
子宮内フローラ検査とは、子宮内膜の細菌叢(フローラ)を調べる検査で、反復着床不全や習慣流産の原因究明に役立てられています。健康な子宮内には乳酸菌(ラクトバシラス属)が豊富に存在することが知られており、乳酸菌が少ない状態では胚の着床率が低下するとする研究が報告されています。この記事では、検査の目的・方法・費用・結果の読み方を詳しく解説します。
この記事のポイント
- 子宮内フローラと着床・妊娠の関係を科学的に理解できる
- 検査の流れ・費用・結果の読み方が分かる
- 乳酸菌が少ない場合の治療・改善アプローチが分かる
子宮内フローラとは何か
子宮内フローラとは、子宮内膜に生息する細菌の種類と比率(細菌叢)のことです。かつて「子宮内は無菌」と考えられていましたが、次世代シーケンス技術(NGS)の発展により、子宮内にも独自の細菌叢が存在することが明らかになりました。
乳酸菌(ラクトバシラス)の重要性
健康な子宮内では、乳酸菌(主にLactobacillus crispatusなど)が細菌叢の90%以上を占めることが理想的とされています。乳酸菌は子宮内のpHを下げることで病原菌の増殖を抑制し、免疫環境を整える役割を持ちます。
スペインのIVI研究グループによる2019年の研究では、乳酸菌が90%未満の場合、体外受精の着床率・継続妊娠率が有意に低下することが報告されました(Moreno I et al., Fertility and Sterility, 2019)。
検査が推奨される対象者
子宮内フローラ検査は、以下のような状況で検討される検査です。
- 反復着床不全:良好胚を3回以上移植しても妊娠に至らない
- 習慣流産・反復流産:2回以上の流産歴がある
- 慢性子宮内膜炎が疑われる:ALICE検査と並行して実施されることが多い
- 原因不明不妊:標準的な不妊検査で異常が見つからない
初回の体外受精前に実施するかどうかは、医療機関・医師によって方針が異なります。全患者に推奨する施設もあれば、反復失敗後に提案する施設もあります。
検査の流れと方法
子宮内フローラ検査は、子宮内膜から細胞・分泌物を採取してDNA解析を行います。
検査の具体的な手順
- 月経周期の確認:子宮内膜が受精卵を受け入れやすい時期(黄体期)に採取するのが一般的
- 子宮内膜液のサンプリング:専用カテーテルを子宮内に挿入してサンプルを採取(所要時間:5〜10分程度)
- DNAシーケンス解析:採取したサンプルを検査会社に送り、16S rRNA遺伝子の解析で細菌叢を特定(結果まで2〜4週間)
- 結果説明:乳酸菌の割合・他の細菌の種類・異常菌の有無についての説明
採取時の痛みと体への負担
採取の際には子宮頸管を通してカテーテルを挿入するため、生理痛に似た軽い痛みや違和感を感じる方がいます。ほとんどの場合は短時間で終わり、日常生活への影響は少ないです。子宮頸管が狭い方は、事前に医師へ相談することをお勧めします。
結果の読み方
子宮内フローラ検査の結果は、細菌の種類と比率で報告されます。
結果パターン | 意味 | 対応 |
|---|---|---|
乳酸菌90%以上 | 正常な子宮内環境 | 治療不要 |
乳酸菌90%未満 | 子宮内フローラの乱れ | 乳酸菌製剤(腟錠)などで改善を試みる |
病原菌検出 | 慢性子宮内膜炎の可能性 | ALICE検査・抗菌薬治療を検討 |
フローラ改善のアプローチ
乳酸菌が少ない場合、以下のアプローチが検討されます。ただし、いずれも有効性・安全性のエビデンスレベルには差があるため、必ず担当医と相談したうえで実施してください。
- 乳酸菌腟錠(ラクトバシラス製剤):腟・子宮内フローラの改善を目的とした腟坐薬(保険外)
- 経口乳酸菌サプリメント:腸内環境を整えることで間接的に腟内・子宮内フローラに影響するとされる(エビデンス限定的)
- 抗菌薬治療:病原菌が検出された場合に実施(ALICE検査で慢性子宮内膜炎が確認された場合)
費用と保険適用
子宮内フローラ検査は現時点では先進医療・自費診療が中心です。
費用区分 | 目安 |
|---|---|
検査費用(自費) | 5万〜10万円程度(施設・検査会社により異なる) |
EMMA+ALICE同時検査 | さらに追加費用が発生(合計15万〜25万円程度) |
保険適用 | 現時点では適用外(先進医療として認定されている施設も一部あり) |
よくある質問
Q. 子宮内フローラ検査は全員必要ですか?
現時点では、反復着床不全・習慣流産など特定のケースに推奨される検査であり、初回不妊治療から全員に行うことは一般的ではありません。担当医の判断を聞いたうえで検討することをお勧めします。
Q. 子宮内フローラ検査の信頼性はどれくらいですか?
研究報告は増えていますが、まだエビデンスの蓄積が途上の検査です。「乳酸菌が少ない=妊娠できない」という断定はできません。検査結果は複数の指標のひとつとして捉え、医師と一緒に判断することが重要です。
Q. 乳酸菌腟錠を使えばフローラは改善されますか?
一部の患者では改善が見られるとする報告がありますが、全員に効果があるわけではありません。改善後に再検査を行い、フローラの状態を確認してから胚移植を行うのが一般的な流れです。
Q. EMMA検査・ALICE検査との違いは何ですか?
子宮内フローラ検査は細菌叢全体の構成比を調べる検査です。EMMA検査は子宮内膜微生物叢(乳酸菌の割合など)をより詳細に分析し、ALICE検査は慢性子宮内膜炎の原因となる特定の病原菌を検出します。3つを組み合わせた「トリオ検査」として実施されることが多いです。
Q. 検査はいつ(月経周期の何日目)に受けますか?
通常は月経周期の黄体期(排卵後)に採取します。自然周期では排卵後5〜7日目、ホルモン補充周期では黄体ホルモン投与から5〜7日後が目安です。詳しいタイミングは担当医の指示に従ってください。
まとめ
子宮内フローラ検査は、反復着床不全・習慣流産の原因を探るうえで有用な選択肢のひとつです。ただしまだエビデンスの蓄積が途上であり、検査の必要性・結果の解釈・治療方針は担当医と十分に相談することが重要です。
- 良好胚を複数回移植しても着床しない場合は、担当医にフローラ検査を相談してみる
- 結果が乳酸菌90%未満の場合は、腟錠などの改善療法を検討
- EMMA・ALICE検査と組み合わせることでより詳細な評価が可能
免責事項:本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療の代替となるものではありません。検査の実施・結果の解釈については必ず担当医にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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