
卵管水腫の検査:HSGと超音波で何がわかる?
卵管水腫の診断には、子宮卵管造影検査(HSG)と経腟超音波検査が主に用いられます。HSGは卵管の通過性と形態異常を造影剤で可視化し、超音波では卵管内の液体貯留(水腫)を直接観察します。より詳細な評価が必要な場合は、腹腔鏡手術(確定診断と治療を同時実施)が選択されます。
この記事でわかること
- 卵管水腫の診断に使われる各検査の特徴と違い
- HSGの手順・痛みの程度・費用
- 卵管水腫がIVFに与える影響
- 検査から治療への判断基準
卵管水腫とは:不妊に直結する卵管の液体貯留
卵管水腫(Hydrosalpinx)は、卵管の末端(卵管采側)が閉塞し、内部に漿液性の液体が貯留した状態です。クラミジア感染・子宮内膜症・骨盤腹膜炎(PID)などが原因となります。
卵管水腫が不妊・IVFに与える影響
卵管水腫は不妊原因として重要なだけでなく、体外受精(IVF)の妊娠率を約50%低下させるというメタ分析データがあります(Camus et al., 1999)。水腫内の液体が子宮腔内に逆流することで着床を阻害すると考えられています。このため、IVFを行う前に卵管処置(卵管切除術・卵管結紮・卵管口閉鎖)が推奨されるケースがあります。
卵管水腫の主な検査方法
検査方法 | 特徴 | 感度・特異度 | 費用目安(3割) |
|---|---|---|---|
経腟超音波検査 | 非侵襲的・即日実施可能。大きな水腫は直接確認できる | 感度65〜80% | 500〜1,500円 |
子宮卵管造影(HSG) | 卵管全体の通過性・形態を評価。両側同時確認可能 | 感度70〜85% | 8,000〜2万円 |
ソノヒステログラフィー(SHG) | 生理食塩水を注入して超音波で評価。放射線被曝なし | 感度75〜85% | 3,000〜8,000円 |
MRI検査 | 軟部組織の詳細評価。子宮内膜症合併例に有用 | 感度85〜95% | 1.5万〜3万円 |
腹腔鏡手術 | 確定診断+同時治療が可能。最も確実な方法 | 感度95%以上(ゴールドスタンダード) | 入院込みで10万〜30万円 |
HSG(子宮卵管造影)の詳細:手順・痛み・リスク
HSGは不妊検査の中でも「痛い」と言われる検査の一つです。事前に正確な情報を持っておくことが大切です。
HSGの手順
- 月経終了後〜排卵前(月経5〜10日目頃)に実施
- 子宮頸管からカテーテルを挿入し造影剤を注入
- X線透視下で造影剤が卵管を通過する様子を撮影
- 検査時間は約15〜30分
痛みについての正直な情報
HSGの痛みの感じ方には個人差があります。「強い生理痛のような感覚」と表現する人が多く、特に卵管に閉塞がある場合や造影剤注入時に強い痛みが出ることがあります。多くのクリニックでは、検査30分前に解熱鎮痛薬(イブプロフェン等)の服用を推奨しており、これにより痛みを軽減できます。
HSGのリスクと注意事項
- 造影剤アレルギー(ヨード過敏症の確認が事前に必要)
- 感染リスク(特にクラミジア既感染例では術後の骨盤炎に注意)
- 放射線被曝(わずかだが妊娠初期の実施は不可)
- 検査当日は性交・入浴を避ける
「HSGで卵管が通る」治療効果
HSGには、実は軽度の卵管閉塞を解除する治療的側面もあります。HSG施行後の数周期は妊娠率がわずかに上昇するという報告があり、これは造影剤が卵管内の粘液栓を洗い流すためと考えられています。
超音波検査による卵管水腫の所見
卵管水腫の超音波所見は特徴的です。以下の画像的特徴が確認された場合、卵管水腫が疑われます。
- 卵巣付近の管状または嚢状の液体貯留
- 内部に隔壁様の構造(不完全隔壁)
- 血流シグナルが乏しい(悪性との鑑別に重要)
- 子宮外に位置する
小さな卵管水腫(マイクロヒドロサルピックス)は超音波で確認できないケースもあり、その場合HSGや腹腔鏡が必要です。
検査後の治療選択:IVF前に卵管処置が必要か
卵管水腫が確認された場合の対応は、不妊治療の方針によって異なります。
水腫のサイズ・状態別の対応方針
状況 | 推奨アクション |
|---|---|
片側水腫・反対側卵管正常 | タイミング法・人工授精を試みつつ経過観察 |
両側水腫または大型水腫 | 腹腔鏡手術(卵管切除・卵管口閉鎖)後にIVFへ移行 |
IVF反復不成功+水腫 | 水腫処置を強く推奨(ESHRE・ASRM共通見解) |
よくある質問
Q. HSGで「卵管閉塞」と言われた=必ず水腫ですか?
A. 卵管閉塞と卵管水腫は異なります。閉塞は卵管が詰まっている状態全般を指し、水腫はその中でも特に末端閉塞により液体が貯留した状態です。HSGで閉塞が確認されても、超音波やMRIで水腫の有無を別途確認することが重要です。
Q. 卵管水腫は自然に治りますか?
A. 自然治癒は基本的に期待できません。原因となる感染症(クラミジア等)を治療しても、すでに形成された水腫は残存します。不妊治療中は外科的処置を検討する必要があります。
Q. 卵管水腫があっても自然妊娠できますか?
A. 片側水腫で反対側の卵管が正常な場合、自然妊娠の可能性は残ります。ただし、水腫液が子宮腔内に逆流する場合は着床を妨げることがあります。また、卵管妊娠(異所性妊娠)のリスクも高まるため、妊娠の早期確認が重要です。
まとめ
- 卵管水腫の一次スクリーニングは経腟超音波検査で行い、詳細はHSGまたはMRIで評価
- HSGは卵管通過性・形態の全体把握に優れるが、痛みへの事前対策が重要
- 大型・両側水腫やIVF反復不成功例では、腹腔鏡手術による処置が推奨される
- IVF前の卵管水腫処置は妊娠率を大幅に改善するエビデンスがある
免責事項
本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。検査・治療については必ず担当の医師にご相談ください。掲載している費用はあくまで目安です。
参考文献:Camus E, et al. Pregnancy rates after in-vitro fertilization in cases of tubal infertility with and without hydrosalpinx. Hum Reprod. 1999;14(5):1243-9. ESHRE「Tubal factor infertility guideline」2023.
この記事を書いた人
EggLink編集部
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