
「プロラクチンは正常なのに、TRH負荷試験を勧められた」——そう戸惑う方がいます。基礎プロラクチン値が正常でも、負荷後に過剰反応する「潜在性高プロラクチン血症」が不妊・無排卵の隠れた原因になることがあります。TRH負荷試験の意義と判定基準を解説します。
この記事のポイント
- TRH負荷試験が「潜在性高プロラクチン血症」の診断に必要な理由
- 検査手順・判定基準(負荷前後の反応値)と異常の定義
- 潜在性高プロラクチン血症が不妊・排卵障害に与える影響と治療選択肢
TRH負荷試験とは——潜在性高プロラクチン血症を診断する
TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)を静脈注射すると下垂体からプロラクチン(PRL)が分泌されます。基礎PRL値が正常(25ng/mL未満)でも、TRH負荷後に過剰分泌される場合を「潜在性高プロラクチン血症」と診断し、不妊・月経不順の原因として重要視されます。
潜在性高プロラクチン血症とは——なぜ通常の血液検査では見つからないか
プロラクチンは脈動的(パルス状)に分泌されるため、早朝の安静時に採血しても変動が大きく、潜在的な過剰分泌を見逃すことがあります。TRH負荷試験は「刺激した際の反応性の高さ」を調べることで、通常検査では見えない分泌亢進体質を明らかにします。
検査の手順——採血タイミングと判定基準
早朝空腹時(または食後2時間以上)に安静臥位でTRH(プロタレリン)500μgを静脈注射し、注射前・注射後30分・60分に採血してPRLとTSHを測定します。
判定 | 基準(PRLの反応) |
|---|---|
正常反応 | 最高値が基礎値の3〜5倍、かつ負荷後最高値が25ng/mL未満 |
潜在性高PRL血症(要注意) | 最高値が25〜100ng/mLまたは基礎値の10倍以上 |
高プロラクチン血症(顕性) | 基礎PRL値が25ng/mL以上(負荷試験不要) |
TSH無反応(下垂体機能低下) | TSH上昇なし(下垂体機能低下の可能性) |
不妊・排卵への影響——プロラクチン過剰がどう作用するか
プロラクチン過剰はGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)のパルス分泌を抑制し、LH・FSH分泌を低下させます。その結果、排卵障害・黄体機能不全・月経不順が生じます。軽度の潜在性高プロラクチン血症でも、受精卵着床や妊娠継続に悪影響を及ぼす可能性があります。
治療の選択肢——カベルゴリンとブロモクリプチン
潜在性高プロラクチン血症の治療にはドパミン作動薬が第一選択です。
- カベルゴリン(カバサール):週1〜2回の内服で済み、副作用(吐き気)が少ない。妊活中の使用実績が豊富
- ブロモクリプチン(パーロデル):古くから使われる薬剤。妊娠確認後に休薬する場合が多い
- 通常2〜3ヶ月で排卵回復・PRL値正常化が期待されることが多いが、個人差がある
検査時の副作用——TRH注射の感覚
TRH静注後、多くの方が数分間の吐き気・顔のほてり・尿意を感じます。これは一過性で30分以内に治まります。低血圧・頭痛が出ることもありますが、重篤な副作用は稀です。検査後は30分程度の安静が推奨されます。
よくある質問
Q. プロラクチンが正常なのにTRH負荷試験が必要ですか?
あります。基礎プロラクチン値が正常でも潜在性高PRL血症の方がおり、不妊・排卵障害の隠れた原因となります。TRH負荷試験はこれを検出するための検査です。
Q. 検査はどのくらいかかりますか?
採血3回分で計1〜1.5時間程度かかります。検査前日から激しい運動・睡眠不足・性行為は避けることが推奨されます(PRL値に影響する可能性があるため)。
Q. カベルゴリン服用中でも妊活は続けられますか?
カベルゴリンは妊活中の使用実績があり、妊娠が判明した時点で休薬するのが一般的なアプローチです。担当医と服用継続・休薬のタイミングについて確認してください。
Q. TRH負荷試験でTSHが反応しない場合は何を意味しますか?
TSH無反応は下垂体機能低下の可能性を示します。この場合は甲状腺・下垂体の詳細評価が必要となり、不妊治療計画に影響します。
Q. 潜在性高プロラクチン血症は治療すれば完全に治りますか?
ドパミン作動薬で多くの場合プロラクチン値は正常化し、排卵・月経が回復します。ただし休薬後に再発する方もいるため、妊娠後も経過観察が必要です。
まとめ
TRH負荷試験は基礎プロラクチン値が正常でも潜在性高プロラクチン血症を診断できる重要な検査です。不明原因の排卵障害・黄体機能不全・反復流産で、まずこの検査を確認することが診断の手がかりになります。陽性の場合はカベルゴリンなどのドパミン作動薬で改善できる見通しがあります。担当医と検査結果に基づいた治療計画を立てましょう。
※本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療の指示ではありません。個別の状況については必ず担当医にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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