
精巣生検(せいそうせいけん)は、精巣の組織を一部採取して顕微鏡で調べる検査です。主に無精子症の原因特定と、手術的精子採取(TESE)の際に実施されます。「切る」検査への不安は当然ですが、適切な麻酔下でおこなわれるため痛みは最小限です。
この記事のポイント
- 精巣生検が必要になるのはどんなケースか
- TESEとの違い・関係性をわかりやすく解説
- 費用・痛み・回復期間の実際
精巣生検とは——何を調べる検査か
精巣生検(精巣組織検査)は、局所麻酔下で精巣に小切開を加え、精細管組織を少量採取して顕微鏡で観察する検査です。検査の目的は主に2つあります。
検査の2つの目的
- 診断目的:無精子症の原因が「精子を作れない(非閉塞性無精子症)」か「精路が詰まっている(閉塞性無精子症)」かを組織学的に確認する
- 治療目的(TESE):精巣内に存在する精子を直接採取し、顕微授精(ICSI)に使用する
精巣生検が必要になるケース
- 精液検査で無精子症(精液中に精子が全く見つからない)と診断された
- FSH・LH・テストステロンなどのホルモン値に異常がある
- 精路(精管・精巣上体)の閉塞が疑われる
- 体外受精・顕微授精に向けて精子採取が必要
TESEとの関係——精巣生検はTESEの一部
TESE(精巣内精子採取術)は精巣生検の発展版であり、診断と治療を同時におこなう手術的手技です。通常の精巣生検が「組織の状態を確認する」のに対し、TESEは「使える精子を探して取り出す」ことを主目的とします。
TESEの種類
種類 | 方法 | 適応 |
|---|---|---|
conventional TESE(通常TESE) | 精巣に複数の切開を加え組織を採取 | 閉塞性無精子症 |
micro-TESE(顕微鏡下TESE) | 手術顕微鏡で精細管を観察しながら精子を探す | 非閉塞性無精子症(精子が少ない・ない場合) |
micro-TESEは従来のTESEより精子採取成功率が高く(文献によると非閉塞性無精子症で約43〜63%)、精巣へのダメージも少ないとされています。
検査の流れ——当日から回復まで
精巣生検の所要時間は局所麻酔下で30〜60分程度が一般的です。多くは日帰りまたは1泊の入院で対応できます。
検査の具体的なステップ
- 術前検査:血液検査・感染症検査(HIV・B型・C型肝炎など)
- 麻酔:局所麻酔(陰嚢周囲への注射)。全身麻酔が必要なケースは少ない
- 採取:陰嚢に数mm〜1cm程度の切開を加え、組織を採取
- 縫合・止血:吸収性縫合糸で縫合。抜糸不要の場合が多い
- 回復:術後1〜2時間院内で安静後、帰宅可能
- 結果説明:組織の病理結果は1〜2週間後
痛みと術後の不快感
局所麻酔の注射時に一時的な痛みがありますが、採取中は麻酔が効いているため痛みはほぼありません。術後2〜3日は陰嚢の腫れ・鈍痛が続くことがありますが、市販の鎮痛剤で対処できる程度です。激しい運動・入浴(湯船)は術後1週間程度控えましょう。
結果の読み方——組織所見の意味
精巣生検の病理結果は、精細管の状態によって以下のように分類されます。
主な組織所見と意味
所見 | 意味 | 精子採取の可能性 |
|---|---|---|
正常精子形成 | 精子は作られているが精路が閉塞している可能性 | 高い(TESE成功率90%以上) |
精子形成低下(Hypospermatogenesis) | 精子は作られているが少ない | 中程度(micro-TESE推奨) |
精子細胞停止(Maturation arrest) | 精子の成熟途中で停止している | 中〜低(micro-TESEで可能な場合あり) |
セルトリ細胞のみ(SCO症候群) | 精子を作る細胞(精原細胞)が存在しない | 低いが一部でmicro-TESE成功の報告あり |
費用と保険適用
精巣生検の費用は、診断目的か治療目的(TESE)かによって異なります。2022年の保険適用拡大以降、不妊治療の一環として保険適用になるケースが増えました。
費用の目安
種類 | 自費診療 | 保険診療(3割負担目安) |
|---|---|---|
診断的精巣生検 | 3万〜10万円 | 1万〜3万円 |
conventional TESE | 15万〜30万円 | 5万〜10万円 |
micro-TESE | 30万〜60万円 | 10万〜20万円 |
保険適用の条件(年齢・婚姻状況・治療ステージ等)はクリニックにより確認が必要です。高額療養費制度の活用で自己負担の上限を設定できます。
リスクと合併症——事前に知っておくべきこと
精巣生検は安全性の高い処置ですが、以下のリスクがまれに起こる可能性があります。
- 出血・血腫:術後の陰嚢内出血。圧迫固定で多くは自然に吸収される
- 感染:術後の創部感染。抗生剤投与で対処
- 精巣萎縮:繰り返しのTESEでまれに発生する。micro-TESEでリスクが低い
- 精子採取失敗:非閉塞性無精子症では精子が見つからないケースもある
よくある質問
Q. 精巣生検とTESEは同じですか?
A. 同じ精巣からの組織採取ですが、目的が異なります。精巣生検は「組織の状態を調べる診断」、TESEは「精子を取り出す治療」です。現在は診断と治療を同時におこなうケースが多くなっています。
Q. 全身麻酔は必要ですか?
A. ほとんどの場合、局所麻酔で対応できます。micro-TESEは手術時間が長いため静脈麻酔(半身麻酔)を使うクリニックもあります。
Q. 仕事はいつから復帰できますか?
A. デスクワークなら翌日から可能なケースが多いです。立ち仕事・肉体労働・長距離の移動は3〜5日後が目安です。
Q. 採取した精子はどうなりますか?
A. 凍結保存して顕微授精(ICSI)に使用します。採取当日に使用する場合と、冷凍保存して後日使用する場合があります。
Q. 精巣生検で精子が見つからなかった場合の次の選択肢は?
A. 精子が見つからなかった場合でも、精子ドナー(非配偶者間人工授精)や養子縁組などの選択肢について医師と相談することができます。
まとめ:精巣生検は無精子症治療の出発点
精巣生検・TESEは、無精子症の診断と治療に不可欠な手技です。局所麻酔下で安全に実施でき、日帰り〜1泊で対応可能です。
- 診断目的:無精子症が閉塞性か非閉塞性かを組織学的に確認
- 治療目的(TESE):精巣内の精子を採取してICSIに使用
- micro-TESEは非閉塞性無精子症でも精子採取成功率が高い
免責事項
本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療の代替となるものではありません。個々の症状・状況については、必ず医療機関の医師にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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