
プロテインC検査——不育症の血液凝固検査として知っておくべきこと
プロテインCは肝臓で合成される天然の抗凝固タンパク質で、血液凝固系を制御する重要な役割を担います。プロテインC欠乏症では血栓が形成されやすい状態(血栓性素因)となり、繰り返す流産や着床不全の原因となりうることが知られています。この記事では、プロテインC検査の意義・基準値・不育症との関係・治療の選択肢を解説します。
この記事でわかること
- プロテインCの働きと欠乏症のメカニズム
- プロテインC欠乏症と流産・不育症の関係
- 検査の種類(活性・抗原量)と基準値
- プロテインS欠乏症との違い
- 治療の選択肢(ヘパリン・アスピリン)
プロテインCの働き
プロテインCはビタミンK依存性タンパク質として肝臓で合成されます。血栓形成に関わる凝固因子Va・VIIIaを分解することで、過剰な凝固を防ぎます。
- トロンビン-トロンボモジュリン複合体によって活性化(活性型プロテインC、APC)
- APCはプロテインSをコファクターとして、凝固因子Va・VIIIaを不活化する
- プロテインCが欠乏すると血栓抑制機構が低下し、血栓が形成されやすくなる
プロテインC検査の種類と基準値
プロテインCは「活性(機能)」と「抗原量(量)」の2種類で評価されます。
検査の種類 | 正常範囲(目安) | 欠乏症の目安 |
|---|---|---|
プロテインC活性 | 70〜140% | 70%未満(要精査) |
プロテインC抗原量 | 65〜135% | 65%未満 |
活性が低く抗原量が正常な場合(機能異常型)と、両方が低下する場合(量的欠乏型)があります。活性の測定がより臨床的に重要です。
プロテインC欠乏症の分類
- I型(量的欠乏型):プロテインCの産生量が減少。活性・抗原量ともに低下。先天性の場合が多い
- II型(機能異常型):産生量は正常だが、機能が異常。抗原量は正常でも活性が低下
- 後天性欠乏:ビタミンK欠乏(ワルファリン服用中)・肝機能障害・消耗性凝固障害(DIC)などで二次的に低下する
不育症の文脈では先天性欠乏症が問題となることが多いですが、後天性の原因も除外する必要があります。
プロテインC欠乏症と流産・不育症
- プロテインC欠乏症では胎盤への血流を妨げる微小血栓が形成され、流産・胎盤機能不全・子宮内胎児発育遅延が起こりうる
- 日本不育症学会ガイドラインでは血栓性素因の一つとして評価対象に含まれる
- 抗リン脂質抗体症候群と合併している場合もあり、APS検査と並行して評価することが推奨される
- 流産既往1回では必ずしも検査対象にならないが、2回以上の流産既往・死産・胎盤機能不全の既往がある場合に精査が推奨される
プロテインSとプロテインCの違い
項目 | プロテインC | プロテインS |
|---|---|---|
役割 | 凝固因子Va・VIIIaを分解する(主役) | プロテインCの補酵素(助役) |
欠乏時の症状 | 血栓症・繰り返す流産 | 血栓症・繰り返す流産(日本人に多い) |
妊娠中の変化 | 妊娠中に約20〜30%低下することがある | 妊娠中に大幅に低下(注意が必要) |
測定法 | 活性・抗原量 | 遊離型・活性・総量の3種類 |
プロテインSは日本人の不育症患者に特に頻度が高いとされ、プロテインCと合わせた評価が一般的です。
治療の選択肢
プロテインC欠乏症と診断された場合の流産予防には以下が検討されます。
- 低用量アスピリン(LDA)100mg/日:血小板凝集を抑制し、胎盤への微小血栓を防ぐ
- ヘパリン自己注射:プロテインC欠乏症においてヘパリンは直接凝固を抑制する。妊娠中の抗凝固療法として推奨されるケースが多い
- ワルファリンは妊娠中使用不可:胎児奇形リスクのため妊娠中はヘパリンに切り替える
- 治療期間:妊娠前から開始し、産後の血栓リスクが落ち着くまで(産後6〜12週程度)継続するケースが多い
検査の受け方と費用
- 採血(空腹時推奨)による血液検査で評価
- 結果が出るまで:通常1〜2週間(外注検査の場合)
- 注意:妊娠中・ワルファリン服用中は値が低下する。評価は非妊娠・非服薬状態で行うことが推奨される
- 費用:保険適用の場合(血栓症・不育症精査)で自己負担1,000〜3,000円程度。自費の場合は5,000〜8,000円が目安
よくある質問
Q1. プロテインC活性が低かった場合、妊娠は諦めるべきですか?
そのようなことはありません。適切な抗凝固療法(LDA・ヘパリン)により、多くの方が妊娠・出産に成功しています。まず専門医に相談してください。
Q2. 妊娠中にプロテインCが低くなることがあると聞きましたが?
妊娠中はプロテインC活性が生理的に低下することがあります。この場合は妊娠前の値との比較が重要です。妊娠前のスクリーニングが推奨されます。
Q3. ワルファリンを服用中ですが、プロテインC検査は受けられますか?
ワルファリン服用中はプロテインCが偽低値となります。検査の精度のために、可能であれば服薬中止後に測定することが推奨されますが、中止の可否は主治医と相談してください。
Q4. 家族にプロテインC欠乏症の人がいます。検査すべきですか?
先天性プロテインC欠乏症は常染色体優性遺伝の特徴があります。家族歴がある場合は積極的にスクリーニングを受けることをお勧めします。
Q5. プロテインC欠乏症の治療中に妊娠したらどうすればよいですか?
妊娠が判明した時点ですぐに担当医に連絡し、抗凝固療法の継続・変更の指示を受けてください。ヘパリンへの切り替えが必要になる場合があります。
まとめ
- プロテインCは凝固因子Va・VIIIaを分解する天然の抗凝固タンパク質
- 欠乏症では血栓が形成されやすく、繰り返す流産の原因となりうる
- プロテインC活性70%未満が要精査の目安
- 妊娠中・ワルファリン服用中は値が低下するため、非服薬・非妊娠状態での測定が理想
- 治療はLDA・ヘパリンが中心。ワルファリンは妊娠中使用不可
免責事項
本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を推奨するものではありません。不育症の検査・治療については担当医師の指示に従ってください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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