
女性のテストステロン検査は、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)をはじめとするホルモン異常の診断に欠かせない血液検査です。基準値は測定方法によって異なりますが、一般的に女性の血清総テストステロンは0.1〜0.8 ng/mL(100〜800 pg/mL)程度とされています。
この記事のポイント
- 女性のテストステロン基準値と異常値が意味するもの
- PCOSとテストステロン上昇の関係メカニズム
- 検査タイミング・費用・保険適用の実際
女性のテストステロンとは何か——基礎知識
テストステロンは「男性ホルモン」として知られますが、女性でも副腎と卵巣から分泌され、性欲・筋力・気力の維持に重要な役割を担います。女性の血中テストステロン濃度は男性の約1/10〜1/20ですが、このわずかな量が乱れるだけで月経不順・多毛・にきびなど多彩な症状を引き起こします。
遊離型と総テストステロンの違い
血中テストステロンには「総テストステロン」と「遊離テストステロン(フリーテストステロン)」の2種類があります。
種類 | 測定対象 | 女性基準値(目安) | 特徴 |
|---|---|---|---|
総テストステロン | SHBG結合型+遊離型の合計 | 0.1〜0.8 ng/mL | スクリーニングに使用 |
遊離テストステロン | 生物学的活性をもつ遊離型のみ | 0.2〜3.1 pg/mL | PCOS診断の補助指標 |
PCOSでは「性ホルモン結合グロブリン(SHBG)」が低下し、遊離テストステロンの割合が増加します。総テストステロンが正常範囲内でも遊離型が高い場合、症状が出やすくなります。
PCOSとテストステロン過剰——なぜ上昇するのか
PCOSでは、LH(黄体形成ホルモン)の過剰分泌が卵巣の莢膜細胞を刺激し、テストステロンをはじめとするアンドロゲン(男性ホルモン)が過剰産生されます。さらにインスリン抵抗性が加わると、膵臓が多量のインスリンを分泌し、これがさらに卵巣のアンドロゲン産生を促進するという悪循環が生じます。
アンドロゲン過剰の具体的症状
- 多毛(男性型体毛分布):上唇・顎・胸部・腹部に濃い毛が生える
- にきび・脂性肌:思春期を過ぎても改善しない成人型にきび
- 男性型脱毛:頭頂部・前頭部の髪が薄くなる
- 月経不順・無排卵:月経周期が35日以上または不規則
- 多嚢胞性卵巣エコー像:超音波で卵巣に小卵胞が多数見られる
ロッテルダム基準とテストステロン検査の位置づけ
PCOSの国際診断基準「ロッテルダム基準(2003年)」では、①月経不順/無排卵、②超音波での多嚢胞性卵巣、③高アンドロゲン血症(血液検査またはにきび・多毛などの臨床所見)の3項目のうち2項目以上を満たすことが条件です。テストステロン検査は③を客観的に確認するための重要な根拠となります。
検査のベストタイミングと注意点
テストステロンは月経周期や時間帯によって変動します。再現性の高い結果を得るため、月経2〜5日目の午前中(空腹時または食後2時間以内)に採血するのが理想です。
結果に影響する要因
- 時間帯:午前中に高く、夕方に低い日内変動がある
- 月経周期:排卵直前に軽度上昇することがある
- ストレス:コルチゾール上昇に伴い変動する場合あり
- 肥満:脂肪組織でのアンドロゲン代謝が影響する
- 服薬:ピル服用中は低く抑制される(SHBGが増加するため)
セットで行う関連検査
テストステロン単独では診断が完結しません。以下の検査と組み合わせることで、PCOSか副腎性アンドロゲン過剰(先天性副腎過形成など)かを鑑別できます。
検査項目 | 目的 | PCOS時の傾向 |
|---|---|---|
LH/FSH比 | 排卵障害の評価 | LH優位(LH/FSH比>2) |
DHEA-S | 副腎性アンドロゲンの評価 | 軽度上昇または正常 |
17-OHプロゲステロン | 先天性副腎過形成の除外 | 正常(CAHでは高値) |
インスリン/血糖(HOMA-IR) | インスリン抵抗性の評価 | HOMA-IR≥1.6で抵抗性あり |
甲状腺機能(TSH・fT4) | 甲状腺疾患との鑑別 | 正常 |
費用・保険適用の実際
テストステロン検査(血清)の保険点数は210点(2024年度)で、3割負担で約630円です。ただし、不妊目的での受診では複数の検査を同時に行うため、初診料・超音波検査なども含めると、初回受診の総費用は5,000〜1万5,000円程度になることが多いです。
保険適用の条件
- 月経不順・無排卵・不妊症などの医学的適応があること
- 医師の判断のもとで必要な検査として指示されること
- 自費(健康診断・ブライダルチェック)では5,000〜1万円程度の場合が多い
検査結果の解釈と次のステップ
テストステロン値が高値だった場合、その程度と他の検査結果を総合して診断が決まります。軽度上昇(PCOSの範囲)なら生活習慣改善・ピル・メトホルミンなどの内科的治療が中心です。著しい上昇の場合は、副腎腫瘍・卵巣腫瘍の除外が必要です。
テストステロン高値に対する主な対処法
- 低用量ピル(COC):SHBG増加により遊離テストステロンを抑制、多毛・にきびの改善に有効
- メトホルミン:インスリン抵抗性改善により卵巣でのアンドロゲン産生を抑制
- 生活習慣改善:BMI低下(5〜10%の体重減少)で排卵回復・テストステロン低下が期待できる
- 抗アンドロゲン薬(スピロノラクトンなど):多毛・にきびに対して使用する場合があるが、妊娠希望時には使用できない
テストステロン低値の場合
一方、テストステロンが基準値を下回る場合も注意が必要です。早発卵巣不全(POI)・視床下部性無月経・下垂体機能低下症では、FSH・LHとともにテストステロンも低下することがあります。また、慢性的なストレス・過度な運動・極端な低カロリー食でも低下します。性欲低下・疲労感・集中力低下が続く場合は、テストステロンを含む包括的なホルモン評価を受けることを検討してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. テストステロン検査は婦人科と内科どちらで受けられますか?
婦人科(産婦人科)が最適です。月経不順・不妊・多毛などの症状を総合的に評価し、超音波検査も同時に行えます。内科(内分泌科)でも対応可能ですが、婦人科的評価が必要な場合は連携紹介となります。
Q2. 結果が出るまでどれくらいかかりますか?
通常1〜7日程度です。院内検査設備がある施設では最短当日〜翌日に結果が出ることもあります。外注検査の場合は1週間前後かかります。
Q3. ピルを飲んでいると正確に測定できませんか?
低用量ピル服用中はSHBGが増加するため、総テストステロン・遊離テストステロンともに低く抑制されます。正確な評価が必要な場合は、医師の指示のもとでピルを一定期間休薬してから検査します。
Q4. テストステロンが高くても妊娠できますか?
適切な治療を行えば妊娠は十分可能です。PCOSによるテストステロン高値に対してピルや排卵誘発剤で排卵をコントロールすることで、多くの方が妊娠に至っています。まずは専門医への受診が最初のステップです。
Q5. 自宅でテストステロンを測定できますか?
唾液を用いた簡易測定キットが市販されていますが、血清テストステロンとは相関が低く、医療診断には使用できません。症状が気になる場合は医療機関での血液検査が必要です。
まとめ
女性のテストステロン検査は、PCOSをはじめとするアンドロゲン過剰の診断に直結する重要な検査です。テストステロン値は単独でなく、LH/FSH・DHEA-S・インスリンなどと組み合わせて評価されます。「月経不順が続く」「多毛・にきびが気になる」「なかなか妊娠しない」という方は、早めに婦人科を受診し、包括的なホルモン評価を受けることをお勧めします。
次のステップ:婦人科の初診は月経2〜5日目が血液検査に最適です。オンライン予約を活用して、「月経不順・ホルモン検査希望」とあらかじめ伝えてから受診するとスムーズです。
※本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療の代替となるものではありません。気になる症状がある場合は必ず医療機関を受診してください。参考:日本産科婦人科学会「生殖医学用語集」、日本内分泌学会「アンドロゲン過剰症の診断と治療」
この記事を書いた人
EggLink編集部
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