
ERA検査とは:着床の窓を科学的に特定する検査
ERA(Endometrial Receptivity Analysis)検査は、子宮内膜の遺伝子発現パターンを解析して「着床の窓(Implantation Window)」のズレを診断する検査です。体外受精で良質な胚を移植しているにもかかわらず着床しない「反復着床不全(RIF)」の患者に対して実施されます。Igenomix社が開発した検査で、子宮内膜の248個の関連遺伝子を解析することで、個人差のある最適な移植タイミングを特定します。
この記事でわかること
- ERA検査の受け方・採取の流れ
- 費用の詳細と保険・助成金の活用
- 結果の読み方(Pre-receptive/Receptive/Post-receptive)
- ERA検査の限界と有効性に関するエビデンス
- 体験談から学ぶ検査前の心構え
ERA検査が推奨される対象
ERA検査はすべての不妊患者に必要な検査ではありません。以下の条件に当てはまる場合に、担当医から提案されることが多いです。
- グレードの良い胚(初期胚・胚盤胞)を2回以上移植したにもかかわらず着床しなかった
- 子宮内膜の厚さ・形態に問題がないにもかかわらず着床が起こらない
- 年齢・卵子の質に問題なく、原因不明の反復着床不全がある
ERA検査が着床失敗の唯一の原因を特定するわけではありません。着床不全の原因は多因子であり、ERA検査はその一つの側面(受容能の時間的ズレ)を評価するものです。
検査の流れ:採取から結果まで
1. 周期準備(ホルモン補充周期)
ERA検査は通常の凍結胚移植と同じホルモン補充サイクルを組みます。エストロゲン製剤で内膜を準備し、黄体ホルモン(プロゲステロン)投与開始から120時間後(P+5)が一般的な採取タイミングです。
2. 子宮内膜採取(パイプェル生検)
専用のカテーテル(パイプェル)を子宮腔内に挿入し、内膜の一部を採取します。処置時間は5〜10分程度です。痛みの強さは個人差があり、「生理痛程度」から「強い痛み」まで幅があります。
3. 検体の輸送・分析
採取した検体は専用容器で保存・輸送され、Igenomix社の解析センター(スペインまたは国内提携ラボ)で遺伝子発現解析が行われます。結果が返るまで2〜4週間かかります。
4. 結果の通知・プロトコル調整
結果に基づいて、次回の凍結胚移植のプロゲステロン投与時間が調整されます。
結果の読み方
ERA検査の結果は3種類に分類されます。
結果 | 意味 | 対応 |
|---|---|---|
Receptive(受容期) | 標準的な移植タイミングが最適 | 現在のプロトコルを維持して移植 |
Pre-receptive(前受容期) | 着床の窓がまだ開いていない | プロゲステロン投与を延長(12〜24時間) |
Post-receptive(後受容期) | 着床の窓が既に閉じている | プロゲステロン投与を短縮(12〜24時間) |
Igenomix社の研究では、ERA検査で個別化されたpERT(personalized Embryo Replacement Timing)を実施すると、Receptive以外の患者(約25%)において妊娠率が改善したと報告されています。ただし、後述するように独立した大規模RCTではその効果に疑問符もついています。
ERA検査の有効性:最新エビデンス
ERA検査については、近年批判的なエビデンスも増えています。医療判断の参考として、現時点の科学的評価を正確に理解することが重要です。
支持するエビデンス
Igenomix社主導の研究では、ERAを用いたpERTにより反復着床不全患者の出生率が改善したと報告されています(Simon et al., 2020)。
懐疑的なエビデンス
2023年のRCT(PROFET study, Wirleitner et al.)では、ERA使用群と非使用群で累積出生率に有意差がないと報告されました。また、2022年のLancet掲載のRCTでも同様に有効性を示せなかった結果が出ています。
現時点の位置づけ
ESHRE(欧州ヒト生殖胚学会)の2023年ガイドラインでは、ERA検査は反復着床不全に対するルーティン検査としては推奨されておらず、個別判断で実施する検査とされています。
費用の目安
ERA検査は現時点(2025年)では保険適用外(自費)です。
項目 | 費用目安 |
|---|---|
ERA検査単体 | 8万〜12万円 |
ERA+EMMA+ALICE(3点セット) | 15万〜22万円 |
検査周期のホルモン補充費用 | 1万〜3万円(別途) |
ERA検査の周期は「胚を使わない」モック周期のため、胚移植は行いません。胚移植の1サイクルとは別に費用が発生します。
体験談:ERA検査を実際に受けて
採取時の痛みについて
「内膜生検はHSGより痛かったです。鎮痛薬を事前に飲んでいったのですが、採取の瞬間はかなり痛みました。ただ、5分程度で終わるので耐えられました」(30代女性・2回目移植後にERA受検)
「私はほとんど痛みを感じませんでした。個人差が大きいと思います。処置後のじんわりした痛みは数時間続きました」(30代女性)
結果と移植の結果
「Pre-receptiveとの結果が出て、プロゲステロン投与を24時間延長しました。その後の移植で初めて陽性が出て、現在妊娠継続中です。ERA検査のおかげかどうかは断言できませんが、試してよかったと感じています」(30代女性)
「Receptiveと出たものの、その後の移植でもうまくいかず、ERA以外に原因があったようです。ERA検査は万能ではないことを理解しておくことが大切だと感じました」(40代女性)
よくある質問
Q1. ERA検査の結果は一生変わりませんか?
着床の窓のタイミングは比較的安定しているとされますが、手術・ホルモン治療・年齢変化によって変わる可能性があります。再検査が必要かどうかは担当医と相談してください。
Q2. ERA検査の周期は凍結胚を使いますか?
ERAの採取周期は胚を使わない「モック移植周期」として実施します。胚は使いません。
Q3. EMMA・ALICEとセットで受けるべきですか?
EMMA(子宮内膜マイクロバイオーム)とALICE(慢性子宮内膜炎)の検査は同時に採取した検体から追加解析できます。ただし、それぞれの有効性も現時点では議論中であり、担当医と相談のうえ判断してください。
Q4. ERA検査は何回目の移植失敗から考えるべきですか?
一般的には2〜3回の胚移植が失敗した「反復着床不全」が適応とされています。1回目の失敗でERA検査を行う医学的根拠は現時点では乏しいです。
まとめ:ERA検査を受ける前に知っておくべきこと
ERA検査は、反復着床不全の一因である「着床の窓のズレ」を評価する有用な検査ですが、着床不全のすべての原因を解決するものではありません。最新のエビデンスでは有効性に議論があるため、費用(約10万円)と期待値の両面から、担当医と十分に相談したうえで検討することをお勧めします。
免責事項
本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療の推奨ではありません。ERA検査の適応・実施・費用は医療機関によって異なります。必ず担当医師にご相談ください。記載のエビデンス情報は2025年時点のものです。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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