- 高額療養費制度との組み合わせで実質負担をさらに抑える方法
不妊治療の保険適用:2022年4月改定の概要
2022年4月以前、体外受精や顕微授精は保険の対象外でした。改定後は一般不妊治療(タイミング法・人工授精)と生殖補助医療(体外受精・顕微授精・凍結融解胚移植)が保険算定できるようになり、患者負担は原則3割となりました。この改定により、年間100万円を超えることもあった治療費が、同じ治療内容で30万円前後に抑えられるケースも出てきています。
治療法 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
タイミング法・排卵誘発 | 一部保険適用(排卵誘発剤など) | 保険適用(包括管理料で算定) |
人工授精(IUI) | 自費(1回1〜3万円) | 保険適用3割負担(約5,500円) |
体外受精(IVF) | 自費(1採卵あたり30〜60万円) | 保険適用3割負担(約10〜18万円) |
顕微授精(ICSI) | 自費(IVF+10〜15万円追加) | 保険適用3割負担(IVF+約3〜4万円) |
凍結融解胚移植(FET) | 自費(1回8〜20万円) | 保険適用3割負担(約4〜7万円) |
改定の対象になった治療は厚生労働省の告示(診療報酬点数表)で定められており、クリニックの保険指定を問わず同一の点数で算定されます。
保険適用の条件:年齢・回数・婚姻
保険適用を受けるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。治療開始時点の年齢と通算回数が上限に達すると、以降は自費診療となります。事前にクリニックで自分の状況を確認しておきましょう。
- 年齢上限:治療開始時(採卵時)に43歳未満であること
- 回数上限:採卵を伴う周期は、40歳未満で通算6回、40〜43歳未満で通算3回まで
- 対象者:法律上の婚姻関係または事実婚のカップル(事実婚は要届出)
- 医師の判断:保険診療の適応と判断された治療計画に基づくこと
凍結保存した胚を移植するだけの周期(採卵なし)は回数に含まれません。複数の凍結胚がある場合、移植周期を重ねて妊娠を目指せます。また、出産後に2人目・3人目の治療を始める場合は回数がリセットされます(年齢条件は変わりません)。
事実婚のカップルが保険適用を受けるには、クリニックへの届出が必要です。手続き方法はクリニックごとに異なるため、初診時に確認してください。
保険診療と先進医療の「混合」のしくみ
通常の医療では、保険診療と自費の自由診療を同時に行うことは「混合診療」として原則禁止されていますが、不妊治療では例外的に「保険+先進医療」の組み合わせが認められています。これにより、標準的な体外受精を保険で行いながら、着床率の向上を狙った先進的な検査・技術を自費で追加することが可能です。
- 先進医療の例:ERA検査(子宮内膜着床能検査)、EMMA/ALICE(子宮内細菌叢検査)、タイムラプスインキュベーター、PGT-A(着床前染色体検査)など
- 自己負担のイメージ:保険部分は3割負担 + 先進医療費は全額自費(5万〜30万円程度)
- 民間保険の活用:先進医療特約付きの生命保険に加入していれば、先進医療費が給付されるケースあり
ただし、先進医療の実施が認められているのはクリニックごとに異なります。受診先のクリニックがどの先進医療技術の届出を行っているかを、受診前に確認してください。届出のないクリニックでは、その技術を先進医療として行うことができません。
保険適用で実際の費用はどう変わったか
1採卵周期の治療費を「保険適用前後」で比較すると、患者負担は平均で50〜70%以上軽減されています。年間2〜3周期行う場合の年間費用も、以前の100〜150万円から30〜50万円程度に下がったケースが多く報告されています。
治療フェーズ | 自費時の目安 | 保険適用後(3割)の目安 |
|---|---|---|
採卵(IVF) | 30〜50万円 | 9〜15万円 |
顕微授精(ICSI)追加 | +10〜15万円 | +3〜4万円 |
新鮮胚移植 | 8〜15万円 | 2〜5万円 |
凍結保存(1年) | 3〜5万円 | 0.5〜1万円程度(保管料は自費が多い) |
凍結胚移植 | 8〜20万円 | 4〜7万円 |
高額療養費制度も活用できるため、同一月の自己負担が一定額を超えた場合は払い戻しを受けられます。年収約370〜770万円の世帯であれば、1か月の上限は8万100円+αが目安です。採卵月に12万円の支払いが生じた場合、差額の約4万円が払い戻しの対象になる計算です。
保険適用外になるケースと注意点
以下の場合は保険が使えず、全額自費になります。事前に担当医に確認しておくことで、予期せぬ高額請求を防げます。
- 43歳以上での採卵を伴う治療
- 規定の回数(40歳未満で6回、40〜43歳未満で3回)を超えた採卵周期
- 保険適用外の自由診療薬(海外未承認の排卵誘発剤など)を使う場合、その周期全体が自費になる場合あり
- 未婚のシングル女性(現状、保険適用の対象外)
また、保険診療では使用できる薬剤や治療法に一定の制約があります。「保険では使えないが効果が期待できる薬剤を使いたい」という場合は、その周期全体が自費になることを理解した上で選択してください。
申請・手続きの流れ:スムーズに保険を使うために
不妊治療で保険を使うために患者側が行う手続きは比較的少ないですが、以下の準備をしておくと安心です。
- 健康保険証の持参:初診時に必須。夫婦両方の保険証を持参するとスムーズ
- 限度額適用認定証の事前取得:採卵月など費用が高い月は事前に申請。加入先の健保組合・協会けんぽで発行
- 年間医療費の記録:確定申告の医療費控除申告のため、領収書をすべて保管
- 事実婚の届出:事実婚の場合はクリニック所定の届出書が必要
よくある質問(FAQ)
Q1. 保険適用の「回数」は、妊娠・出産後にリセットされますか?
はい、出産後に再度治療を希望する場合は、採卵回数の上限がリセットされます。ただし年齢要件(43歳未満)は変わりません。2人目・3人目の不妊治療も保険の対象です。
Q2. 採卵は保険、移植は自費、という分け方はできますか?
できません。1周期内の治療は保険か自費かどちらかで統一されます。途中から切り替えることはできないのが原則です。
Q3. 先進医療を使うと保険が無効になりますか?
なりません。厚生労働省が認定した先進医療技術を行う場合に限り、保険診療との併用が認められています。クリニックに先進医療の届出があるか確認してください。
Q4. 男性側(精液検査・精子凍結など)も保険適用になりますか?
男性不妊の検査・治療(精索静脈瘤手術など)も2022年の改定で多くが保険適用となりました。精子凍結は一部自費の場合があるため、クリニックに確認してください。
Q5. 自治体の助成金は保険適用後も使えますか?
都道府県・市区町村によって異なりますが、保険診療後の自己負担分に対して助成を行う自治体もあります。2022年4月以降は国の助成金が廃止された代わりに保険適用が拡充された経緯があり、自治体独自の支援内容は各窓口で確認してください。
まとめ
2022年4月の改定により、不妊治療の経済的負担は大幅に軽減されました。43歳未満・回数上限内であれば体外受精・顕微授精・凍結胚移植が3割負担で受けられます。先進医療との組み合わせや高額療養費制度も活用すれば、さらに実質負担を抑えることが可能です。
保険適用の条件(年齢・回数・婚姻要件)と、自費になるケースを事前に把握しておくことが、治療計画を立てる上で最も重要です。まずはかかりつけの産婦人科・不妊治療クリニックで保険適用の可否と治療計画を相談してみてください。
【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の医療行為を推奨するものではありません。費用・保険適用条件は医療機関・治療内容・時期によって異なります。治療の判断は必ず担当医とご相談ください。情報取得日:2026年5月2日。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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