
子宮内膜症の検査方法:CA125・エコー・MRIの役割を整理
子宮内膜症の診断は、経腟超音波・血液検査(CA125)・MRI検査の組み合わせで行います。ただし、これらの検査はあくまで「強く疑う」ための検査であり、確定診断は腹腔鏡手術による組織生検によってのみ可能です。これは多くの患者が知らない重要な事実です。
この記事でわかること
- 子宮内膜症の診断に使われる検査一覧と限界
- CA125が「高い」「正常」それぞれの意味
- チョコレート嚢胞・深部子宮内膜症の見つけ方
- 「症状があるのに検査が陰性」の理由
子宮内膜症とは:診断が難しい理由
子宮内膜症は、子宮内膜様の組織が子宮外(卵巣・骨盤腹膜・腸管等)に発生し、月経のたびに出血・炎症・癒着を繰り返す疾患です。日本では月経を経験する女性の約10〜15%に認められるとされますが、診断が確定するまでに平均7〜8年かかるという報告があります(Nnoaham et al., 2011)。
診断が遅れる主な理由
- 症状(月経痛)が「当たり前の生理痛」として見逃される
- 浅い病変は超音波・MRIでも確認できない
- CA125が正常値でも内膜症がある場合が多い
- 確定診断に手術が必要なため診断へのハードルが高い
子宮内膜症の検査一覧
検査名 | 目的・特徴 | 保険適用 | 費用目安(3割) |
|---|---|---|---|
経腟超音波検査 | チョコレート嚢胞(卵巣内膜症)の発見。低〜中エコーの嚢胞 | ○ | 500〜1,500円 |
CA125(血液検査) | 内膜症活動性の指標。中等度〜重症で上昇しやすい | ○ | 400〜800円 |
CA19-9(血液検査) | CA125と組み合わせると感度が向上 | ○ | 400〜800円 |
MRI検査 | 深部内膜症(直腸子宮窩等)・骨盤癒着の評価 | ○(適応あり) | 1.5万〜3万円 |
腹腔鏡検査・手術 | 確定診断+同時治療。骨盤内の直接観察 | ○ | 入院込み10万〜30万円 |
CA125の正しい解釈:高くても低くても注意が必要
CA125は子宮内膜症の診断補助に最もよく使われる腫瘍マーカーですが、その解釈には注意が必要です。
CA125高値(35U/mL以上)の場合
内膜症以外にも以下で上昇します:
- 月経中(生理的に上昇)
- 妊娠初期
- 骨盤腹膜炎・肝疾患・心不全
- 卵巣がん(CA125単独での診断は不可)
CA125正常値でも安心できない理由
子宮内膜症患者全体のCA125感度は約50〜60%です。軽症〜中等症の内膜症では、CA125が正常値でも内膜症が存在する可能性が十分あります。「CA125が正常だから内膜症はない」という解釈は誤りです。
チョコレート嚢胞の超音波所見
チョコレート嚢胞(卵巣内膜症)は超音波で特徴的な所見を示します。
- 均一で細かいエコー(「すりガラス状」)を呈する内部構造
- 壁は比較的薄く整
- 両側卵巣に多発することあり
- 月経周期により多少変化することがある
ただし、チョコレート嚢胞に似た所見として出血性嚢胞(黄体出血等)があり、鑑別が必要です。
深部子宮内膜症(DIE):超音波では見えにくい病変
深部子宮内膜症(Deep Infiltrating Endometriosis)は、腸管・膀胱・子宮仙骨靭帯などに深く浸潤する重症病変です。経腟超音波では見えにくく、MRIや腸管超音波(BEUS)が有用です。
DIEを疑うべき症状
- 月経時の強い直腸痛・排便痛
- 性交痛(特に深部痛)
- 排尿痛・血尿(膀胱内膜症)
- 月経時の肛門痛・血便(腸管内膜症)
MRI検査の活用:骨盤内全体の評価
MRI検査は深部内膜症の評価と手術前計画において特に有用です。チョコレート嚢胞内の「明細胞がんへの悪性化」疑いがある場合も、MRIで詳細に評価します。
MRIで確認できる内膜症の所見
- チョコレート嚢胞:T1強調像で高信号(出血成分)
- 骨盤癒着:臓器間の正常な解剖学的位置関係の変化
- 深部病変:直腸・膀胱への浸潤(T2強調像で低信号結節)
腹腔鏡検査:確定診断の唯一の方法
子宮内膜症の確定診断は、腹腔鏡下での直接観察と組織生検によってのみ可能です。全身麻酔が必要ですが、確定診断と同時に病変の切除・焼灼治療が実施できます。
腹腔鏡検査が推奨される状況
- 強い症状があるが画像検査で確認できない場合
- チョコレート嚢胞があり手術治療を検討する場合
- 不妊治療前の骨盤内評価(癒着・卵管因子の確認)
- 深部内膜症による高度癒着が疑われる場合
よくある質問
Q. 月経痛がひどいのに「異常なし」と言われました。なぜ?
A. 月経痛がひどくても、超音波・CA125が正常値であれば「画像的・血液的には異常なし」と報告されます。これは内膜症がない証明ではなく、浅い腹膜病変や軽症の内膜症は通常の検査では見えないためです。症状が強い場合は、腹腔鏡検査を含めた精密検査を専門医に相談することが重要です。
Q. 子宮内膜症の検査は何科で受けますか?
A. 婦人科(産婦人科)が専門です。深部内膜症・腸管内膜症が疑われる場合は、内膜症専門外来や腹腔鏡手術実績の豊富な施設への受診を推奨します。
Q. 子宮内膜症の検査に痛みはありますか?
A. 経腟超音波・採血は痛みがほとんどありません。MRIは閉所恐怖感がある人を除き痛みはありません。腹腔鏡は全身麻酔下で実施されるため術中の痛みはありませんが、術後の回復に数日かかります。
まとめ
- 子宮内膜症の確定診断は腹腔鏡検査のみ。エコー・CA125・MRIは「強く疑う」ための検査
- CA125が正常値でも内膜症は存在しうる(感度50〜60%)
- チョコレート嚢胞は超音波で特徴的な所見を示すが黄体出血との鑑別が必要
- 深部内膜症(DIE)は超音波では見えにくくMRIが有用
- 月経痛が強いのに検査で「異常なし」の場合は腹腔鏡検査を専門医に相談する
免責事項
本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。検査・治療については必ず担当の医師にご相談ください。掲載している費用・基準値はあくまで目安です。
参考文献:日本産科婦人科学会「子宮内膜症取扱い規約・診療ガイドライン2022」、Nnoaham KE, et al. Impact of endometriosis on quality of life and work productivity. Fertil Steril. 2011;96(2):366-73.
この記事を書いた人
EggLink編集部
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