
精液検査とは、男性の精子の状態を調べる基本的な不妊検査です。不妊の原因の約半数に男性側の要因が関係していることが知られており、精液検査は男性不妊診断の第一歩として不可欠です。この記事では、精液検査の目的・検査の流れ・結果の見方・費用を分かりやすく解説します。
この記事のポイント
- 精液検査で何が分かるのか、検査項目と意味を理解できる
- 検査当日の流れ・採取方法・禁欲期間の正しい知識が得られる
- 結果が出た後、どう動けばよいかの判断基準が分かる
精液検査とは何か
精液検査とは、射精によって得られた精液を顕微鏡や自動分析器で調べ、精子の数・動き・形・生存率などを評価する検査です。WHO(世界保健機関)が定める国際基準値をもとに評価され、男性不妊の診断において世界標準として用いられています。
なぜ精液検査が重要なのか
不妊カップルの約50%に男性側の要因が存在し、男性のみが原因の場合は約24%、男女両方に原因がある場合は約24%とされています(日本産科婦人科学会データ)。しかし実際には、不妊検査を受けたカップルのうち男性が先に検査を受けるケースはまだ少ないのが現状です。精液検査は非侵襲的で比較的安価な検査であるため、不妊を疑った際は夫婦同時に検査を受けることが推奨されています。
精液検査で調べる主な項目
精液検査では以下の項目を一度に評価します。各項目の意味を理解することで、結果の解釈がしやすくなります。
検査項目 | 正常基準(WHO第6版) | 意味 |
|---|---|---|
精液量 | 1.4 mL以上 | 射精した精液の体積 |
精子濃度 | 16×10⁶/mL以上 | 1mLあたりの精子数 |
総精子数 | 39×10⁶以上 | 射精全体に含まれる精子数 |
運動率 | 42%以上 | 動いている精子の割合 |
前進運動率 | 30%以上 | 前方に進んでいる精子の割合 |
正常形態率 | 4%以上(クルーガー法) | 形が正常な精子の割合 |
生存率 | 54%以上 | 生きている精子の割合 |
診断名と基準値の関係
- 乏精子症:精子濃度16×10⁶/mL未満
- 精子無力症:前進運動率30%未満
- 奇形精子症:正常形態率4%未満
- 無精子症:射精液中に精子が存在しない
- 乏精子無力奇形精子症(OAT症):3項目すべてが基準値以下
検査当日の流れ
精液検査の流れは、クリニックによって多少異なりますが、基本的には以下のステップで進みます。
検査の手順(ステップ)
- 予約・問診:クリニックへの予約。前日までの禁欲期間(2〜7日)を守る
- 採取:クリニックの採精室、または自宅採取(持参)のいずれか
- 搬送:自宅採取の場合は体温に近い状態で1時間以内に持参
- 分析:顕微鏡または自動分析装置で評価(所要時間:約30〜60分)
- 結果説明:当日または後日、医師から結果の説明を受ける
自宅採取のポイント
- クリニックから渡される専用の無菌容器に採取する
- 採取から1時間以内に届ける(運動率が時間とともに低下するため)
- 搬送中は体温程度(37℃前後)に保つ(ポケットに入れるのが有効)
- 潤滑剤・コンドームは精子に有害な成分が含まれるため使用不可
結果の読み方と次のアクション
精液検査の結果は複数の項目を組み合わせて解釈します。1項目だけで判断するのではなく、全体的なパターンから医師が総合評価します。
「基準値以下」が出た場合に知っておくべきこと
- 精液の状態は体調・睡眠・ストレスで大きく変動する
- 1回の検査だけでは判断せず、2〜4週間後に再検査することを推奨
- 禁欲期間(2〜7日)を正確に守ることで、より安定した結果が得られる
- 2回以上の検査で同様の異常所見が出た場合は、専門医(泌尿器科)への受診を検討
費用・所要時間・保険適用
精液検査の費用は医療機関によって異なりますが、以下が一般的な目安です。
費用の種類 | 目安 |
|---|---|
自費(通常の精液検査) | 3,000〜1万5,000円程度 |
保険適用(不妊治療の一環) | 保険3割負担で1,000〜3,000円程度 |
所要時間(院内採取の場合) | 来院〜結果説明まで約1〜2時間 |
2022年4月の不妊治療保険適用拡大に伴い、不妊治療の一環として行う精液検査は保険適用になるケースが増えています。具体的な適用条件は担当医に確認してください。
よくある質問
Q. 精液検査は妻の産婦人科でも受けられますか?
産婦人科・不妊治療専門クリニックでも精液検査を行っている施設は多くあります。ただし採精設備(採精室)がない場合は、泌尿器科への紹介または自宅採取持参での対応となることがあります。事前にクリニックへ確認しましょう。
Q. 精液検査は痛いですか?
精液検査自体に痛みはありません。採精(射精)による採取のみで、採血のような身体的な侵襲はありません。ただし採精室でのプレッシャーを感じる方も多く、自宅採取のほうがリラックスできると感じる方もいます。
Q. 禁欲期間はどれくらい必要ですか?
WHO推奨では2〜7日間とされています。短すぎると精子数や精液量が少なくなり、長すぎると精子の運動率が低下したりDNA断片化が増加したりします。最も再現性の高い結果を得るためには3〜5日程度が理想的とされています。
Q. 精液検査の結果が正常でも不妊になることはありますか?
あります。精液検査は「数・動き・形」を評価しますが、精子のDNA品質(断片化指数)は通常の検査では測定しません。また、女性側の原因(卵管閉塞・排卵障害・子宮因子など)が関与している場合もあります。両パートナーの検査を同時に行うことが重要です。
Q. 精液検査で異常があると体外受精が必要ですか?
必ずしもそうではありません。軽〜中等度の乏精子症・精子無力症であれば、人工授精(AIH)で妊娠に至るケースも多くあります。高度乏精子症や無精子症の場合は、顕微授精(ICSI)やTESEなどの精子回収術が選択されます。担当医と相談しながら段階的に治療方針を決めることが大切です。
まとめ
精液検査は非侵襲的で比較的安価な検査でありながら、男性不妊診断に欠かせない重要な第一歩です。検査結果は1回だけでなく複数回で評価し、基準値を下回っても生活習慣の見直しから始めることができます。
- 不妊を疑ったら、女性側の検査と並行して男性も精液検査を受けることを推奨
- 禁欲期間2〜7日を守り、正確なデータを得る
- 異常所見があれば専門医(泌尿器科または不妊治療専門クリニック)へ相談
免責事項:本記事は医療情報の提供を目的としており、診断・治療の代替となるものではありません。検査の実施・結果の解釈については必ず担当医にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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