卵子凍結の相談時、多くの方が採卵費用に目を向けがち。しかし採卵前の「事前検査」総額は3〜8万円と幅があり、AMH・FSH・E2などのホルモン検査、感染症スクリーニング、超音波検査、血液一般など項目数も多岐に及びます。本記事では項目ごとの相場、保険適用と自費の切り分け、助成金対象になる範囲、追加検査で費用が膨らむパターンまで、事前検査に絞って数値ベースで整理しました。
この記事のポイント
- 事前検査の項目別費用相場(AMH・AFC・FSH・E2・感染症・血液一般)を一覧化
- クリニック規模別の事前検査総額レンジ(3〜8万円のバラつきの正体)
- 保険適用/自費の切り分けと、助成金対象になる検査項目の実態
- 追加検査が発生しやすい3つのケースと費用増加パターン
編集・監修について
編集・監修:女性ドクター編集部(産婦人科医療情報チーム)
本記事は日本産科婦人科学会・日本生殖医学会・厚生労働省・複数の登録施設公式料金表・自治体助成制度公表資料を照合して編集しています。金額は執筆時点の相場のため、実際の検査時は各クリニックへの確認が必要です。
最終更新日:2026年7月1日
卵子凍結の「事前検査」とは何か(採卵費用との違い)
事前検査とは、採卵の可否・卵巣機能・感染症の有無を確認する初診段階の必須スクリーニング。相場は3〜8万円で、採卵1回30〜60万円とは別枠の支出になります。カウンセリング料と検査料を分けて請求する施設も多く、見誤りやすい部分。
事前検査で何を確認しているのか
主な目的は3つ。①卵巣予備能の把握(AMH・AFC・FSH)、②月経周期の状態確認(E2・LH・超音波)、③感染症スクリーニング(HIV・B型/C型肝炎・梅毒・HTLV-1)。採卵時のリスク評価と、凍結卵子の長期管理体制の判断材料になります。
採卵費用との性質の違い
採卵費用は排卵誘発・採卵手術・凍結処理を含む「実施費用」ですが、事前検査は「実施可否を判断するための費用」。検査結果によっては採卵を見送るケースもあり、その場合でも返金はされません。初期段階の意思決定コストとして認識しておきたい部分(卵子凍結の完全ガイド)。
検査項目別の費用相場(AMH・AFC・FSH・E2・感染症)
事前検査は単一項目ではなく複数の検査の合算で構成されます。項目ごとに相場が大きく異なり、AMH検査は自費で5,000〜10,000円、感染症セットは10,000〜20,000円が中心的なレンジ。以下に項目別の相場を整理しました。
事前検査・項目別費用相場表
検査項目 | 目的 | 費用相場(自費) | 保険適用の可能性 |
|---|---|---|---|
AMH(抗ミュラー管ホルモン) | 卵巣予備能の指標 | 5,000〜10,000円 | 不妊治療枠で一部可 |
AFC(胞状卵胞数)超音波 | 採卵可能な卵胞数の把握 | 3,000〜7,000円 | △(施設判断) |
FSH・LH(下垂体ホルモン) | 月経周期の位相確認 | 3,000〜6,000円 | △ |
E2(エストラジオール) | 卵胞発育の評価 | 2,000〜4,000円 | △ |
感染症スクリーニング | HIV・肝炎・梅毒・HTLV-1 | 10,000〜20,000円 | ×(自費が原則) |
血液一般・生化学 | 全身状態の把握 | 3,000〜8,000円 | △ |
子宮頸がん検診 | 実施前の悪性除外 | 3,000〜6,000円 | 自治体検診で無料の場合あり |
甲状腺ホルモン(TSH・FT4) | 妊孕性関連の代謝評価 | 3,000〜5,000円 | △ |
AMH検査が「主役」になる理由
AMHは採卵で得られる卵子数を予測する最も精度の高い指標とされ、卵子凍結の適否判断に直結。値が1.0ng/mL未満なら誘発法の変更、3.0ng/mL以上なら卵巣過剰刺激症候群(OHSS)への配慮など、治療設計を左右する情報源になります(AMH値の解釈と対応)。
感染症検査は「省略できない固定費」
感染症セットは日本産科婦人科学会の指針で採卵・凍結前の実施が義務付けられており、自費10,000〜20,000円が事実上の固定費。3〜6ヶ月以内の他院結果を持参できれば省略可の場合もあるものの、施設により再検査を求められることも。
事前検査の総額レンジ|クリニック規模別3〜8万円のバラつき
事前検査の総額は都心の大規模専門クリニックで6〜8万円、地方の中規模施設で3〜5万円が一般的な相場。差の主因は検査項目のパッケージング(何をセットに含めるか)とAMH測定の外注/自院検査の違いです。以下に規模別の相場を整理しました。
クリニック規模別・事前検査総額相場(社会的卵子凍結の場合)
クリニックタイプ | 事前検査総額 | 含まれる項目数の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
都心・大規模専門 | 6〜8万円 | 10〜12項目 | 甲状腺・耐糖能等の追加項目多め |
都心・中規模 | 5〜6万円 | 7〜9項目 | 標準パッケージ中心 |
地方主要都市 | 3〜5万円 | 6〜8項目 | 感染症を院外検査に外注 |
大学病院・公的施設 | 3〜4万円 | 6〜7項目 | 保険診療枠を最大活用 |
「安いパッケージ」の落とし穴
事前検査パッケージが3万円台と表示されている場合、AMH・感染症のみで甲状腺やクラミジア抗原を含まないケースが存在。採卵段階で追加検査を求められ、結果的に総額が6万円台になった事例も報告されています。パッケージに含まれる具体的項目を必ず契約前に確認することが、想定外の追加費用を防ぐ第一歩。
初診料・カウンセリング料は別枠
クリニックによっては、初診料5,000〜11,000円・カウンセリング料5,000〜15,000円が事前検査費とは別に発生します。総費用比較では「事前検査費+初診・カウンセリング費」で見るのが妥当(クリニック選び参照)。
保険適用と自費の切り分け|社会的凍結は原則自費
事前検査の保険適用は「不妊症の診断」が付くかで大きく変わります。医学的適応(がん治療前等)や不妊治療の一環では保険適用が可能な項目が多い一方、社会的卵子凍結は原則すべて自費。ここが総額を左右する最大の分岐点。
社会的凍結と医学的凍結での切り分け
目的 | AMH・ホルモン検査 | 感染症検査 | 超音波・血液一般 | 総額の目安 |
|---|---|---|---|---|
社会的卵子凍結(自費) | 自費 | 自費 | 自費 | 3〜8万円 |
不妊症診断あり(保険) | 保険適用可 | 自費が中心 | 保険適用可 | 1.5〜3万円 |
がん・治療前(医学的適応) | 保険適用可 | 保険適用可 | 保険適用可 | 1〜2万円 |
「不妊症の診断」がつく条件
1年以上の不妊期間があり、パートナーとの妊活実績がある場合は不妊症として保険適用の枠で検査可能。AMH・ホルモン検査が数千円まで下がるケースも多く、総額を2万円以下に圧縮できることも。パートナーがいる方は保険診療枠の可否を必ず確認しましょう。
混合診療の禁止に注意
保険診療と自費診療の同時受診は原則禁止。「AMHだけ自費、感染症は保険」の組み合わせは不可で、すべて自費に切り替わる可能性がある点は要注意(社会的凍結と医学的凍結の違い)。
助成金の対象になる検査項目|自治体別の実態
東京都・大阪府・福岡市などの自治体が実施する卵子凍結助成事業では、「採卵・凍結費用」への助成が中心で、事前検査費への直接助成は限定的。ただし助成対象費用の総額に事前検査費が含まれるケースもあり、自治体により運用が異なります。
主要自治体の事前検査助成状況(社会的卵子凍結対象)
自治体 | 助成対象費用 | 事前検査費の扱い | 助成上限 |
|---|---|---|---|
東京都 | 採卵・凍結・保管費用 | 採卵実施日までの検査費含む | 1回上限20万円(初回30万円) |
大阪府(大阪市) | 採卵・凍結費用 | 事前検査費は対象外 | 初回20万円 |
福岡市 | 採卵・凍結費用 | 採卵実施日までの検査費含む | 初回20万円 |
浦安市 | 採卵・凍結費用 | 事前検査費は対象外 | 1人30万円まで |
「採卵実施日までの費用」に含まれる範囲
東京都・福岡市のように「採卵実施日までの費用」を対象とする自治体では、事前検査・カウンセリング・薬剤費まで合算して助成対象にできる場合があります。総額20万円の助成枠のうち、事前検査5万円+採卵15万円という配分で使い切ることも可能。年度により運用が変わるため、申請前に自治体窓口で確認を。
助成金申請時の領収書管理
助成金申請では、事前検査ごとの領収書と診療明細書が必要。受診の都度、領収書と明細書を必ず保管し、事後のまとめ発行は避けるのが安全(東京都の卵子凍結助成)。
追加検査が発生するケースと費用増加パターン
事前検査は「一律のパッケージ」で終わらない場合があります。特定の所見や既往歴があると追加検査が求められ、総額が2〜3万円上振れするケースが実務上少なくありません。以下に典型的な3つのパターンを整理しました。
追加検査が発生しやすい3つのケース
ケース | 追加検査項目 | 追加費用の目安 | 発生頻度 |
|---|---|---|---|
①子宮筋腫・内膜症の疑い | MRI・詳細超音波・CA-125 | 2〜4万円 | 30代後半で増加 |
②PCOS疑い(多嚢胞性卵巣症候群) | 耐糖能・インスリン・アンドロゲン | 1.5〜3万円 | AMH高値時に必要 |
③染色体・遺伝性疾患の既往 | 染色体検査・遺伝カウンセリング | 3〜10万円 | 家族歴ありの場合 |
PCOS疑い時の追加検査の意義
AMH値が5.0ng/mL以上と高値の場合、PCOSの可能性を評価する追加検査が推奨されます。耐糖能・インスリン抵抗性の結果で誘発法・投薬量が変わるため、追加費用1.5〜3万円は採卵成功率を左右する投資と捉えるのが妥当(PCOSと卵子凍結)。
子宮筋腫・内膜症の詳細検査
初回の経腟超音波で筋腫や卵巣嚢腫が疑われた場合、MRI検査を勧められることがあります。1回1.5〜3万円が相場。採卵の可否・時期の判断材料になり、将来の妊娠成立率にも関わる要素です。
事前検査費用を抑える実務テクニック
事前検査費は「一律・不変」ではなく、受診方法と申請の工夫で1〜3万円の圧縮が可能。以下に代表的な4つの手段を整理しました。それぞれ実行難度と削減効果に差があるため、自身の状況に合わせて選択するのがおすすめです。
費用圧縮の4つの実務手段
- ブライダルチェックの活用:AMH・感染症・子宮頸がん検診を含むブライダルチェック(2〜3万円)を先に受け、結果を持参して重複検査を回避。
- 自治体の子宮頸がん検診の利用:多くの自治体で無料または500〜1,000円で受診可能。事前検査から3,000〜6,000円を差し引ける。
- 保険診療枠での相談:不妊期間1年以上・パートナーありの場合、保険適用でAMH・ホルモン検査を受け、総額を2万円以下に圧縮できるケースも。
- 助成金の「採卵実施日までの費用」枠活用:東京都・福岡市などでは事前検査費も助成対象に含まれる可能性。年度予算枠内での早期申請が有利。
複数院の検査結果の共有可否
ブライダルチェックや人間ドックの検査結果は、3〜6ヶ月以内なら卵子凍結クリニックでも活用可能なケースあり。「AMH検査結果は他院分でも受け入れ可か」を初診予約時に問い合わせるだけで、重複検査費5,000〜10,000円を回避できることも。
医療費控除の活用
事前検査費は自費でも医療費控除の対象になり得ます(社会的凍結は医師の判断書類が必要な場合あり)。年間10万円以上の医療費支出があれば確定申告で税負担を軽減可能。
卵子凍結の事前検査費用に関するよくある質問
Q1. 事前検査だけで採卵しない場合、返金はありますか?
原則として返金はありません。事前検査は「検査サービス」として実施されるため、結果次第で採卵見送りとなっても検査費は発生する仕組みです。ただし一部クリニックでは、AMH値が採卵不適応レベルだった場合の相談枠を無料で提供するケースもあります。
Q2. AMH検査だけを受けたい場合、いくらかかりますか?
AMH単独の検査は自費で5,000〜10,000円が相場。ブライダルチェックのオプションとして受けることもできます。ただし卵子凍結の判断には超音波(AFC)との組み合わせが推奨されるため、AMH単独の情報だけでは決断は難しい面も。
Q3. 他院で受けた検査結果は使えますか?
3〜6ヶ月以内なら受け入れ可能な施設が多いものの、感染症検査は再検査を求められる場合あり。予約時に「持参可能な検査項目と有効期限」を問い合わせると重複を防げます。
Q4. 事前検査は初診当日に全部終わりますか?
月経周期の特定日に測定する項目(E2・FSHは月経3〜5日目)があるため、初診で全項目を一度に測定できないケースが一般的。1〜2回の通院で完了するのが標準的な流れです。
Q5. 事前検査の結果はどのくらい有効ですか?
AMH・感染症は3〜6ヶ月、超音波所見は月経周期ごとに変動するため実施直前の再確認が必要。採卵が事前検査から半年以上あく場合は一部再検査を求められる可能性も。
Q6. 20代と40代で事前検査費用は変わりますか?
基本項目の費用は年齢で変わりません。ただし40代では追加検査(子宮筋腫MRI・耐糖能など)の必要性が上がり、実質総額は20代より1〜3万円高い傾向(40代の卵子凍結)。
Q7. 助成金は事前検査費だけでも申請できますか?
採卵・凍結の実施が助成の前提条件のため、事前検査費のみでの申請は原則不可。事前検査後に採卵見送りとなった場合、助成金は使えません。初期投資として認識するのが安全。
まとめ|事前検査は3〜8万円、内訳の可視化が意思決定の起点
卵子凍結の事前検査は3〜8万円が相場。AMH・感染症・超音波が中核で、社会的凍結は原則自費、不妊症診断が付けば保険適用で2万円以下に圧縮可能。ブライダルチェック活用・助成金の対象範囲確認で1〜3万円の削減が狙えます。
次のステップ
「自分のケースで事前検査にいくらかかるか」を把握したい方は、まず複数クリニックの検査パッケージ内容を比較してから初診予約に進みましょう。
- お近くの卵子凍結対応クリニックを検索
- 事前検査パッケージの内容と費用を比較
- 初診・カウンセリングの予約
参考情報・情報源
- 日本産科婦人科学会「未受精卵子または卵巣組織の凍結・保存に関する見解」
- 日本生殖医学会「生殖医療の必修知識」および統計データ
- 厚生労働省「不妊治療に関する調査研究」
- 東京都福祉保健局「卵子凍結に係る費用の助成事業」公表資料
- 大阪市・福岡市・浦安市などの自治体公式サイト(助成事業ページ)
- American Society for Reproductive Medicine (ASRM), "Fertility evaluation of infertile women: a committee opinion" (2021)
- ESHRE Guideline on Female Fertility Preservation (2020)
免責事項
本記事は一般的な医療・費用相場情報の提供を目的とし、個別の診断や具体的な契約内容を示すものではありません。掲載金額は執筆時点の相場で、各クリニックの料金体系・保険適用範囲・自治体助成制度の改定により変動します。検査・治療の実施前は各施設の公式資料と担当医師の説明をご確認ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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